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「タキくん、大丈夫ですか?」
「うん? らいじょうぶ」
にへらっと笑うタキくんに、わたしの心臓は思わずきゅんっとしてしまう。だってこんなの、アイドルをしていた頃のタキくんの笑顔みたいなんだもん。
タキくんのお誕生日。わたしたちはケーキを食べて、その日の最後の五分を一緒に過ごした。どうやらケーキがおいしかったのは本当だったらしい。
「お礼がしたい」と言ったタキくんは、店から清水節を持ってくると、その栓を抜いたのだ。
そして約一時間ちょっとが経過した現在、タキくんはべろんべろんに酔っぱらってしまっている。ちなみに清水節は、まだ瓶の八分目くらいだ。
「タキくん、ちょっと飲み過ぎじゃないですか? お水飲んでください」
「うんうんうん、そうらねぇ……」
タキくんはどうやら、お酒にめっぽう弱いらしい。そのままコテンと畳の上に横になってしまう。
ちなみにわたしは、日本酒が苦手なのでビールでお相手させてもらっている。しかし、アルコールへの耐性で言えば、わたしの方が遥かにそれがあるみたいだ。
最初は九州男児──これはただのイメージだけど──のように、無言で手酌をしながら飲んでいたタキくんは、ほんの十分後くらいには顔を赤らめぽつぽつと言葉を発するようになり、やがて饒舌なほどにおしゃべりな人間へと変貌した。
お酒の力って怖い……。
「タキくん、お布団で寝てください。風邪ひきますから」
部屋の隅に畳んである布団を指差すも、タキくんは「ウンウン」と楽しそうに頷きながらも体を起こそうとはしない。仕方ないので、掛け布団だけタキくんの体にかけてあげることにする。
「……ファンだから?」
時間も遅いし、そろそろ帰らなきゃ。そう思ったわたしの後ろ髪を、タキくんの言葉が引いた。
思わず彼の顔を見ると、目を閉じているタキくんは、もう一度「ファンだから?」とむにゃりと口にする。
「……ファンだからここまでしてくれるの?」
お酒を飲んで酔っているし、半分はもう眠りの世界へと行ってしまっているタキくん。明日にはきっと、こんなことを口走ったことも忘れてしまうのだろう。
「そうです。タキくんは、わたしの推しですから」
わたしはそう答え、もう一度布団をかけ直した。
ファンの前でこんな無防備な姿を見せたら、危険なことこの上ない。わたしがもし肉食女子だったら、大変なことになっていただろう。
この人はここまで、よく無事に生きてこられたなぁなどと考えてしまう。
だけどその素直さや純粋さは、わたしが大好きだったタキくんのイメージそのものだ。
やっぱり本当のタキくんは、わたしが追いかけてきたきらきらとした彼なのだろう。今は色々な事があって、それを見失ってしまっているだけ。彼がそれを取り戻したら、わたしはそっと消えようと思っている。
推しとファンは、距離感を保ってこその関係だから。
かけられた布団の中で、きゅっと一度体を縮めるタキくん。その姿は年上であるにも関わらず、子供のようにも見えて微笑ましくなってしまう。
わたしはそっと、タッパーを自分の鞄へとしまった。
「……ごめんね」
ぽそりと一粒、彼の言葉が部屋に響く。
わたしはゆっくりと、横になる彼に顔を向けた。
「〝タキ〟は、死んだよ──」
──え?
