異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
70 / 185

54「タロウ無双」

しおりを挟む

「シュタイナー村までは十日ほどだったな」
「ええ、問題なく行ければそれくらいです」

 タロウとロボの訓練がありますから、あの晩かららロップス殿が先行するスタイルは取っていません。

 マエンの森からゲロルの町までは平和でしたね。ずっとああだと本当に良いんですが。

『次の戦いには参加するでござる!』
「俺もっす!」
「二人とも、やる気があるのは良いですが、ナギーさんレベルの敵の場合はダメですよ」

 まだまだ有翼人達との戦いは早いです。
 僕やロップス殿でさえ厳しいんですから。

「分かったっす!」
『承知でござる!』

 聞き分けが良くて素晴らしいです。

 山道を行きます。
 ここから見える最初の山頂手前、途中疎らにある林を抜けた先にシュタイナー村があります。
 その山頂から遠望できる、もう一回り高い山が明き神の住まう山です。
 まだまだ先は長いですね。


 ゲロルを出て五日目のお昼前、巨体を揺らすマチョと遭遇しました。逃げる素振りはありませんね。

「でけぇイノシシっす。ター村長くらいでけぇっす」
「向こうはやる気ですね。タロウ、やってみますか?」
「あ、良いんすか? 強そうっすけど」
「前にタロウが倒したマガクより断然強いですが、きっと平気でしょう」
「おっす! やるっす!」

 タロウが一人進み出ました。

 杖を手に構えるタロウ。
 構えは、まぁ、言っちゃなんですが隙だらけですね。

 循環させていた僕の魔力を体に纏わせました。そしてそこから、纏わせた魔力が徐々に青が濃くなっていきます。

「かかってこいっす!」
「ぶひん!」

 マチョがタロウに狙いを定め突進しました。マトンにはない長い牙が厄介ですが、タロウももちろん牙を警戒しているでしょう。

 早くも杖を捨てたタロウが、おもむろに二本の牙をそれぞれ掴み、数歩分だけ後退させられながらも突進の勢いを止めて見せました。

「止めたったで!」

 そんな無茶しなくても……

「危ない! その牙は伸びますよ!」
「え? うぉっ?」

 マチョが牙に魔力を籠め、タロウの腹部を指し貫こうと一時的に牙を伸ばしました。

 が、

「土の大壁!」
「ぶひぃ!!」

 マチョの顎の下、地面が急激に盛り上がり、そのまま顎を強打しつつマチョの頭をかち上げました。

 伸びた牙はタロウの肩の上を抜け、危機を脱したタロウが少し後退しました。

「危なかったっす! お返し!」

 魔力を纏わせた右腕で土の大壁を殴りつけ破壊、その砕けた土塊がマチョを襲います。
 意外と武闘派な戦い方をしますね。

 土塊の直撃を受けたマチョが首を振って体勢を立て直し、改めて再度の突進です。

「まだまだ魔力あるっすよ! 喰らえ! 風の刃の嵐っす!」

 タロウの全身から飛び出した大量の風の刃がマチョに襲い掛かりました。

 …………………

 なんて量ですか。
 やられたマチョは細切れです。

「あ、やり過ぎたっすか?」
「やり過ぎです。マトンよりは落ちますが、マチョの肉も美味しいですのに」

「しかし良くやった! やるではないか!」
『タロウ、強カッタ』
『タロウ殿はただの軽い人族ではなかったでござるな』
「そぉっしょー!」

 これは想像以上でした。
 ちょっと魔力を使い過ぎですが、正に圧勝。

「魔力はどれくらい残っていますか?」
「自分の魔力は分かんないっすけど、ヴァンさんの魔力はまだまだあるっす。貯まってた分の三割くらい使ったっす」

 あ、そんなに残っています?

 タロウの魔力を混ぜて使っているのと、タロウの魔力量がはっきり分からないので難しいですが、僕ら全体の魔力量だけ・・・・・を考えれば、タロウが戦うのが一番効率良いんじゃないでしょうか。

 もちろん、タロウの命が最優先ですので、強敵と前線で戦う事は想定していませんが。

「嬉しい誤算です。いざともなれば、タロウに蓄えた僕の魔力は回収が可能ですし、これからの戦いが断然楽になりますね」
「俺、ようやく役に立ちそっすか?」

「ええ、とても」
「よぉっしゃ! 俺の時代が来る!」
『そ、それがしも! 今度はそれがしが戦うでござる!』


 マチョの肉は諦めて埋めました。
 残念ですが、肉も内臓もごちゃ混ぜになってしまいましたからね。しょうがないです。

 その後の数日間で、次に現れたマチョをロボが、さらにその後現れた単体マチョ、単体マロウ、数頭のマエンをタロウが撃退しました。
 二人ともちゃんとマチョの肉は確保できる様にです。

「それでもまだまだヴァンさんの魔力あるっす! これはもう、タロウ無双っす!」

 実際に普通の魔獣ならタロウの相手にもなりません。タロウが無双しています。

「タロウ、調子に乗って油断していてはいけませんよ。さらに強い魔獣も、有翼人もいますからね」
「そうだ。何よりも、豊富な魔力量に頼った戦い方であって、体術は全くダメ。魔力枯渇とともに戦闘力ゼロだぞ」

 んー、と考えるタロウ。

「……んー。確かにロップスさんの言う通りっすね。魔力無くなったら戦い方分かんないっす」
「そうであろう。なので私の華麗な奥義を教えてやろう!」

「いや、ロップスさんの厨二技はいいっす。ノーサンキューっす」

 のーさんきゅー?
 きっとニホンゴではないチキュウの言葉ですね。まだたまに分からない言葉がありますが、今のはなんとなく流れで分かりました。

 気持ちもわかります。


 成長したタロウとロボという新たな戦力のおかげで、特に危機に陥ることもなく、シュタイナー村まで辿り着けました。

 が、なんだか様子がおかしいですね。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...