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49. 王城編:個別説得③ 〜メイベル女官長〜
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王城の奥、静かな書庫の一角。
アレクシスはメイベル女官長を呼び出していた。
彼女は長年王妃付を務め、今や城内でもっとも鋭い洞察力と冷静さを持つ重鎮のひとりである。
「殿下にお呼びいただけるとは、光栄でございます」
静かに一礼するメイベルの表情は、いつもと変わらぬ穏やかさを湛えていた。
しかし、その奥に何かを見透かすような光があるのをアレクシスは感じ取っていた。
「……長年、王家を支えてくださった貴女には、改めて私の決断を説明しておきたかった」
「殿下のお考えはすでに伺っておりますわ。王位をお譲りになると――」
メイベルは静かに目を伏せた。
「けれど、殿下の本心は……本当に、すべてを放棄なさるほどのものでございますの?」
アレクシスはわずかに目を細めた。
「貴女は察しているのだな。私がどこまで計算した上で、この道を選んだのかを。」
「ええ。殿下は決して愚かでも、情に流されただけでもございません。
むしろ、殿下がこの決断をされたのは――国のため、クラリッサ様のため、すべてを守るための覚悟ゆえでしょう」
その言葉に、アレクシスはかすかに微笑んだ。
「……本心を見抜かれては、私ももう言い逃れはできぬな」
「殿下は、わざと周囲に誤解を抱かせることで、ユリウス殿下の即位を円滑に進めようとしておいでですね。
殿下が“王の器を欠いた”と皆が思えば思うほど、誰もユリウス殿下を妨げられなくなる」
アレクシスはゆっくりとうなずいた。
「それでも、クラリッサだけは守りたかった。彼女に王妃の重責を負わせれば、再び陰謀や誤解に巻き込まれる。
ならば、私が矢面に立つべきだと考えた。」
メイベルは深く息を吐き、小さく微笑んだ。
「殿下は誠にお優しきお方……ですが、あまりに非情でもございますわ。
己を悪役に仕立てる覚悟など、誰にでもできるものではありません」
「この道が正しかったかはわからない。
だが――私は信じる。ユリウスならば、この国を導けるはずだと」
メイベルは深く頭を下げた。
「殿下のご決断、確かに承りました。
私もこれよりは、ユリウス殿下と新たな王妃殿下を全力でお支えいたしましょう。
そして……どうか、殿下もこれからは、ご自身の幸せをお忘れなく」
アレクシスはわずかに目を伏せ、柔らかく微笑んだ。
「ありがとう、メイベル」
こうして、最後の重臣もまた静かに歩み寄った。
* * *
ここまでお読みいただきありがとうございます。
お気に入りやいいねで応援してくださる皆さまにも、心より感謝申し上げます。
いよいよ王位継承の場面へと進んでまいります。
アレクシスはメイベル女官長を呼び出していた。
彼女は長年王妃付を務め、今や城内でもっとも鋭い洞察力と冷静さを持つ重鎮のひとりである。
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静かに一礼するメイベルの表情は、いつもと変わらぬ穏やかさを湛えていた。
しかし、その奥に何かを見透かすような光があるのをアレクシスは感じ取っていた。
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「殿下のお考えはすでに伺っておりますわ。王位をお譲りになると――」
メイベルは静かに目を伏せた。
「けれど、殿下の本心は……本当に、すべてを放棄なさるほどのものでございますの?」
アレクシスはわずかに目を細めた。
「貴女は察しているのだな。私がどこまで計算した上で、この道を選んだのかを。」
「ええ。殿下は決して愚かでも、情に流されただけでもございません。
むしろ、殿下がこの決断をされたのは――国のため、クラリッサ様のため、すべてを守るための覚悟ゆえでしょう」
その言葉に、アレクシスはかすかに微笑んだ。
「……本心を見抜かれては、私ももう言い逃れはできぬな」
「殿下は、わざと周囲に誤解を抱かせることで、ユリウス殿下の即位を円滑に進めようとしておいでですね。
殿下が“王の器を欠いた”と皆が思えば思うほど、誰もユリウス殿下を妨げられなくなる」
アレクシスはゆっくりとうなずいた。
「それでも、クラリッサだけは守りたかった。彼女に王妃の重責を負わせれば、再び陰謀や誤解に巻き込まれる。
ならば、私が矢面に立つべきだと考えた。」
メイベルは深く息を吐き、小さく微笑んだ。
「殿下は誠にお優しきお方……ですが、あまりに非情でもございますわ。
己を悪役に仕立てる覚悟など、誰にでもできるものではありません」
「この道が正しかったかはわからない。
だが――私は信じる。ユリウスならば、この国を導けるはずだと」
メイベルは深く頭を下げた。
「殿下のご決断、確かに承りました。
私もこれよりは、ユリウス殿下と新たな王妃殿下を全力でお支えいたしましょう。
そして……どうか、殿下もこれからは、ご自身の幸せをお忘れなく」
アレクシスはわずかに目を伏せ、柔らかく微笑んだ。
「ありがとう、メイベル」
こうして、最後の重臣もまた静かに歩み寄った。
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