ひやりと背中に冷たい汗が伝っていく。
「た、タキくん……」
その言葉を最後に、彼からはすうすうと穏やかな寝息だけが聞こえてきた。すっかりと眠ってしまったみたいだ。
──どうかこれが、わたしの聞き間違いでありますように。
そんな祈りを白熱灯にそっと捧げ、わたしは荷物を持って店を出た。
わたしがSTAYを知ったのは、ほとんどの人たちがそうであったように、テレビを通してのことだった。わたしが高校三年生のときだから、かれこれ五年ほど前になる。
その頃のわたしといえば、大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、生きるということに無頓着だった。
もともとクラスで目立たない地味な生徒。親の期待に応えたくて背伸びして入学した高校はわたしにはやっぱりちょっとレベルが高くて、勉強もスポーツもてんでだめ。ただし、父親が地元の議員をしていたのもあり、先生たちはなにかとわたしを気にかけた。
同じクラスの子たちが、それをおもしろくないと思うのは必然的な流れだったと思う。
最初はお決まりの、上履きがなくなるということだった。ついで、教科書や体操着がゴミ捨て場から見つかった。故意的にぶつかられて倒れることもあったし、階段から突き落とされそうになったこともある。
まとわりつくような視線と、クスクスと刺さる笑い声。それは〝誰が〟などというものではなく、〝自分以外の全員〟からのものだった。
親に言えるわけがない。先生にも言えるわけがない。友達もいない。救いがない。
初めの頃は傷ついた。ショックで悲しくて恐ろしくて、そして自分の悲運を嘆いた。だけどだんだん、そういうこともなくなっていった。
毎日傷ついていたら、いつかわたしの心は削れて削れてなくなっていってしまう。
だからわたしは、感情を手放していくという方法を選んだのだ。悲しいと思う気持ち。胸を締め付ける苦しみ。誰かに憎まれているという恐怖心。
そうやってわたしは、からっぽになっていった。
別に死にたいなんて思わない。だけど、生きているという実感もなく、ただふわふわと空中を浮いている風船みたいな状態だった。いつ死んでも、別にいいやって思っていた。
そんなとき、たまたま家でつけたテレビにSTAYが出ていたのだ。その頃から、彼らはすでに人気者だった。わたしよりもいくつか年上である彼らは、画面の中できらきらと輝いていた。
あの番組はドキュメンタリー番組で、タキくんはインタビューに答えているところだった。そのときに、彼は言ったのだ。
『僕たちは伝えたいんです。〝全部わかってくれるひとに、いつか会えるよ〟って』
その言葉を聞いて、わたしはリビングで泣き崩れた。
あれはなにも、わたしに向けて放たれた言葉ではない。テレビ用の決めセリフだったのかもしれない。それでもわたしにとっては、どこかへ手放したはずの感情をすべて取り戻すだけの力があったのだ。
「ただいま」
がちゃりとアパートの部屋を開け、後ろ手で鍵を閉める。挨拶をしたって、誰から返事が来るわけでもないのに。
そのまま鞄を置いて、わたしはお風呂場へと直行した。
わたしが住んでいるのは、新宿から電車で二駅の場所。とは言っても、終電がない時間帯には歩いて帰ることのできる距離だ。
キュッとシャワーの蛇口を捻り、水がお湯になるのを待つ。その間にクレンジングでメイクを落とした。
「タキくん……どういう意味だったんだろう……」
聞き間違いであってほしい。そう願ったものの、思い出せば思い出すほど、タキくんは確かに『死んだ』と口にしたという確信が強まっていった。
タキくんは、現実としては生きている。芸能界を引退して、倉間酒店で働いている。そう思うと、あの言葉が指すところは『STAYのタキは死んだ』と解釈するのが適切だろう。
「芸能界を引退したから、って意味なのかな……」
出しっぱなしにしていたシャワーは、適温になっている。普段より温度を上げたわたしは、「わからないや」とシャワーを頭からざばりとかぶった。
◇
「ちょっとぉ! タッキーどういうこと⁉ 連絡も寄越さず、こんなボロボロになっちゃってェ!」
ピンク色のとさか頭に、蛍光イエローのスパッツを履いた男性の登場に、わたしは扉のところで石のように固まっていた。
「んもぉ! ヨッシー問い詰めたら、このお店で働いているって言うじゃないッ! なんで教えてくれなかったのよォッ!」
その人は店の隅で石になっているわたしを「なんの用? 客?」と澄ました顔で一瞥した。ヨッシーというのは、吉三さんのことだろうか。
タキくんの誕生日の翌日。朝十一時にお店に来たわたしを待ち構えていたのは、ぼさぼさ頭のタキくんと、ピンクとさかの超個性的な男性だった。
タキくんはその人の言葉に顔を上げると、ああ、とわたしに片手を上げた。それから「昨日、ごめん」と口にする。
「あっ、いえ! 体調は大丈──」
「ちょぉぉっと! この娘がタッキーの恋人だなんて言わないわよね⁉」
ひぃ!と一歩体を引くわたしを見て、タキくんは小さくため息をつく。
「ヘアスタイリストのジョーさん。で、こっちは店を手伝ってくれてる一花ちゃん」
多分、タキくんに出会ってから彼が発した一番長い文章だったと思う。
ジョーさんは腕を組んでわたしのことを頭の先からつま先まで三往復くらい視線を走らせると、それからフンと鼻を鳴らした。
っていうかそれよりなにより──。
〝一花ちゃん⁉〟
突然名前を、しかもちゃん付けで呼ばれたことに一気に顔が熱を持つ。実は以前一度、タキくんに名前を呼ばれたことはある。それはあの個別握手会で、わたしは手書きの名札を堂々と胸元に貼っていたからで──ちなみにこれもオタクあるあるだ──、そのときタキくんはわたしの手をきゅっと両手で握りながら『一花ちゃんありがとう』と言ってくれて、わたしはそのあと大泣きしたんだけど。
だけどそれとこれは、まったく次元の違う話だ。いまのタキくんの『一花ちゃん』は、『俺の知り合いの一花ちゃん』という意味合いを持っているのだから。推しにプライベートで名前を呼ばれる。それは本当ならば、このまま卒倒しそうな出来事ではあるのだけど、わたしはどうにか浅く深呼吸をして平静を保つ。
もしそんな浮かれた要素を出してしまえば、タキくんはともかく、ジョーさんに羽交い絞めにされかねない。
「一花です、よろしくお願いします!」
動揺を悟られないよう勢いよく頭を下げるも、「ハイハイ」と片手であしらったジョーさんは、すぐにタキくんへと体の向きを変える。
「それよりタッキー! アタシが来たからもう大丈夫よ! そのもっさい頭、今すぐスタイリッシュにしてあげるワ!」
「え……」
──そこからのジョーさんの行動は、とてつもなく速かった。
まずわたしに店前に新聞紙を広げるように指示し、店の奥で埃をかぶっていたパイプ椅子を配置させ、そこにタキくんを座らせた。そこへ、頭が入る穴を開けた──もちろん、わたしが指示されハサミで開けた──ゴミ袋をばさりとかける。
タキくんはジョーさんのことを止める術を知らないのか、そもそも抵抗する気もないのか、ただされるがまま、ジョーさんに頭を預けた。
穏やかな晴れの日。さびれた路地で、髪を切る。
それはなんだか、昭和のよき日を表現したかのような風景で、わたしはそっと目を細める。
ジョーさんは変わっている。だけど、さすがは第一線で働いているだけはある。手さばきは素人のわたしから見ても魔法のようで、カットするというシンプルな中に、ハサミや髪の毛に対する敬いのようなものが垣間見えたような気がした。
タキくんはマシンガントークのジョーさんの言葉には終始無言だったけれど、優しい表情で目を閉じている。そこには、ジョーさんへの信頼や懐かしさがあるのだろう。
