80 / 185
61「アンテオと有翼人」
しおりを挟む「アンテオ様、お覚悟を」
大剣に魔力を籠め、刀身に魔力で魔術陣を描きます。手元から剣先まで、描き終わったら大剣を地に突き立てます。
《光の檻》
魔術を発動。
突き立てた大剣から迸る無数の黒い光が、地を這うようにアンテオ様に殺到します。
あっという間にアンテオ様を包囲した黒い光が、触手を伸ばすように大地から飛び出しアンテオ様の頭上に集まりました。
「グゥァ、グルァァ」
キョロキョロと慌てるアンテオ様。容赦致しません。
「縛れ!!」
アンテオ様の皮膚に食い込むようにビシっと収束、そのまま地に縫い付けました。
ふぅ、なんとかなりました。
さすがのアンテオ様でも、コレは簡単には脱出できません。丸一日分の魔力を籠めていますからね。
先ほど、タロウが僕の背に手を触れて、預けていた僕の魔力を返してくれました。アレが無ければ、檻の強度は下がり、さらに今頃は魔力枯渇でヘロヘロでしたね。
「アンテオ様、落ち着かれましたか?」
『グルァァ! グゥァァァァァァ!』
全然落ち着いてませんね。どうしましょう。タロウのお陰でもう暫くは保ちますが、このまま檻で捕らえ続けるのは魔力的に無理です。
「ちっ! やっと見つけたぞ! 見つけたと思ったら、すでにヴァンに捕らえられてるだと!」
またなんか来ましたよ。
多分アレです。
最悪の展開です。
新たに現れた人は、頭上から現れました。魔法ではありません、自前の羽で飛んで来ました。
有翼人ですね。
「こんにちは、お久しぶりですね」
「ああ、久しぶりだぞ。元気だったか?」
初めて有翼人に会った夜の、三人の有翼人の一人はアギーさん、あとの二人の内の一人ですね。
「それなりに元気ですよ。貴方は?」
「あぁ、イギーも元気だぞ」
「イギーさんと仰るのですね」
「言ってなかったか? それは失礼したぞ。イギーだ。よろしくだぞ」
「ヴァンです。よろしく」
初めて会った夜と大きく異なる点があります。
「ねぇイギーさん。左腕はどうしたんですか?」
イギーさんの左腕が根元からありません。以前は確かにありましたが。
「ああ、これか。この竜にくれてやったんだぞ」
ツカツカとアンテオ様に近づくイギーさん。徐に僕の作った檻の隙間から、右手でアンテオ様を殴りました。グーで。
『ギャァァァン! グルァァァン!』
「うるさいぞ!」
「ギャァン! グルゥゥ……」
再度殴られたアンテオ様が静かに唸りました。
「この左腕はな、魔術の核に使ったんだぞ。ボクらがどうやって魔獣を使役しているか知っているか?」
「いえ、知りません」
「自分の魔力を籠めた肉体の一部にな、魔術陣を施して使役したい相手に食わすんだぞ。まぁ、普通は血液や、他には毛や爪なんかの生えてくる部分を使うんだぞ」
なるほど、ワギーさんのマヘンプクや、ナギーさんの腐ったマエンなど、そんな風にして操られていたんですね。
「ただな。見ろよこの竜。この強さだと、核もそれなりの物が必要だ。僕は左腕一本は必要だと考えたんだぞ」
「左腕一本では足りなかったということですね。アンテオ様は本領発揮には程遠いはずです。こんなに弱い筈がありません」
僕は推測にハッタリも交えて話してみました。
「ん? この竜が弱いのはコイツのせいだぞ。今は完全にボクが掌握した。次に戦えば負けるのはヴァン、オマエだぞ」
どういう事でしょうか。
「こいつらは竜の姿だと巨大化するだろう。竜化した時に食べた物は、人化した時に体の大きさに合わせて腹の中で小さくなる。そのせいで、魔術の核としたボクの左腕も小さくなってしまったから魔術の力が弱まってしまったんだ」
なるほど。竜化したせいで、また左腕がサイズアップ、魔術が完成してしまったんですか。
「オマエの魔術もなかなかだ。しかしまだまだ甘いぞ」
イギーさんが僕の作った檻に手を触れ、魔力を流し込んでいるようですね。
しかし、そんな事で破壊されるような檻ではありま――
ガシャァァン
――破壊されました。とほほ。
「な、まだまだだろ。立て! アンテオ!」
『グルゥゥゥゥァァン!』
アンテオ様がこちらへ顔を向けて口を開きます。
ブレスですか。やばいですね。
『ウワォォォン!』
ロボの霊力砲!
