異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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14「落ち着け街長」

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「サバスさんはどんな異能なんすか?」

 食事をしながらタロウが大変失礼な質問をしてしまいました。
 異能の内容によっては迫害されたり崇められたりと騒ぎになる事もあります。ですので魔族に異能の内容を尋ねないのがマナーです。
 しかしこれはタロウが悪いと言うよりも、授業を止めたパンチョ兄ちゃんが悪いですね。

 チラッとパンチョ兄ちゃんを睨みつけておきました。

 しかし躾は躾。タロウの脳天に手刀を落とします。

「ぐはぁ」

「うちのタロウが大変失礼な事を。あまり常識が身に付いておりませぬ。何卒ご容赦ください」
「わはははは。お主らといると退屈せんの。サバス、教えてやれ」
「構いませんが、自慢できるものではありませんよ。人様に誇れる異能ではありませんし、私のは真祖から何代目かさえ分からないくらいの弱い異能ですから」

 ふぅ、と一拍おいたサバスさんが口を開きました。

「『性技による魅了』です」

「ん? 正義の魅了? なんかかっちょ良いんじゃないっすか?」

 残念。正義でなく性技でしょう。名前からなんとなく「淫魔」を連想するものがありますから、そうかなという思いがありました。だからこそ異能を尋ねるなどしてはいけないですのに。

「タロウ様、正義でなく性技、分かりやすく言えばセックスです。性の技によって自分の虜にする能力です。残念ですが、私ももう歳ですので既に死んだ能力です」
「ほほぅ? ところでヴァンさん、サバスさんの異能っぽい魔法は……」
「……ないことはないです」

 ヨシっ! と手を握りしめるタロウ。正直過ぎでヴァン先生、参ってしまいます。

「若い頃はぶいぶい言わせたんすかー?」
「まぁそれなりに、
「それはもう酷かったぞ。この家に若い娘を連れ込んだりとな、しかも数年前まで」

 パンチョ兄ちゃんが食い気味で言います。

 それ以上サバスさんをイジるのは居たたまれませんので話題を変えましょう。

「ところでパンチョ様、僕らは街長に用事は特に無いんですが」
「何だヴァンよ、知らぬのか?」
「何をです?」
「アンセム様の下へ向かうには南門を抜けるであろう?」
「南門からしか向かえませんから」
「南門は今、街長の許可がないと通れんのだ」

 初耳です。アンセム様の下へ向かうのはだいたい十五年ぶりです。その間にルールが変わったのでしょうか。

「知りませんでした。なぜそんな面倒な事になったのです?」
「アンセム様が面倒くさくなってしまったのだ」

 どういう事でしょう。面倒な事になったのはこちらだと思うんですが。

「あまりにもお詣りが多かったのだ。さらに竜族の長たるアンセム様の起こす奇跡、すなわち魔術による治療を求める声の多さにな」

 ははぁ、なるほど。面倒くさくというのはそのままの意味だったんですね。

「元々、人族と馴れ合うタイプの方ではないしな。それからは街長が認めたものと、必要物資の輸送のみしかアンセム様の下へは行けんのだ」
「ねぇ、パンチョさんにヴァンさん、魔術って? 魔法とは違うんすか?」

 以前に魔法の説明をした時に、少し話題に出したんですけどね、全然覚えていないようですね。

「まぁ、違うな。どちらも魔力を使うという点では同じだが、全く別種のものだそうだ」
「魔法はこの世界を構成するものを媒介とします。つまり明き神の世界の技術です。対して魔術は明き神の世界の外、昏き世界の力を使う技術です」

「さっぱり分かんないすね」
「うむ、我も分からぬ。魔法さえほとんど使えんからな」
  
 二人はガシッと手を握り合いました。魔法使えない同盟ですか。やめて下さいよ。

「ところでヴァンさんは使えるんすか?」
「簡単なものならいくつかは使えます。何ができるかは内緒ですが」
「教えてくれないんすか?」
「魔術とはそれ程に秘匿すべきものなんです」
「そういうものっすか」

 不満そうですがしょうがありません。また機会があれば、という事で納得して貰うしかありません。

「さぁ、食べたら街長の元へ行くぞ。タロウ、まだ食べておるのか」
「旨いすねこれ。ハムのサンドイッチが特に旨くって」

 ハムサンドがお気に召したようです。僕も頂きましたが、恐らくマトンのハムだと思います。

「よろしければおかわりをお持ちしますが」
「お願っす!」

 やはり食事量が全く違います。特に魔獣の肉がお好みの様ですが、タロウの「魔力感じられない問題」と関係あるのでしょうか。

 ようやく食事も済みました。

「このままアンセム様の下へ向かうのか?」
「手土産を買ってからと思っていたので、出発は明日の早朝の予定でした」

 太陽を見上げるパンチョ兄ちゃん。

「昼過ぎか。手土産用の酒は街長の所に常備してあるのを持って行けば良い。プックルがいるので、これから出発しても明るい内に着けるだろう」
「なるほど。プックルの事を忘れていました」
「許可は簡単に下りるだろう。よし、プックルも連れて街長の所へ向かおう」


 プックルはタロウと並んで歩いて、ご機嫌のようです。

「プックルはデカいけどかわいいっすー」
『タロウモカワイイ』

 とても仲良しですね。

 街長の家は街の南側だそうです。パンチョ兄ちゃんの家は中心寄りですので少し歩きます。
 ここでも、パンチョ様パンチョ様、プックルプックル、と街の人々が手を振るので思ったより時間が掛かりました。少し鬱陶しいですね。

 人気が羨ましいわけではないんですよ。本当ですよ?

 そして街長のお屋敷。
 こちらもパンチョ兄ちゃんの家と同じくらい大きいです。パンチョ兄ちゃんがいるお陰ですんなりと街長の執務室まで通されました。

「どうもどうもパンチョ様。今日はどうされました?」
「パンチョ様はおやめください街長。あなたがこの街のトップなのですから」
「いやこれは失礼。長年の癖が抜けなくていけません」

 気さくな方の様です。まだ三十歳くらいでしょうか。お若いですね。

「街長、これらはペリエ村のヴァンとタロウ、ヴァンは五英雄の一人、あのブラム様の息子だ」
「なんと! 勇者パーティの実質的なリーダー、ブラム様のご子息! 街を上げての歓迎会を! 急ぎ支度しますので私はこれで失礼致します!」
「待て! 落ち着け街長!」
「これが落ち着けますか! 離しなさいパンチョ殿!」

 パンチョ兄ちゃんの手刀が落ちます。

「ぐはぁ」

「何が、ぐはぁか。落ち着いて聞いてくれ」
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