このお店で彼に出会ってから初めて見る、彼のとてもリラックスした表情だった。
「さーってと、こんなもんかしらねっ」
「ひいぃ……」
思わず漏れ出た感嘆を、ジョーさんのひと睨みで喉の奥へと押し返す。
「そうよそうよ、タッキーはこうじゃなきゃ! この綺麗なグレーの瞳が見えてこそのタッキーなんだからっ!」
カットを終えたタキくんは、わたしがよく知る、現役時代の彼そっくりだ。いや、本人なのだからこの表現が正しいわけではないことくらい、わかっているんだけど。
「視界、明るくなった」
ぽそりと言うタキくん。それも当然の感想だろう。今までのタキくんは、前髪で視界がすっぽり覆われていたのだから。
しかしまずい。今までは、タキくんはタキくんでも、現役のころの彼とは様子が異なっていた。だからこそわたしは、まだ自制心を保つことができていたのだ。それがこんな風に、〝推し様どーんっ!〟というような容姿に戻られてしまっては、日常生活に支障が出てしまうかもしれない。
そんなことを思いながらも、視線はタキくんにくぎ付け状態。もしかしたら目が血走っているかも。
「……変?」
その様子を不可解に思ったのか、不意にタキくんに問われ、「ひぃ」なんて変な声を上げてしまう。めちゃくちゃに失礼だ。
わたしは慌てて咳払いをすると「よ、よいと思います!」と背筋を伸ばした。心臓はいまだ、どくどくと脈打っている。
そんなわたしを見たタキくんの口元は、ほんの少しだけ力が緩んだような気がした。
「アタシ的には、眼鏡も外してほしいところだけど……。ファンなんかが殺到しても迷惑だしね。カモフラージュでつけておきましょ。うまくいけば、そっくりさんくらいで済むでしょ」
ジョーさんの言う通りだ。ここでタキくんが働いていることを知ったら、多くのタキファンはここぞとばかりに訪れてしまうだろう。みんながみんな、過激なファンなわけではない。それでも自分の推しが今どうしているのか、健康に過ごしているのか。その姿を一目見るだけでいいから、と願う人は多いはずだ。
「ジョーさん、お茶?」
さっぱりと刈られた襟足を右手でさすりながら、タキくんは奥へと戻る。その後ろ姿を見送っていると、ふいに耳元で「ちょっと」と図太い声が響いた。
「娘、タキのファンでしょ?」
この狭い店内で逃げられるはずもない。必要以上に近いジョーさんから一歩体を引き、だけどわたしは素直に頷いた。
ジョーさんは、はあ、とあからさまなくらいに大きなため息をつく。それから、一度だけ奥へと目をやってタキくんがまだ戻らないことを確認すると、声のトーンをひとつ下げた。
「タッキー、ちゃんと食べてるの?」
「……いつも、食パンを食べてるイメージです」
「あんたねぇ! 甲斐甲斐しく手料理の一つでもできないの?」
「いや、身内でもないのに手料理って怖くないですか?」
「……確かに。あんた、割とわきまえてるわね。それにファンの手作りとか、怪しい薬でも入ってそうで怖くて食べられたもんじゃないわ」
料理は作ってきたことはない。だけど、ケーキはある。──というのは、ここでは伏せておこう。視線で串刺しにされそうだ。
「で、ずっとあんな調子なわけ?」
「あんな、とは」
「表情がないっていうか、腑抜けっていうか」
「あー……」
腑抜けとは言わないまでも、たしかにタキくんの表情は、いつでもほとんど変わらない。
それでも今日、ジョーさんに髪の毛をカットしてもらっているときにはいつもより柔らかな表情をしていたと伝えれば、ジョーさんはフフンと鼻を高くしていた。
やっぱりタキくんは、現役時代を知っているジョーさんから見ても変わってしまったのだろう。もともとは、ちゃんと笑って、ちゃんと怒って、ちゃんと悲しめる人だったに違いない。
「わたしも、本当のタキくんに会いたいです……」
そう呟くと、ジョーさんはどこか遠くを見つめるような目をした。