ドォンと音を立てて、アンテオ様の開いた口を直撃しました。
とにかくイギーさんを倒すのが先決です。口から煙を上げるアンテオ様は無視。アンテオ様の足下、イギーさんに突っ込みます。
「アンテオ!」
一歩動いただけで僕の前にアンテオ様が割り込みます。クソ!
ヒュッ――
そのアンテオ様の踏み出した膝に、今度はタロウの魔力を籠めた吹き矢が突き刺さりました。
みんなやってくれますね。
膝を撃ち抜かれたアンテオ様が、体を支え切れずに、僕の前を横切ってたたらを踏みます。
僕の目の前にはイギーさん、そのイギーさんから放たれる魔術の矢。
読んでいました。
魔力を籠めた大剣で叩き落し、イギーさんに肉迫します。
ガラ空きの胸へ大剣を突き入れ――
「アンテオ!」
――られません。
たたらを踏んだアンテオ様が闇雲に片腕を振り、ちょうど僕とイギーさんを同時に薙ぎ払い、二人まとめて吹き飛ばされました。
アンテオ様は腕を振った勢いを殺せずに、ズシィィンと大地を揺るがし地に落ちます。
同じ方向に吹き飛ぶ僕とイギーさん。
大剣を地に突き立て、吹き飛ぶ体を強引に留め、未だ宙にあるイギーさんへ大剣を振りますが、自前の羽により上空へ逃れられました。
「ダメだなこれは。アンテオの動きが鈍いんだぞ。それに連携が全く取れないんだぞ」
確かに二人の動きはちぐはぐです。このまま戦ってもなんとかなりそうな気がします。
「アンテオ! 退くぞ!」
『グルゥゥゥ……』
首を振って体を起こすアンテオ様に飛び込む一つの影。
「叔父上! 竜族の誇りを思い出させてくれる! 烈光迅雷突!」
錐揉みしながら飛び込むロップス殿。
技の名前はアレですが、余りの高速回転で刃の先端が輝いています!
『グギァァァァァァァン!!』
「叔父上! 目を覚まされ――グヌァァッ!」
アンテオ様の右眼を抉りましたが、アンテオ様の尾に弾かれたロップス殿がこちらへ飛ばされました。ロップス殿を受け止め、数歩分後退させられます。
「ロップス殿! ご無事でしたか!」
「すまんなヴァン殿、せっかく買ってもらった槍を折られてしまったわ」
『グルゥゥァァァァァ!』
ロップス殿に右眼を抉られたアンテオ様が雄叫びを上げています。
「アンテオ! うるさい!」
アンテオ様の肩に飛び乗ったイギーさんが一喝、途端に落ち着き払うアンテオ様。
「アンテオの掌握が甘い。貴様らの連携に対して僕らの連携が甘い。問題だらけだぞ。ここは退くぞ、アンテオ!」
アンテオ様がバサリと羽を広げ一打ち、瞬く間に飛び上がり、西の空へと飛び去ります。
「ヴァンよ! また会おうぅぅぅぅ……!」
タロウ達が森から出てきました。
「ドップラー効果っすか……」
どっぷらーこうか? なんでしょうかそれは。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる