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その6
しおりを挟む麗かな午後の日差しが溢れる王宮のテラスでは銀髪紫眼の容姿をもつ美しい麗人が2人
1人は先日、新国王となったエドアルトと結婚した王妃、アデライン
もう1人はアデラインの叔母にして隣国、イフォンネ公爵夫人のヒルデ
「お疲れ様アデライン。よくやってくれたわ」
「ヒルデ叔母様のご助言があったからこそなし得たことですわ」
「ふふ。それにしてもここまでうまくいくなんて思ってもいなかったから…馬鹿につける薬はないって本当ね」
「私としては18年越しに恨みを晴らしたヒルデ叔母様の忍耐力がすごいですわ」
どちらともなく穏やかな笑みが溢れた
ヒルデ・イフォンネ公爵夫人がロドリグ王国新国王即位の祝賀会に隣国からの使者としてやってきたのは1週間前のことであった
祝賀会の準備などに追われていたアデラインはようやっと時間を作りヒルデとお茶会をしていた
アデラインは元国王たちのことについて事細かくヒルデに話した
アデラインの話を遮ることなく最後まで静かに聞いていたヒルデは穏やかな笑みを浮かべて「ありがとう」と一言呟いた
そこからは昔話に花が咲き、話が一周したところでまた話題は元国王たちに戻った
「元国王はね王太子時代の時から見え張りで傲慢だったのよ。私が何かいえば不貞腐れて…不貞腐れる暇があるなら勉強しなさいよって何度言ったことか」
「ヨーゼフとそう変わらなかったのですね」
「ええ。ヨーゼフと違ってちゃんと王族の血はあったから尚更わがままで、婚約破棄するって言われた時は嬉しかったわ」
にこりと笑うヒルデは36歳には見えないほど若々しく美しかった
元王妃とは違って、磨かれて洗脳された美しさを持つヒルデに対して元国王が執着する理由もなんとなくわかる気がするとアデラインは思った
「あら、そういえばメアリたちはどうなったの?」
ヒルデが思い出したかのようにアデラインに聞いた
「メアリ元王妃と元宰相は血統偽装の罪があまりにも重く終身刑となりましたわ。元国王は退位後、養生という名目で炭鉱送りになってます。
ヨーゼフに関しては情状酌量の余地有りということで北の離宮で生涯過ごしてもらいます」
「ふーん、随分と軽くで済ませたのね」
「陛下が死刑を廃止して終身刑というもので生き地獄を味わわせる。といってましたわ」
エドアルトは即位後すぐに法律改定を行った
罪人に対する最も重い罪はそれまでは、死刑だったがこれを廃止
新たに終身刑を作り一生涯を牢ですごす刑を作り上げたのだ
一見すると罪人に対して温情があるようだがよくよく考えると一生涯同じ牢で過ごし、自由を奪われ死人と同じように暮らす生活を果たして温情と言えるのは捉える人次第だ
「エドアルト、いえ、陛下らしいわね」
「ヒルデ叔母様を虐めた人たちは許さないとも仰ってましたから」
「陛下は幼少の頃からよく私に懐いてくれてたの。王宮に行けばちょこまかと後ろをついてきてね…それが今はあんなに大きくなるなんて」
昔を懐かしむように遠くを見つめるヒルデをみてアデラインは心が苦しくなった
エドアルトはヒルデのことが好きだったのだ
それはアデラインがエドアルトに対して恋心を自覚しした時だった
エドアルトに「結婚はしないのか?」と問いかけた際に
『私はある人の力になりたい。それまでは誰とも添い遂げるつもりはない』と、
10歳を過ぎた頃のアデラインでも失恋したと理解しその日は夜ご飯も食べずに部屋で泣き明かしたのを今でも覚えている
あの頃からエドアルトに対しての恋心をなんとか抑え込み、エドアルトがいう「あの人」がヒルデのことだとわかり、ヒルデの名誉を回復するために手助けをする助手的存在となったのだ
それは王妃となった今でも変わらない
元来の契約通りエドアルトはアデラインを王妃として娶ってくれた
だがそれは契約があるから娶ってくれただけでありそこにエドアルトの感情はないとアデラインは認識していた
正直、隣国の使者としてヒルデが来るとわかった日は複雑な気持ちだった
(「大丈夫。形だけとはいえ今は私がエドアルト様の妻だもの。それにヒルデ叔母様に嫉妬なんて見苦しいわ」)
心の中で必死に自分に弁明した
緊張からか紅茶飲む速度が普段よりも早くなってしまう
「あら、噂をすれば陛下のお出ましだわ」
「えっ」
ヒルデの声に後ろを振り返ればテラスに向かってくるエドアルトの姿があった
紅い瞳は嬉しそうにこちらを向いている
ガタンっーーー
「アデライン?」
「お、叔母様。私、急用を思い出しましたのっ これで失礼しますわっ」
「アデライン!ちょっと!」
目の前でヒルデとエドアルトが仲睦まじく話す姿を想像しただけで心の中の黒いモヤモヤとしたものが広がった
そんな光景を見たくなくてアデラインは急いで立ち上がりその場を離れようと駆け出した
「アデラインー!!!」
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