「本当のタッキー、ね……。あんたさ、タッキーのそばにいるときには、ファンじゃないあんたでいてやってよ」
「え?」
「芸能人にとってファンは、とてつもなくありがたい存在で財産よ。だけどタッキーは今、一般人なの。ちゃんとひとりの人間として、あの子と接してやってよ」
「……はい」
わたしはいま、どんな自分でタキくんと接しているのか。そんなこと、考えたこともなかった。
これからもタキくんのお店を手伝うのであれば、そこはもう一度見直さなければならないのかもしれない。
パーカーのポケットに入れたままの、スマホをぎゅっと手で握る。ロック画面では、キラキラとしたタキくんが、幸せそうに笑っていた。
「うん? らいじょうぶ」
にへらっと笑うタキくんに、わたしの心臓は思わずきゅんっとしてしまう。だってこんなの、アイドルをしていた頃のタキくんの笑顔みたいなんだもん。
タキくんのお誕生日。わたしたちはケーキを食べて、その日の最後の五分を一緒に過ごした。どうやらケーキがおいしかったのは本当だったらしい。
「お礼がしたい」と言ったタキくんは、店から清水節を持ってくると、その栓を抜いたのだ。
そして約一時間ちょっとが経過した現在、タキくんはべろんべろんに酔っぱらってしまっている。ちなみに清水節は、まだ瓶の八分目くらいだ。
「タキくん、ちょっと飲み過ぎじゃないですか? お水飲んでください」
「うんうんうん、そうらねぇ……」
タキくんはどうやら、お酒にめっぽう弱いらしい。そのままコテンと畳の上に横になってしまう。
ちなみにわたしは、日本酒が苦手なのでビールでお相手させてもらっている。しかし、アルコールへの耐性で言えば、わたしの方が遥かにそれがあるみたいだ。
最初は九州男児──これはただのイメージだけど──のように、無言で手酌をしながら飲んでいたタキくんは、ほんの十分後くらいには顔を赤らめぽつぽつと言葉を発するようになり、やがて饒舌なほどにおしゃべりな人間へと変貌した。
お酒の力って怖い……。
「タキくん、お布団で寝てください。風邪ひきますから」
部屋の隅に畳んである布団を指差すも、タキくんは「ウンウン」と楽しそうに頷きながらも体を起こそうとはしない。仕方ないので、掛け布団だけタキくんの体にかけてあげることにする。
「……ファンだから?」
時間も遅いし、そろそろ帰らなきゃ。そう思ったわたしの後ろ髪を、タキくんの言葉が引いた。
思わず彼の顔を見ると、目を閉じているタキくんは、もう一度「ファンだから?」とむにゃりと口にする。
「……ファンだからここまでしてくれるの?」
お酒を飲んで酔っているし、半分はもう眠りの世界へと行ってしまっているタキくん。明日にはきっと、こんなことを口走ったことも忘れてしまうのだろう。
「そうです。タキくんは、わたしの推しですから」
わたしはそう答え、もう一度布団をかけ直した。
ファンの前でこんな無防備な姿を見せたら、危険なことこの上ない。わたしがもし肉食女子だったら、大変なことになっていただろう。
この人はここまで、よく無事に生きてこられたなぁなどと考えてしまう。
だけどその素直さや純粋さは、わたしが大好きだったタキくんのイメージそのものだ。
やっぱり本当のタキくんは、わたしが追いかけてきたきらきらとした彼なのだろう。今は色々な事があって、それを見失ってしまっているだけ。彼がそれを取り戻したら、わたしはそっと消えようと思っている。
推しとファンは、距離感を保ってこその関係だから。
かけられた布団の中で、きゅっと一度体を縮めるタキくん。その姿は年上であるにも関わらず、子供のようにも見えて微笑ましくなってしまう。
わたしはそっと、タッパーを自分の鞄へとしまった。
「……ごめんね」
ぽそりと一粒、彼の言葉が部屋に響く。
わたしはゆっくりと、横になる彼に顔を向けた。
「〝タキ〟は、死んだよ──」
──え?
