婚約破棄?それならこの国を返して頂きます

Ruhuna

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その3

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夏休みが終了した


約1ヶ月の夏休みはほぼ公爵家のだだ広い図書室で本を読むことに集中した
帝王学、経済学、心理学……
キリがないほどの膨大な量を1ヶ月で読み切ったマーガレットは満足げな顔をしていた

始業式前日
執務室に来たマーガレットは父であるエルリックと対峙していた

「明日からまた学園生活だと思うと憂鬱ですわ」

ナラード、ミア、ロゼリーヌのことを頭に思い浮かべ大きなため息をつくマーガレットはその美しい顔を歪ませていた
そんな娘の顔をみて笑いを堪えているのは父のエルリックである

「私も明日は登城日だからね。一緒にがんばろう」
「お父様は半日で帰られるじゃないですか!私もそれがいいですわ」

月4回の半日しか活動しない父をマーガレットは恨めしそうな目で見つめ返した
そんな娘を見てエルリックは苦笑した


「さて、本題に入ろう。君は学園。私は王城。最後のチャンスを与えに行こうじゃないか」
「心得ておりますわ。この1ヶ月で貴族派の令息令嬢にも手紙は出しております。」
「うむ。それではまた1ヶ月後会えるのを楽しみにしているよ」

父と約束を交わしたマーガレットは学園へと旅立っていった




ーーーー


時は移り学園の最上階に位置する生徒会室では貴族派の生徒が集まっていた
その中心に座るのはマーガレット・ウィンザーだ

「マーガレット様。いただいたお手紙は拝謁しました。殿下とミア嬢の監視は変わらず徹底いたします」
「ええ。よろしくお願いするわねソフィー様」
「そんな!どうかソフィーとお呼びください」

ソフィー・ハウンゼン伯爵令嬢は貴族派の中でも特に公爵家を助けてくれる一族であった
アルティマ王国は王族派と貴族派に分かれているのは今に始まったことではない
王家を主と考える王族派と王国唯一の公爵家であるウィンザー家を主とする貴族派
つまり『根暗公爵』と呼ぶのは王族派の貴族であった

「それでは皆さん。恙無く残りの学園生活を楽しみましょう」

にっこりとマーガレットは微笑んだ
令息令嬢は普段は隠されているマーガレットの美しい顔にうっとりと見惚れていた



エルリックから送られてくる手紙を寮の自室で読むマーガレットは頭を抱えた
腐りに腐りきっているとはおもったがここまで酷いものだと思っていなかったために

「『答えは応だ』」

エルリックからの手紙の最後には旧字体でそう書かれている
旧字体。遥か昔に消滅したと言われる字体である
今では読めるものはごく僅かなその字体を公爵家では幼き頃からの必須教科とされていたためにマーガレットはその字を難なく読むことができたのだ
そして返事を書き出す

「シェリーこれをお父様へ」
「かしこまりました。…お嬢様もお決めになられたのですね」
「ええ。一時は本当に悩んだけれど…あんなことされてさすがに私も我慢がならないわ」

侍女であるシェリーの言葉にマーガレットは1週間前に起きた出来事を振り返った





その日、マーガレットは担任教師に頼まれ書類整理を行なっていた
部屋には教師とマーガレットの2人
いくら教師とて男性と密室に2人は淑女として恥ずべきものであるため部屋のドアは開け放たれていた
その状況ならば教師とマーガレットが密接な関係だとは誰も疑わない、疑うはずがない状況下であの女が騒ぎ出したのだ

「マーガレット様と教師の方が部屋でいやらしいことをしていたのをミアはみましたあ!」

間延びした鼻につくような言い方をするのはミアだ
彼女はこの前と違い随分と豪華なドレスに身を包んでいた 
ナラードが自由に使えるお金は案外と少ない
その彼からプレゼントされるにはあまりにも高価すぎるドレスに違和感を感じた


顔色一つ変えず何も言わないマーガレットに対してナラードが声を荒げた

「私という婚約者がいながら不貞をするなど!この恥知らずが!」
「殿下。私、ミア嬢が仰ることがよくわからないのですが」
「そうやって知らんふりをしてもダメですよ!ミアはマーガレット様と教師の方が抱き合ってるのをみちゃったんです!」
「いつ、どこで、誰と誰が?」
「だからぁ、ルミリア様と教師の方よぉ!何度言わせるのよまったくぅ!」

ルミリアは馬鹿も度がすぎると狂人になるのかと思った
ミアの言っていることが本当にわからなかったのだ
たしかにルミリアは教師の手伝いをしに部屋に入った
だが部屋のドアは開けていたし、なんならほぼ会話をすることなく黙々と作業をしていた
けして抱き合っていた事実などないのだ
ミアが何かを勘違いしてるのかもしれないと悟ったマーガレットは間違えを正してあげようと声を上げようとしたその瞬間ーー


「まあまあまあ!今日も地味なマーガレット様と淫猥なミア様ではないの!」
「淫猥?!ミアそんなじゃないわよ!!」

颯爽と現れたロゼリーヌの出現にマーガレットはさらに頭を抱えた





「厚化粧!」「平民!」「太っちょ!」
「淫乱!」「守銭奴!」

目の前で繰り広げられている低レベルな喧嘩を見せつけられているマーガレットは一刻も早くこの場から立ち去りたかった
ぎゃーぎゃー騒ぎ倒すロゼリーヌとミアをみてられなかったのだ

「おい。あの2人を止めろ」
「無理ですわ。女の喧嘩はそう簡単に止まりませんもの」
「ちっ。役立たずだな貴様は」
「では殿下が仲裁に入られては?私よりはよほど聞くと思いますが」

面倒ごとが嫌いなナラードはいつだって面倒ごとをマーガレットに押し付けてきた
彼は愛するミアが困っていようが自分が口を出すことはあまりない
その相手がマーガレットならば罵倒する言葉が出てくるが他の者、特にロゼリーヌに対しては口を出したがらない


いつまで経っても終わらない低レベルな喧嘩に飽き飽きしたマーガレットは黙ってその場を離れようと動いた

「待て、話はまだ終わってないぞ!」
「きゃっ!」

動き出したマーガレットの腕をナラードが激しく掴んだ
マーガレットは今日たまたま普段はあまり履かないヒールの高い靴を履いていた
そして運悪くマーガレットがよろめいた先は階段だった

「きゃぁぁぁぁぁあ!!!」
「うわぁぁぁぁあ!」

マーガレットは咄嗟にナラードを掴もうとした
女性がよろめいてしかもその先は階段だ
普通の男性ならすかさず庇おうと動くだろう
だがナラードは普通の男性では無い
あろうことか落ちていくルミリアに反応できないばかりかまるで自分が落ちているかの如く情けない叫び声を上げて蹲み込んでしまったのだ

「だ、誰か!!マーガレット様が階段から落ちたわ!!」

ゴロゴロとまるで喜劇の様に階段下に落ちていったマーガレットをみてロゼリーヌが叫ぶ
侯爵令嬢であるロゼリーヌの叫び声に何事かと人々が集まってきた
そんな最中にミアとナラードは怯えた顔をしてバレないようにその場を急ぎ足で去っていった


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