異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
88 / 185

67「バレましたか?」

しおりを挟む

 ロボ達が危ないです。
 とにかく急いでウギーさんを止めなきゃなんですが、身体強化していても追いつけません。
 ウギーさんも速いです。

 タロウとプックルは頂上の火口付近まで行けたのか、ここからは見えませんね。
 ロボは見えますが、岩場に手こずって思うように登れないようです。本当は駆け上がるようなルートではありませんから。

 逆にウギーさんは邪魔な岩は叩き割って進んでいます。
 このままではあっという間に追いつかれます。

「待ってよ狼さん! 痛いことなんかしないからさ!」
『嫌でござる! 目が怖いでござる!』

 逃げ切るのを諦めたロボが振り返り、霊力砲を放ちました。

『ウワォォォン!』

 直撃しました。
 噴煙に包まれたウギーさんが、「カッコいい! 余計に欲しくなったよ!」そんな事を言いながら晴れた煙から現れますが、無傷ですね。

 しかし足止めに成功です。
 射程範囲内です。

 まずは土の大壁、ウギーさんの目の前の土を持ち上げました。

「甘いよ!」
 飛び越えるウギーさん目掛けて闇の棘。大壁の天辺てっぺんから多数生えた棘がウギーさんの太腿に食い込みました。

「痛っ! やったなー!」

 刺さった棘を棒で薙いで叩き折るウギーさんに向けて光の魔法、直光線を三つ四つと放ちます。

 全て走りながらです。

 直光線を魔力障壁で防ぎきったウギーさんを飛び越え、立ち塞がりました。

「追いつきましたね」
『ロボ、先に頂上へ』『承知でござる』
 精神感応でこっそり指示を与えます。

「ちぇっ、やっぱり先にヴァンを仕留めようかな」
「簡単にはさせませんよ」

 はぁっ! と声を上げ全身に魔力を漲らせます。

「へぇ。強そうだ。でも、次の礎になるにしては……」

 ウギーさんが左の掌をこちらに開き、手の甲に右手の人差し指を当ててじっとしています。

 なんでしょうか?

 こちらを見てニヤリと笑ったウギーさんが、斜面の下へ振り返り、追いついてきたロップス殿にも同じ様に掌を向けじっとしています。
 ロップス殿が警戒心も露わに速度を緩めて慎重に進みます。

 僕とロップス殿でウギーさんを挟む形になった所でウギーさんが手を下ろしました。

「なるほどね。このトカゲ人間は論外。ヴァンにしたって礎になるには魔力の総量が足りないようだね」

 !

 ……バレましたか?

「何を言っているんです? 僕らは父の所まで行く旅の途中――」

「そこから誤魔化すの? ははっ、人族の勇者の寿命が近いのは分かってるってば。じゃなきゃぼくらがこっちに入れないんだから」

 何としてもタロウの存在は誤魔化したいんですが……。

「考えてるね。でもダメだよ。もうぼく分かっちゃったもん」
「何のことです?」

「ヴァンもダメ、トカゲ人間もダメ、狼さんと山羊さんはぼくのすぐ近くに居たのに助けに入らなかった……、もう一人いるんでしょ?」

 沈黙せざるを得ません。

「その一人を隠す為にぼくを土で覆って誤魔化そうとしてたんだね」

 完全に僕の思惑はバレていますね。

「なぁヴァン殿、ここで此奴を仕留めれば良いのだろう?」
「その通りですね」

 ロップス殿の言う通り、ここで仕留めれば問題なしです。

「ははっ、それこそ簡単じゃないよ……はぁぁっ!」

 ウギーさんの魔力が噴き出し、その身体を覆って何か形作っていきます。
 全身がふた回りは大きくなり、真っ黒な獣の姿をした鎧を全身に纏ったかのよう、頭から指先の爪、竜に似た尾までもが真っ黒な獣の形です。

「一気に行くよ。早いところもう一人を見たいからね」

 速い!

 いきなり突っ込んで来たウギーさんに対応できません、殴られて地面に叩きつけられました。
 身体強化を最大限まで上げていなければ今ので終わっていましたね。

 ロップス殿が刀を振り上げ斬りつけますが、カィンと硬質な音を上げて弾かれました。

「ただの刃ではダメか!」

 襲い来る尾を刀で受け飛び退るロップス殿。

 僕も早く立ち上がって参戦したいんですが、全身から煙を上げて回復中、さっきの一発で全身がガタガタです。
 なんと言う破壊力でしょう。
 身体強化の甘いロップス殿が喰らえば一たまりもありません。

「おぉぉ! これならどうだ!」

 ロップス殿が刀に魔力を籠めて打ち込みます。

烈風迅雷斬れっぷうじんらいざん!」

 さすがロップス殿、獣の鎧を切り裂いて見せました。
 が、ロップス殿が真一文字に切り裂いた腹部が瞬く間に修復していきます。僕のような煙も出さず、何もなかったかのようにスゥっと閉じていきました。

「トカゲ人間もやるね。痛くも痒くもないけどさ」

 ウギーさんがロップス殿との間合いを詰め、獣の爪を振り下ろし、刀で受けるロップス殿と、ギィンギィンと連続して爪と刀を合わせます。

「良い剣だね」

 そう言いながらロップス殿の左腹部を尾で打ち付けました。

「ぐぁぁ!」

 右に弾かれたロップス殿に、立て続けに襲いかかるウギーさん。上から頭を狙って振り下ろされた爪を大剣で受け止めました。

「すみません、お待たせしました」
「ヴァン殿! もう良いのか?」
「ええ、もう大丈夫。代わりましょう」

 受けた爪を振り払い距離を取り、ロップス殿のお腹に癒しの魔法を使います。

「また最初っからか、やんなっちゃうね」

 お互い態勢を整え――

『ヴァン殿!! タロウ殿が!! 溶岩に呑み込まれたでござる!!』
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...