ひやりと背中に冷たい汗が伝っていく。
「た、タキくん……」
その言葉を最後に、彼からはすうすうと穏やかな寝息だけが聞こえてきた。すっかりと眠ってしまったみたいだ。
──どうかこれが、わたしの聞き間違いでありますように。
そんな祈りを白熱灯にそっと捧げ、わたしは荷物を持って店を出た。
わたしがSTAYを知ったのは、ほとんどの人たちがそうであったように、テレビを通してのことだった。わたしが高校三年生のときだから、かれこれ五年ほど前になる。
その頃のわたしといえば、大袈裟に聞こえるかもしれないけれど、生きるということに無頓着だった。
もともとクラスで目立たない地味な生徒。親の期待に応えたくて背伸びして入学した高校はわたしにはやっぱりちょっとレベルが高くて、勉強もスポーツもてんでだめ。ただし、父親が地元の議員をしていたのもあり、先生たちはなにかとわたしを気にかけた。
同じクラスの子たちが、それをおもしろくないと思うのは必然的な流れだったと思う。
最初はお決まりの、上履きがなくなるということだった。ついで、教科書や体操着がゴミ捨て場から見つかった。故意的にぶつかられて倒れることもあったし、階段から突き落とされそうになったこともある。
まとわりつくような視線と、クスクスと刺さる笑い声。それは〝誰が〟などというものではなく、〝自分以外の全員〟からのものだった。
親に言えるわけがない。先生にも言えるわけがない。友達もいない。救いがない。
初めの頃は傷ついた。ショックで悲しくて恐ろしくて、そして自分の悲運を嘆いた。だけどだんだん、そういうこともなくなっていった。
毎日傷ついていたら、いつかわたしの心は削れて削れてなくなっていってしまう。
だからわたしは、感情を手放していくという方法を選んだのだ。悲しいと思う気持ち。胸を締め付ける苦しみ。誰かに憎まれているという恐怖心。
そうやってわたしは、からっぽになっていった。
別に死にたいなんて思わない。だけど、生きているという実感もなく、ただふわふわと空中を浮いている風船みたいな状態だった。いつ死んでも、別にいいやって思っていた。
そんなとき、たまたま家でつけたテレビにSTAYが出ていたのだ。その頃から、彼らはすでに人気者だった。わたしよりもいくつか年上である彼らは、画面の中できらきらと輝いていた。
あの番組はドキュメンタリー番組で、タキくんはインタビューに答えているところだった。そのときに、彼は言ったのだ。
『僕たちは伝えたいんです。〝全部わかってくれるひとに、いつか会えるよ〟って』
その言葉を聞いて、わたしはリビングで泣き崩れた。
あれはなにも、わたしに向けて放たれた言葉ではない。テレビ用の決めセリフだったのかもしれない。それでもわたしにとっては、どこかへ手放したはずの感情をすべて取り戻すだけの力があったのだ。
「ただいま」
がちゃりとアパートの部屋を開け、後ろ手で鍵を閉める。挨拶をしたって、誰から返事が来るわけでもないのに。
そのまま鞄を置いて、わたしはお風呂場へと直行した。
わたしが住んでいるのは、新宿から電車で二駅の場所。とは言っても、終電がない時間帯には歩いて帰ることのできる距離だ。
キュッとシャワーの蛇口を捻り、水がお湯になるのを待つ。その間にクレンジングでメイクを落とした。
「タキくん……どういう意味だったんだろう……」
聞き間違いであってほしい。そう願ったものの、思い出せば思い出すほど、タキくんは確かに『死んだ』と口にしたという確信が強まっていった。
タキくんは、現実としては生きている。芸能界を引退して、倉間酒店で働いている。そう思うと、あの言葉が指すところは『STAYのタキは死んだ』と解釈するのが適切だろう。
「芸能界を引退したから、って意味なのかな……」
出しっぱなしにしていたシャワーは、適温になっている。普段より温度を上げたわたしは、「わからないや」とシャワーを頭からざばりとかぶった。
◇
「ちょっとぉ! タッキーどういうこと⁉ 連絡も寄越さず、こんなボロボロになっちゃってェ!」
