異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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122「戦いの後始末」

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 もうすぐ夜が明けます。

「なんとか夜明けまでには済みましたね。ご苦労様です」

 イロファスの住民たちを町の広場へと移し終えました。

『丸一日もあれば元に戻ると思う。多分だけど』

 あれからごく稀にですが目を覚ます住民が数人いました。ロップス殿いわく、「恐らく私が寝かせた者達ばかり、パンチョ殿との経験の差だな」との事。
 目を覚まされると再び僕らに襲い掛かってきましたから、住民全てにプックルの眠クナル魔法を使って寝かせています。

「ウギーさんを信じてこのまま置いていくしかありませんね。プックルの眠クナル魔法から目覚めるのは二日か三日後、起きるまで待つわけにもいきません」

 プックルによると、眠クナル魔法は代謝も冬眠状態になるそうなので空腹や便意なども基本的には問題ないそうです。

 しかし例え空腹に襲われるとしても待つ訳にはいきません。

 理由は依然として鳴動を続けるこの大地。

 昨夜の出来事で明き神の魔力がさらに衰えた事が原因と思えてなりません。
 ファネル様の寿命以上に、明き神の魔力枯渇、すなわちこの世界の寿命の方が猶予がないのかも知れません。

 当然先を急ぎたいんですが、ゆうべの日暮れ頃から今朝の日の出まで、随分と長い間のハードな活動でした。精魔術結界の維持に必要な分以外はすっかり魔力なしです。

「簡単な食事と、お昼寝をしましょう。その後でタロウが抉った地面と吹き飛ばした門のあたり、危なくない様に処理だけしましょうか」




 タロウが抉った穴を覗いてロップス殿が口を開きました。
「しっかし、抉ったもんだなタロウよ」
「ホントすねー。必死だったんすよー、明き神さんと二人で全力の魔力放出っすよ」

 タロウが抉った穴は、深さで大人三人分、広さで言えば、僕の管理する協会が五、六個ほどは収まるでしょうか。

  町の入り口付近は一部分、穴が届いて潜門くぐりもんや垣根が壊れています。

「我はあの時、正直死んだと思ったわ」
「失礼ながら私も死んだものと思っていた」
『それがしも』
『プックルモ』

「必死に少ない魔力を身体強化に回してな。何が起こってるのか良く分からんかったが、こうして見ると、抉られていく地面のすぐ下でどんどんと沈められておったのだな。一緒に抉られなくて良かったわ」

 もし一緒に抉られていたら、荒れ狂った暴風にパンチョ兄ちゃんの血肉や骨片が混ざった事でしょう。想像するだけで恐ろしいですね。


 僕とタロウで土の魔法を使って埋め戻していきます。
 その他の面々で潜門と垣根を修復です。


「この旅が終わったら大工になるのもアリだな」

 新たな潜門を見上げるロップス殿がそう仰いました。
 切り出した丸太を迅雷斬じんらいざんで整え、迅雷突じんらいとつで深い穴を穿ちダボ穴とした様で、釘は一切使ってないそうです。

 ロップス殿の武術ならば確かに家が建てられそうですね。

 ですが設計は別の人にやってもらうのが良さそうです。
 潜門の上部両サイドに、奇怪な獣の顔をしたオブジェが載っています。あれは何でしょうか。

「ん? あれか? 向かって右がプックル、左がロボだ。可愛いだろ」

 …………魔除けにもってこいですね。

 埋め戻しの仕上げをしていたタロウもやって来て潜門を見上げました。

「なんすか、あの気持ち悪い獣の飾り、魔除けっすか?」



 元通りとはいきませんが、なんとか見られる程度には全て修復できました。

 奇怪な獣のオブジェは、ロボは若干引き気味でしたが、案外とプックルが気に入ってしまったので『よく見れば可愛くない事もないような気がしたりする様な感じでござるよ』と空気を読んでくれたので二つとも残す事になりました。

 イロファス住民が目覚めたら驚愕すること請け合いです。


「さ、夕食にしましょう。早く食べて早く寝て、万全で翌早朝の出発に備えますよ」


「あれ? ヴァンさんこれダンゴ汁じゃないっすか?」
「確かにそうだ。小麦粉まだあったのか?」

 みんなには言ってませんでしたね。

「さきほどお店を見つけたんですよ。もちろん誰もいなかったので勝手に入って勝手に持ってきました」
「え? それって泥棒どろぼ……」
「多めのお金を置いてきたんで怒られないと思うんですが……」

 緊急時ですから、御容赦願いたいですね。




 夕食時、パンチョ兄ちゃんから父の城で別れた後の事を伺いました。

「いやあれからな、真北に進んだ筈だったんだがいくら歩いてもミウ村にも着けなくて、西へ東へと角度を変えて歩き続けたのだ」

 パンチョ兄ちゃんの方向音痴は筋金入りですね。どうしてまっすぐ北へ向かう事が出来ないのか僕には分かりません。
 あそこは舗装こそされていませんが街道があるんですから。

「なんだかんだで一月ひとつきほども歩いた。そしてようやく目にしたのが、ミウ村でもここイロファスでもなく、なんとファネルの街だったのよ」

「あ、そういやまだ街あるんすね、五英雄の名前ついたやつ。ぶっちゃけ嫌な予感しかしないんすけど」
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