異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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109「考えるべき事は考えた」

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「よぉぉし! 叔父上! 待たせた!」
「十分に考えたのなら掛かって来い。引導を渡してやろう」

 胡座をかいて考え込んでいたロップス殿が立ち上がりました。

「お仲間と一緒でも構わんぞ?」

 プックルの側にやって来た僕らを指差して、アンテオ様が言います。

「要らぬ。私一人で腐った叔父上の目を覚まさせてやるわ。ロボ!」
『なんでござる?』
「すまんが守護を解いてくれ」

 ロボの守護があってギリギリの筈ですが……。

『良いんでござるか?』

 ロボがこちらを見上げて聞きます。

「アンテオ様の攻撃は強力です。良いんですね?」
「一対一で戦いたい。頼む!」

 ロボに顔を向け頷きました。

『……分かったでござる』

 ロップス殿の体を覆っていたロボの守護が解かれました。

「捨て身の戦いは認めませんよ。分かっていますね?」
「任せておけ!」


 ロップス殿が無造作にアンテオ様に歩み寄り、少しの距離を取った所でぺこりと頭を下げました。

「うむ。来い」
「でぁぁぁぁああ!」

 裂帛の掛け声と共にロップス殿が抜刀、そしてそのまま横薙ぎに一閃、アンテオ様はこれを受けずに僅かに下がって回避しました。

「奥義とやらは使わんのか」
「しばし封印だ!」
「……ふふ、良い剣閃だ」

 振り抜いた刀を脇を絞る様に体に引き寄せ、アンテオ様の喉元を狙ったロップス殿の突き。

 弧を描くような足捌きでそれを躱したアンテオ様の拳が、ロップス殿のお腹に突きこまれました。

 べキィっと骨の砕ける音。

 ロボの守護のないロップス殿では、魔力の集中だけでは防ぎようがありませ――

「やるじゃないか。良く見えている。良いぞ」

 手首の辺りを抑えて距離を取ったのはアンテオ様。

 僕らの位置からでは良く分かりませんでしたが、どうやら突いた刀を高速で引き戻し、柄頭でアンテオ様の手首を打った様ですね。

「しかも魔力の大半を柄頭に籠めて打つとはな。間に合わなかったら腹に風穴が開く所だったぞ」

 聞き捨てなりませんね。それは捨て身の戦い方なんじゃないでしょうか。

「間に合わんと悟ってからでも腹に魔力を移せると判断しただけだ」
「ふん、小生意気な甥っ子よ。少し強く行く、用心し――――まだだ、今ようやく楽しくなってきた所だ」


「何? どういう意味だ?」
「……いや、気にするな。行くぞ!」
「よぉし! 来い叔父上!」

 両の拳に魔力を籠めたアンテオ様がロップス殿に襲い掛かります。折れた骨は平気な様ですね。
 それに対してロップス殿は右手に刀、左手には魔力の棒を作り出しました。

『僕が教えた魔力の棒だ! 上手く作れてる!』
 ウギーさんの声が嬉しそうですね。

 アンテオ様が振り下ろした右の手刀を余裕を持って棒で受け――

「うわったぁ!」

 あっさりと棒を切り飛ばされ、ロップス殿は慌てて仰け反って躱し、続けざまの左の手刀を刀で受け、その勢いを利用して転がる様に距離を取りました。

『……ダメじゃん』
 ウギーさんが呆れています。

「……その棒は見かけだけか?」
「今のは失敗だ! 色々考えてたら魔力操作が間に合わなかったのだ!」
「さっきとエラい違いじゃないか」

「叔父上が考えろと言うからだ! もう考えん! 考えるべき事はもうみっちり考えた!」
「……なら良い。行くぞ」

 先程と同様に両の拳に魔力を籠めたアンテオ様が突っ込みましたが、ロップス殿の刀の届かない所で急停止。

「風の刃!」
「なっ!? ちょっ!? それはズルい!」

 ロップス殿を目掛け飛ぶ風の刃を刀で両断、その目前にアンテオ様が迫りました。

「回転を上げる。捌けよ」

 高速で連続して繰り出されるアンテオ様の手刀。
 しかしロップス殿も負けていません。
 取り回しし易い小太刀ほどの長さに棒を短くし、棒と刀で捌き続けています。

「良いぞ。良く見えている」
「その『上から目線』を止めさせてやるわ!」


 上手い!

 刀で受けた手刀をなし、それを掻い潜る形でアンテオ様の側面に回り込みました。

「捌き切ったっす!」

 左手の棒でがら空きのお腹を打ち据え――――られません。

「ぬぅお!?」

 慌ててロップス殿が飛び|退
《すさ》りました。


「え? 今のなんで当たんなかったんすか?」
「……説明するのも切ないですが、棒を短くしてたのを忘れてた様ですね」
「……がちょーんっす」

「絶好の機会に! しくじってしまった!」
「……またか。詰めが甘いのにも程があるぞ」

 しかし詰め以外は良い勝負をしています。

「今度はこちらから行く!」

 雄叫びを上げロップス殿が突っ込みました。

「でぁぁぁああ!」

 やはり棒は短くしたままで接近戦を挑みました。アンテオ様には魔法もありますが、ロップス殿には遠距離で戦うすべがありません。好判断ですね。

 再び高速での戦いが始まりました。


「ねぇヴァンさん」
「なんですか?」
「ロップスさんって、あの速さで毎回、棒とか刀に魔力集めてんすか?」
「ええ。見事としか良いようのない技術です」

 しかし、あんな戦い方で長時間戦えるものでしょうか。


 どちらにも決め手のないまま、長い攻防が続いています。


「おい。魔力操作が遅れ始めてるぞ」
「…………」

 早速です。

 チッ! と舌打ちを一つしたアンテオ様が後方、僕らの方に向かって、大きく飛び距離を取りました。

「…………叔父上、騙されたな!」
「ぬぅ!」

 地に降り立ったアンテオ様の肩、腕の付け根にロップス殿が伸ばした・・・・棒が突き刺さっていました。

「わははは! 私にも遠距離攻撃があるのだ!」

 棒から手を離し、ロップス殿が肉薄します。

「覚悟しろ! 叔父上おじう――」
「待て!」
「何!?」
「まだだ! 待ってくれイギー・・・!」

「もう待たない! 今が好機だ!」

 アンテオ様の足下、アンテオ様の影から突然飛び出したイギーさんが、こちらに向かって跳び上がりました。
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