ピンク色のとさか頭に、蛍光イエローのスパッツを履いた男性の登場に、わたしは扉のところで石のように固まっていた。
「んもぉ! ヨッシー問い詰めたら、このお店で働いているって言うじゃないッ! なんで教えてくれなかったのよォッ!」
その人は店の隅で石になっているわたしを「なんの用? 客?」と澄ました顔で一瞥した。ヨッシーというのは、吉三さんのことだろうか。
タキくんの誕生日の翌日。朝十一時にお店に来たわたしを待ち構えていたのは、ぼさぼさ頭のタキくんと、ピンクとさかの超個性的な男性だった。
タキくんはその人の言葉に顔を上げると、ああ、とわたしに片手を上げた。それから「昨日、ごめん」と口にする。
「あっ、いえ! 体調は大丈──」
「ちょぉぉっと! この娘がタッキーの恋人だなんて言わないわよね⁉」
ひぃ!と一歩体を引くわたしを見て、タキくんは小さくため息をつく。
「ヘアスタイリストのジョーさん。で、こっちは店を手伝ってくれてる一花ちゃん」
多分、タキくんに出会ってから彼が発した一番長い文章だったと思う。
ジョーさんは腕を組んでわたしのことを頭の先からつま先まで三往復くらい視線を走らせると、それからフンと鼻を鳴らした。
っていうかそれよりなにより──。
〝一花ちゃん⁉〟
突然名前を、しかもちゃん付けで呼ばれたことに一気に顔が熱を持つ。実は以前一度、タキくんに名前を呼ばれたことはある。それはあの個別握手会で、わたしは手書きの名札を堂々と胸元に貼っていたからで──ちなみにこれもオタクあるあるだ──、そのときタキくんはわたしの手をきゅっと両手で握りながら『一花ちゃんありがとう』と言ってくれて、わたしはそのあと大泣きしたんだけど。
だけどそれとこれは、まったく次元の違う話だ。いまのタキくんの『一花ちゃん』は、『俺の知り合いの一花ちゃん』という意味合いを持っているのだから。推しにプライベートで名前を呼ばれる。それは本当ならば、このまま卒倒しそうな出来事ではあるのだけど、わたしはどうにか浅く深呼吸をして平静を保つ。
もしそんな浮かれた要素を出してしまえば、タキくんはともかく、ジョーさんに羽交い絞めにされかねない。
「一花です、よろしくお願いします!」
動揺を悟られないよう勢いよく頭を下げるも、「ハイハイ」と片手であしらったジョーさんは、すぐにタキくんへと体の向きを変える。
「それよりタッキー! アタシが来たからもう大丈夫よ! そのもっさい頭、今すぐスタイリッシュにしてあげるワ!」
「え……」
──そこからのジョーさんの行動は、とてつもなく速かった。
まずわたしに店前に新聞紙を広げるように指示し、店の奥で埃をかぶっていたパイプ椅子を配置させ、そこにタキくんを座らせた。そこへ、頭が入る穴を開けた──もちろん、わたしが指示されハサミで開けた──ゴミ袋をばさりとかける。
タキくんはジョーさんのことを止める術を知らないのか、そもそも抵抗する気もないのか、ただされるがまま、ジョーさんに頭を預けた。
穏やかな晴れの日。さびれた路地で、髪を切る。
それはなんだか、昭和のよき日を表現したかのような風景で、わたしはそっと目を細める。
ジョーさんは変わっている。だけど、さすがは第一線で働いているだけはある。手さばきは素人のわたしから見ても魔法のようで、カットするというシンプルな中に、ハサミや髪の毛に対する敬いのようなものが垣間見えたような気がした。
タキくんはマシンガントークのジョーさんの言葉には終始無言だったけれど、優しい表情で目を閉じている。そこには、ジョーさんへの信頼や懐かしさがあるのだろう。
このお店で彼に出会ってから初めて見る、彼のとてもリラックスした表情だった。
「さーってと、こんなもんかしらねっ」
「ひいぃ……」
思わず漏れ出た感嘆を、ジョーさんのひと睨みで喉の奥へと押し返す。
「そうよそうよ、タッキーはこうじゃなきゃ! この綺麗なグレーの瞳が見えてこそのタッキーなんだからっ!」
カットを終えたタキくんは、わたしがよく知る、現役時代の彼そっくりだ。いや、本人なのだからこの表現が正しいわけではないことくらい、わかっているんだけど。
「視界、明るくなった」
ぽそりと言うタキくん。それも当然の感想だろう。今までのタキくんは、前髪で視界がすっぽり覆われていたのだから。
しかしまずい。今までは、タキくんはタキくんでも、現役のころの彼とは様子が異なっていた。だからこそわたしは、まだ自制心を保つことができていたのだ。それがこんな風に、〝推し様どーんっ!〟というような容姿に戻られてしまっては、日常生活に支障が出てしまうかもしれない。
そんなことを思いながらも、視線はタキくんにくぎ付け状態。もしかしたら目が血走っているかも。
「……変?」
その様子を不可解に思ったのか、不意にタキくんに問われ、「ひぃ」なんて変な声を上げてしまう。めちゃくちゃに失礼だ。
わたしは慌てて咳払いをすると「よ、よいと思います!」と背筋を伸ばした。心臓はいまだ、どくどくと脈打っている。
そんなわたしを見たタキくんの口元は、ほんの少しだけ力が緩んだような気がした。
「アタシ的には、眼鏡も外してほしいところだけど……。ファンなんかが殺到しても迷惑だしね。カモフラージュでつけておきましょ。うまくいけば、そっくりさんくらいで済むでしょ」
ジョーさんの言う通りだ。ここでタキくんが働いていることを知ったら、多くのタキファンはここぞとばかりに訪れてしまうだろう。みんながみんな、過激なファンなわけではない。それでも自分の推しが今どうしているのか、健康に過ごしているのか。その姿を一目見るだけでいいから、と願う人は多いはずだ。
「ジョーさん、お茶?」
さっぱりと刈られた襟足を右手でさすりながら、タキくんは奥へと戻る。その後ろ姿を見送っていると、ふいに耳元で「ちょっと」と図太い声が響いた。
「娘、タキのファンでしょ?」
この狭い店内で逃げられるはずもない。必要以上に近いジョーさんから一歩体を引き、だけどわたしは素直に頷いた。
ジョーさんは、はあ、とあからさまなくらいに大きなため息をつく。それから、一度だけ奥へと目をやってタキくんがまだ戻らないことを確認すると、声のトーンをひとつ下げた。
「タッキー、ちゃんと食べてるの?」
「……いつも、食パンを食べてるイメージです」
「あんたねぇ! 甲斐甲斐しく手料理の一つでもできないの?」
「いや、身内でもないのに手料理って怖くないですか?」
「……確かに。あんた、割とわきまえてるわね。それにファンの手作りとか、怪しい薬でも入ってそうで怖くて食べられたもんじゃないわ」
料理は作ってきたことはない。だけど、ケーキはある。──というのは、ここでは伏せておこう。視線で串刺しにされそうだ。
「で、ずっとあんな調子なわけ?」
「あんな、とは」
「表情がないっていうか、腑抜けっていうか」
「あー……」
腑抜けとは言わないまでも、たしかにタキくんの表情は、いつでもほとんど変わらない。
それでも今日、ジョーさんに髪の毛をカットしてもらっているときにはいつもより柔らかな表情をしていたと伝えれば、ジョーさんはフフンと鼻を高くしていた。
やっぱりタキくんは、現役時代を知っているジョーさんから見ても変わってしまったのだろう。もともとは、ちゃんと笑って、ちゃんと怒って、ちゃんと悲しめる人だったに違いない。
「わたしも、本当のタキくんに会いたいです……」
そう呟くと、ジョーさんはどこか遠くを見つめるような目をした。
「本当のタッキー、ね……。あんたさ、タッキーのそばにいるときには、ファンじゃないあんたでいてやってよ」
「え?」
「芸能人にとってファンは、とてつもなくありがたい存在で財産よ。だけどタッキーは今、一般人なの。ちゃんとひとりの人間として、あの子と接してやってよ」
「……はい」
わたしはいま、どんな自分でタキくんと接しているのか。そんなこと、考えたこともなかった。
これからもタキくんのお店を手伝うのであれば、そこはもう一度見直さなければならないのかもしれない。
パーカーのポケットに入れたままの、スマホをぎゅっと手で握る。ロック画面では、キラキラとしたタキくんが、幸せそうに笑っていた。
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