異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

文字の大きさ
134 / 185

100「純愛に生きる」

しおりを挟む

 ボルビックで大変厚くもてなして頂いています。
 誰が言ったか「マユウ撃退記念祭り」と称して、ずいぶん夜も更けましたがまだまだ賑わっています。


 プックルに至っては、前回と打って変わってにも置かない歓待ぶりで、プックルも食べられると聞けばマユウの肉を焼き、プックルが魔獣の内臓も好んで食べる事を聞けば苦労してマユウを捌いていました。

 生でガツガツとマユウの内臓を食らう様子にはみんなちょっと引いてましたけどね。


 ロップス殿も珍しく、おっと失言でした、若い女性と楽しそうにしています。
 ここのところ鬱屈した思いを溜め込んでいましたから、良い気分転換になったことでしょう。

 タロウは町の子供たちの人気者です。
 タロウの周りからは子供たちの笑い声が絶えません。


 僕とロボは町長とチノ婆とゆっくりと食事しています。
 なんと言っても僕ら二人はマユウの襲撃に間に合いもしませんでしたから。
 今夜の主役はプックル達ですね。

「ええ、明日の朝にはこちらを出て父の所へ向かい、その後はファネル様の下へ向かいます」
「そうですか、それは残念。何泊でもしていって欲しいところですが」

「ところで七十年前の戦いの事をお聞きしても良いでしょうか?」
「もちろん構いません。わしらの分かることでしたら」
「『神の影』についてなんですが」

 タイタニア様に伺うつもりだったんですが、すっかり忘れて出発してしまいました。

「何か普通の魔獣と異なる特徴などあったんでしょうか?」
「わしはまだ赤子だったから見ておらんのです。チノ婆はどうだ?」
「わたしは当時七つ、でもしっかりと覚えておる。見た目は変わらんかったな。ただ」

「ただ?」
「纏う魔力が黒かった。暗闇よりもさらに黒い、真っ黒な魔力じゃった」

 真っ黒い魔力色……。

 父の魔力色も黒に近い灰色ですが、これは魔族によくある色味です。僕は魔族とは言えハーフですから、人族の魔力色の白が強いんです。
 強いて言えば、ウギーさんとニギーさんが使った魔装が真っ黒でした。

「じゃからな、プックル殿の赤い魔力を見て安心したんじゃ。彼は『神の影』ではない、とな」

 個性もありますが、魔獣は主に赤系統の魔力色ですからね。


「ファネル様の下へも向かうと仰っておられたな」
「ええ。あまり時間のない急ぐ旅なんです」
「昼間のマユウもそうだが、北のファネル領が物騒な感じだ。お気をつけ下され」

 北はアギーさんたちが向かった地です。
 北からやって来たマユウ達と無関係かどうか、判断が難しいところですね。

「ブラム領とファネル領の境界付近のミウ村、そのさらに北のイロファスの町、どちらも月に一度ほどはこちらにやって来る行商がいるんだが、ここのところ顔を見せんので心配しとるのです」

 ミウ村とイロファスの町、どちらも何度か立ち寄った事があります。
 エビアン村の件もありますし心配ですね。



 夜もすっかり更けて、今夜は泊めて頂きました。





「昨夜はご馳走さまでした」
「いやいや。いつでも来て下され。ヴァン殿たちならいつでも大歓迎ですよ」

 みんなそれぞれ別れの挨拶です。

 おや?
 ロップス殿が照れた様子でしきりに頭を掻いています。
 十五、六歳でしょうか、昨夜も一緒にいた人族の少女がロップス殿の手を握って離さないようですね。

「分かった。この街に戻ると約束しよう、この旅が無事に終わったらな」
「……絶対ですよ? 知らない間にアンセム領に帰っちゃったら……押し掛けちゃうんだからね!」

 ロップス殿が空を指差し、逆の手で地面を指差しました。
 例のヤツですかね?

「この天と地に誓おう!」
「……ロップス様!」




「ヒューヒュー!」
「なんだタロウ。風の真似か?」
「何言ってんすか。さっきの、良い感じだったじゃないっすか」
「……エイミか。こんな私の戦う姿を気に入ってくれた。ああ、良い娘だった」

「この前のアレ、もう要らないっすか?」
「アレ?」
「俺が礎になった時に女の子紹介して貰う話っすよ」
「……ソレか。う、うーん…………」

 ちょっと悩むそぶりのロップス殿。

「私も男だ! 要らぬ! 私は純愛に生きる!」
『ロップス殿カッコ良いでござるよ!』
「よっ! 男ロップスここにあり!」

「とにかく生きて戻らねばな、エイミに再会する為にも」
「あ、それってフラグってやつじゃないすか……」

 タロウは何を言ってるんでしょうね?
 ロップス殿の純愛の為にも、とっとと行って済ませましょう。

「さあ、ここから歩いて二日の距離です。走って今日中に着きましょう」



 ボルビックを出てからは、ロップス殿もモフモフの危険について認識しましたし、特に事件も起こりませんでした。

 少し回り道しましたが、なんとか八日目の夜、父の城に到着しました。

 門番や召使いのいない、完全に一人暮らしなんで気楽に入り口を潜り、ぞろぞろとみんなで父の居室へと向かいます。


「よぉヴァン。久しぶりだな」
「ご無沙汰しています、父さん」

 ちゃんと起きていました。
 父は棺のふちに腰掛けてこちらへ片手を上げ、いつもの台詞を僕に投げました。
 実はまた寝てたらどうしようかと少し不安でした。

「それにしても、オマエを見ると悲しくなる。なぜ俺にそっくりなんだ。カノンの面影、全然ないじゃないか」

 そんなこと言われたって知りませんよ。
 僕のせいじゃないと思います。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

しがない電気屋のおっさん、異世界で家電召喚ライフしてたら民から神格化され魔王から狙われる

長月 鳥
ファンタジー
町の電気屋として細々と暮らしていた俺、轟電次郎(とどろき でんじろう)。 ある日、感電事故であっけなく人生終了──のはずが、目を覚ましたら異世界だった。 そこは魔法がすべての世界。 スマホも、ドライヤーも、炊飯器も、どこにもない。 でもなぜか俺だけは、“電力を生み出し家電を召喚できる”という特異体質を持っていて── 「ちょっと暮らしやすくなればそれでいい」 そんなつもりで始めた異世界ライフだったのに…… 家電の便利さがバレて、王族に囲まれ、魔導士に拉致され、気が付けば── 「この男こそ、我らの神(インフラ)である!」 えぇ……なんでそうなるの!? 電気と生活の知恵で異世界を変える、 元・電気屋おっさんのドタバタ英雄(?)譚!

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

処理中です...