132 / 185
99「プックル、暴走」
しおりを挟む「とにかくブラムの城まで急ぎたいと思います」
先日父の城からタイタニア様の下までは二十日弱かかりました。
およそ半分の十日を目標にして向かいましょう。
「みんな、少し大変ですが全行程を走って進みましょうか」
おー! と、みんなが返してくれました。
旅も終盤戦、父さんも起きてようやくゴールが見えてきました。
依然としてアギーさん達の思惑が掴めない点は不安ですが、尻込みしている時間的余裕もありませんからね。
突き進むのみです。
数日間、日中は走り続けました。
アンセムの街でパンチョ兄ちゃんからプックルを譲り受けた頃は、タロウの足がネックになると思われましたが、ただ走るだけなら今やタロウが一番速いです。
溢れる膨大な魔力で身体強化と体力回復を行い続ける異常な走法ですが。
「オリンピックの陸上全種目で金メダルも余裕っすわ!」
などと宣っていますがなんのことかサッパリです。
僕とロボとプックルは同じぐらいですが、プックルは鼻歌混じりで走っていますからまだまだ速く走れそうですね。
そして、どうしてもロップス殿が遅れてしまいます。
ロップス殿の走り方も異常ではあるんです。
右脚と左脚が地を蹴る度に、交互に魔力を籠めて走っています。
あれでよくあんな速さで走れるなと感心してしまいますが、魔力消費が無い代わりにあの忙しすぎる魔力操作には集中力も体力も必要です。
長時間走れる訳がありませんね。
夕食時、一つの提案をしました。
「プックル、ロップス殿を乗せて走ってくれませんか?」
『良イ。ロップス、頑張ッテル。ケド、遅イ』
「いつか言われると思っていたが、遂に言われたか!」
「ロップス殿も良いですね?」
「良いも悪いもない。悔しいが足は引っ張れん」
翌日からはロップス殿にはプックルに乗って貰いました。
「プックルすまん。よろしく頼む」
『余裕。任セロ』
さらにスピードアップしました。これなら十日で父の所まで着けるでしょう。
「プックル楽しそうっすね!」
『プックル、誰デモハ、乗セナイ。デモ、誰カ乗セテ走ルノ、好キ』
「プックル! 可愛いやつ!」
ロップス殿が感極まってプックルの首に抱きついています。
『ロップス、クスグッタイ』
「たまには良いではないか。労わせてくれ」
嫌な予感がしますが……。
「ちょ、ロップス殿、モフモフは――」
「これはなかなか。モフり甲斐のある毛足――」
『ウヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!』
「ぬな!? うぉぉぉぉ!?」
プックルが猛烈に地を蹴り走り出しました。
ああ、久しぶりにやってしまいましたか。
完全に置いていかれました。独走態勢です。このままではモフモフ事故の再現ですよ。
「タロウ! ロボ! 追いかけますよ!」
「了解っす!」
『分かったでござる!』
お、追いつけません。
それどころか徐々に差が広がっているようです。僕とロボには追いつけそうにありません。
「タロウ! 先に行ってください! きっとロップス殿は落ち着かせようとモフモフを続けているんじゃないかと思います。なんとか止めさせてください!」
「なるほど、逆効果っすね。そういやロップスさん知らなかったんすね」
そう言ったタロウも速度を上げました。僅かですが、ロップス殿を乗せたプックルよりタロウの方が速いようです。
「何とかお昼頃までに追いつけると良いんですが……」
『昼を過ぎるとどうなるでござるか?』
「考えたくありませんが、あの速さで昼過ぎまで走ると、ボルビックの町にぶち当たります」
『……考えたくないでござるな……』
取り急ぎ結果だけ言うと、ボルビックの町は無傷で存続していました。
プックルのモフモフ暴走のお陰で。
何を言っているか分からないと思いますが、モフモフ暴走が無かったら危なかったそうです。
昼を過ぎて、ようやく僕らがボルビックの町が見える所まで辿り着いた時、町は大騒ぎでした。
騒ぎの原因は魔獣。
決してプックルの事ではありませんよ。
「けっこうヤバかったんすよ。あのまま走ったらボルビックの真ん中に新しい道ができるとこだったっす」
「ああ。私はもうダメだと思った」
タロウとロップス殿が詳しく証言してくれました。
「俺ちょっと間に合わなかったんすよ。んでももうダメかと思ったら、いきなりプックルがちょっと左に向き変えてそのまま爆走っすよ」
「我々を警戒する笛の音が鳴り響く中だった」
「で町の北に行ったらそっちもピーピピ笛鳴ってんすよ」
いま僕らがいる辺りですね。
そこには胸に大穴を開けたり首から上を失ったり、割りと無残な姿のマユウの死体が数頭分転がっていました。
「この黒い大ヤギは強いんだのぉ」
町長です。チノ婆と呼ばれていたおばあさんもいらっしゃいますね。
「北から現れた熊の魔獣どもに警戒しておったらな、今度は西から山羊の魔獣が現れたと聞いてな。もうボルビックはお終いだと覚悟したものさ」
しかしロップス殿を乗せたプックルの登場で急展開。
プックルは走る勢いのままマユウの群れに突っ込んで、前足の蹄でマユウの胸目掛けて蹴り、ドォンと音を立てて背中から弾け飛ぶマユウの肉。
鳴き声に魔力を籠めた霊力砲を放ち牽制し、飛び込んでさらに蹴り。
途中からはロップス殿もプックルの上で剣を抜き放ち参戦。
人馬一体となりマユウを蹴散らしたそうです。
「俺、結局なんもしてないっすもん」
「大山羊殿と竜人殿にはいくら礼を言っても足りぬよ」
「こないだはスマンかったなぁ。ありがとうなぁ」
町の若者の背に負ぶわれたチノ婆がプックルの背を撫でて感謝を伝えています。
鬼気迫る戦い方だったというプックルは、今は我関せずと草を食んでいますが。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる
長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。
ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。
そこは魔法がすべての世界。
スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。
でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて──
「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」
そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに……
家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば──
「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」
えぇ……なんでそうなるの!?
電気と生活の知恵で異世界を変える、
元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる