57 / 185
44「悩む必要ないっすやん」
しおりを挟む『……ヴァン殿……、どうも体がフワフワしておかしいんでござるが、どうしたでござろうか……』
全身くまなく確認しましたが、体温があり得ないくらいに高い以外には異常ありません。
「風邪でしょうか……。以前にもこういう事がありましたか?」
『……ないでござる……、それがし、死ぬでござるか?』
「何を言ってるんですか。風邪で死ぬ人なんかいませんよ」
『そうでござるか。ヴァン殿が言うなら大丈夫でござるな……』
ロボにはそう言いましたが、風邪で亡くなる人もいるにはいます。
さらにロボはレイロウ。生態もよく分かっていません。
一過性のものなら良いですが、レイロウには致命的な病の可能性も捨て切れないです。
水と太陽の魔法による癒しの魔法を試してみましたが、一向に改善が見られません。
「まだ夜明け前ですが出発しましょう」
「……どうかしたんすか?」
「ロボの体調がおかしいです。街に行けばどうなるものでもないかも知れませんが、少しでも早く安全なところへ移動したいと思います」
「なんすって! ロボが! 癒しの魔法は使ったんすか!?」
「試してみましたが、効き目がないようです」
「じゃあじゃあ! そう! 薬! バファ◯ン! バ◯ァリンっすよ!」
ばふぁりん? 分かりませんね。タロウの世界の薬でしょうか。
「レイロウであるロボ用の薬というのはありません。あっても手元になければ意味がないですが」
「じゃぁどうするんすか!? 落ち着いてる場合じゃないっしょ!」
「ですから! 街まで急ぎたいと言ってるでしょう!」
少し沈黙。
やってしまいました。
本気で怒鳴ってしまったせいで、タロウが完全にビビってしまいました。
「すみません。少し落ち着きます」
まずは落ち着いて考えましょう。
今もブルブルと震えるロボ。
まだこれからも熱が上がるようで寒いみたいですね。
ソッと抱え上げて、僕の胸元へ入れます。
「ロボ、安心してください。僕がきっとなんとかしますから」
『……ヴァン……殿……』
この先へ進めばゲロルの街。普通の速度で五日の行程ですね。
他に近い街はありません。
問題は、ゲロルの街まで魔獣の襲撃がないかどうかに加えて、これが一番大事ですが、ゲロルの街に行けばどうにかなるのか、という問題。
「タロウ、プックル、ロップス殿、意見を聞かせて下さい」
「なんすか!?」
「このまま、ゲロルの街を目指すのが良いと思いますか? それともマエンの長の元へ戻るのが良いと思いますか?」
………………
「なるほど。マエンの長の知恵を借りる考えか」
「はい。魔獣と霊獣の差はありますが、あれほどの知能です。縋る価値はあるかと思います。逆に、人の住む街に連れて行った所で、出来ることはたかが知れています。せいぜいが僕の癒しの魔法と変わらないです」
「なら悩む必要ないっすやん!」
「ですが! 我々の旅にこの世界の全てがかかっているんです!」
「じゃあロボがどうなっても良いんすか!」
……そんな訳ないでしょう。
…………大事に思っているから悩んでるんです。
胸元からロボが顔を出しました。
『……それがしなど、そこらの路傍に捨て置いて下され……』
「ダジャレかーい!」
長めの沈黙。
沈黙を破ったのはさらにタロウ。
「ヴァンさん、ロボを渡して下さい」
僕の方へ手を差し出すタロウ。
「ヴァンさんにロボをまかせておく訳にはいかないっす。俺がマエンの長の所へ連れてくっす」
目が本気ですね。
「仲間と世界とを天秤に掛けるヴァンさんには任せられないっす。渡して下さい」
…………
「分かりました。しかしロボを渡す訳にはいきません。僕が連れて行きます」
キッとタロウを睨むように見つめます。
また怯えてしまうでしょうか。
タロウはニッと微笑んで、
「それでこそヴァンさんっす。仲間の為に頑張ってこその世界だと思うんすよ、俺は」
そうですね。ここでロボの為に頑張らなくて世界が救われてもしょうがないですよね。
「大丈夫! きっと全部上手くいくっす!」
タロウは相変わらずのお気楽極楽ですが、ずいぶんと頼もしくなりましたね。
「タロウ、ありがとうございます。目が覚めました。では急いでマエンの森を目指しましょう!」
「おす!」
「おう!」
『メェェ!』
『……それがしの為に、すまんでござる……』
そういえばみんなロボには甘いですからね。
急ぎます。
マエンの森からここまで三日、急げば二日で戻れるでしょう。
この中で一番足の遅いロップス殿の全力に合わせて走ります。
「いざともなったら私は置いていけ。じきに追いつく」
ロップス殿はそう言いますが、有翼人の嗾ける魔獣が心配です。マエンの森に暗躍する有翼人たちがいますから。
「ロボ、大丈夫ですか?」
走りながら、胸元のロボに問いかけます。
『……大丈夫で、ござる……。足引っ張ってばかりで……すまんでござる……』
「何を言うんですか、誰もそんな事思っていませんよ」
『……ありがとうでござる……』
眠ったようですね。高熱に伴う衰弱がひどいです。
とにかく、できるだけ早くマエンの長の所へ行きましょう。
「ヴァンさん」
「どうしました?」
「やっぱ腐ったマエン、襲ってきますかね?」
「どうでしょう。でも覚悟はしておいた方が良いでしょうね」
「そっすよねえ」
道々、少しだけの休憩を挟むだけで走り続けました。
日が落ちます。
ここまであり得ない速さで進めましたので、マエンの森までもう少しですが、ここで野営します。
「野営っすか? このまま行った方が良いんじゃないっすか?」
「それも考えましたが、魔力を回復させてから向かいましょう」
「あ、そうか。ブラム父ちゃんに吸い取られるから魔法使わなくても半分になってんだったすね」
本当にやっかいですね、父の呪い。
「……はっきり言って、私も無理だ」
ゼーゼーと肩で息をしながら大の字になって伸びているロップス殿。
「……プックルもヴァン殿も、化け物だ」
『プックル、余裕』
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる