異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
86 / 185

66「改めてお友達から」

しおりを挟む

 失敗しましたかね?

 そういう思いを込めてみんなの顔を見ます。

 四人とも難しい顔ですね。
 すみません、浅はかでした。

 山の傾斜を降った方を覗き込むと烈火の如く怒り狂うウギーさんが、魔力で作り出した黒い棒を両手で振るい周囲の岩を叩き壊しています。

「クソがぁ! どこに隠れやがった! この岩か! こっちか!」

『さっきと打って変わって怖いでござるな』
『怖イ』
「……改めてお友達から始められんすかね?」

 できたらそうしたいですね。

「このままでは埒が開かんな。どうする?」

「選択肢は……
 1.無視してこっそり明き神詣りを続ける
 2.戦う
 3.謝って改めてお友達から
こんなものでしょうか。どれが良いです?」
「4.プックルの眠クナル魔法を使う、ってのはどうっすか?」

『ダメ、絶対、カナイ』
「そっすかー。俺でもガードできるんすもんね」

『イチ』
「1っす」
「2だな」
『3でござるかな』

 割れますね。
 僕も1なんで多数決だとすぐに決まりますが、多数決って絶対に不満が残るんであんまり好きじゃないんですよね。

「どうしましょ――」
「そこだろ!」

 僕らが身を隠した岩の、隣の岩が・・・・ガォォンという音と共に消滅しました。

 ……ゾッとしますね。

「考えてる時間はない! 行くぞ! 2だ!」

 ロップス殿が腰に佩いた刀を抜き躍り出ました。

「プックル! タロウを連れて頂上へお願いします! ロボはやや下がり目で待機!」

 ロップス殿がウギーさんに跳びかかります。

「仲間か! 大人しく死ね!」

 ウギーさんが長い棒を巧みに操ってロップス殿の刀を頭上で受け、回転させた棒でなし、腹部目掛けて先端を突き込みます。

「風よ吹け!」

 魔力を籠めた右腕を振り、ロップス殿に風をぶつけて飛ばします。
 空を切るウギーさんの棒。

「そうか。あの山羊はヴァン、オマエと一緒に居た山羊だったか。分からなかったよ」
「お久しぶりですね」

 ウギーさんが身長の倍ほどある棒を立てて、首を回してコキコキと鳴らします。

「ねぇ、頼みがあるんだ」
「なんですか?」
「ヴァンは見逃すから、狼と山羊を置いてってよ」
「ロップス殿はどうするんです?」
「人間の男は要らないから、そうだな、殺すかな」
「なるほど。どちらにしても聞けないお願いですが」

 驚いた顔でこちらを見詰めるウギーさん。

「へぇ! 驚いた、ヴァンが生き残れば旅は続けられるのに? 世界を救えなくなるのに?」

 そうでした。
 ロボ達の事はイギーさんには見つかりましたが、まだ彼らは僕が新しい生贄だと思ってるんでしたね。

「大切な仲間ですからね」
「仲間……、それって必要なの?」
「そうですね。僕にとっては必要ですね」

「ふーん、良く分かんないや」
「貴方にも仲間がいるじゃないですか」

 少し沈黙。

「仲間? いないよ?」
「あれ? アギーさんやイギーさんは?」

 また少し沈黙。

「ああ、仲間ってそういうことなの?」

 どうやら勘違いだったみたいですね。やっぱり仲間は大事に――

「同じ所から生まれたって事ね。あれ? じゃぁヴァンとトカゲ人間も狼も山羊も同じ所から生まれたの?」
「あ、いや、僕らは生まれも育ちも違いますよ。ウギーさん達は同じなんですか?」
「そうだよ。知らなかった? この世界の外の世界にさ、でっかい星があるんだよ」

 ホシ……、前にタロウが言ってましたね。やはりこのウギーさん達、有翼人達は昏き世界の者どもでしたか。

「その星がさ、ちょっとずつ壊れてるんだ。で、その壊れた所から僕たちみたいな子供が生まれるんだよ」

 ホシから子供が……。
 ちょっと分からないですね。分かるのは、彼らが僕らとは大きく異なる生き物だと言う事だけです。

「ヴァン殿、何を仲良く話してるんだ。3の選択肢になったのか?」

「ロップス殿、大丈夫ですか?」
「ああ、さっきは助かった。ちょっと風に飛ばされ過ぎて、岩にぶち当たって山を転げ落ちたが、まぁなんとか大丈夫だ」

 大丈夫なら良いんですが、割りと血だらけですよ。
 癒しの魔法を使います。
「重ね重ねすまん」

「トカゲ人間も帰って来たね。じゃ続きしよっか」
「もう少しだけお話を聞かーー」
「もう十分さ。狼さんくれないんでしょ」

 そう言ったウギーさんの、両腕が肥大しました。さっきまでの倍ほどもあります。
「行くよ」

 太くなった腕に合わせて魔力で作り出した棒も先端が太くなっています。これはもう槌ですね。

 大きく振りかぶって僕とロップス殿の中央に振り下ろされますが、速さが尋常ではありません。

「跳んで避けて!」
「おうさ!」

 さすがにモーションが大きいので僕もロップス殿も危なげなく両サイドに離れる方向に跳んで躱し、空を切った槌は大地を穿ちました。

「はい、残念でした」

 ペロリと舌を出したウギーさんが、僕ら二人の間を駆け抜けました。僕らはまだ宙を跳んでいます。

「いかん! いきなり抜かれた!」
 また失敗しました。ロボも頂上へ向かわせるべきでした。

『ロボ、頂上のタロウ達を追って下さい。すぐにそちらに向かいます!』
『承知でござる!』

 風の魔法も使って僅かでも早く地に降り立ちます。着地と共に頂上へ向かって駆け出し、身体強化も施して急ぎます!

「はははっ! 狼も山羊もぼくが貰うよ!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...