異世界ニートを生贄に。

ハマハマ

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最終話「異世界のニート」

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「プックル! もうちょっとっすよ! 確かこの森抜けたらウギーんとこっす!」
「メェェェェェエ♪」

「ほら着いたっす!」
「メェ! メェェ!」

「そんなに褒めたら照れるっすよ~」


 タロウとプックルが東の森を抜けてやって来た様です。
 相変わらず賑やかで、久しぶりに会える日を楽しみにしていた甲斐がありますね。

「あ、ヴァンさん! 早いっすね!」
「昨日着きました。二人がタロウたちに会うのを楽しみにしてたんでね、早く行こうってうるさくて」
「二人? ロボと誰すか?」

 キョロキョロと辺りを見回すタロウ、ふふふ、さすがに誰のことか分かりませんよね。

「ここですよ」

 ボクの後ろから飛び出す二人。

「こんにちは!」
『初めまして!』

「おぉ! なんすかこのちっこいの!」

「人族の姿の方が長女、それを背に乗せている狼の姿の方が長男、どちらも四歳です」
「え! て事は……、ヴァンさんとロボの子っすか!?」

 驚くタロウからプックルへ視線を向けて、二人が元気よく挨拶しています。
 ロボの教育の賜物ですね。

「へ~人と狼とどっちも産まれるもんなんすね~。あれ? ところでロボは?」
「ロボは留守番です。今度三人目が産まれるんで」

「そりゃ目出度いっす! 今度はロボに会いにペリエ村にも顔出すっすよ! お土産持って!」

「タロウは全然変わりませんね」
「そうすか? ヴァンさんこそ全然老けてないっすけどね」

 タロウの見た目も全然変わってませんよ。あの頃の二十五歳のままです。


「お、なんだ。タロウ達もヴァン殿ももう着いてたのか」

 南からロップス殿も見えられました。

「ロップスさーん! 元気だったすか!?」
「ああ、みんな元気だ。チノ婆もまだまだ元気だぞ」

 あれからロップス殿はボルビックにお住まいです。
 確かご長男が七歳、去年は下の子が産まれたんでしたね。奥様はもちろんあの時のエイミさんですよ。

「約束の日は明日だぞ。二人とも気の早い事だ」
「そういうロップスさんだって今日来てるっすやん」

 十年前・・・のあの日、ウギーさんがタロウに五英雄の証をくれないかと言った日から数えて、明日でちょうど十年です。

 五年に一度、ここで集まる約束をしています。と言っても、それぞれがちょこちょこ会ってますけどね。

 『五英雄の証をウギーさんが引き取って新たな礎となる』、そんな事が出来る訳ないと思ったものでしたが、「俺らが認めたタロウが認めたなら良いだろ」と、思った以上に簡単に譲渡されてしまいました。

 誰からも反対意見が出なかった事に、逆に驚いたものです。

「そんでウギーはどこっすか? 家っすか?」
「あ、いや、裏の森で魔獣と集まっていました」
「ではみんなで行って驚かせようか」

 プックルに懐き始めた子供たちをそのままプックルに任せて、ウギーさんの下へと向かいます。
 裏へ回ろうと家を迂回す――

「ばぁ!」

 空からウギーさんが舞い降りました。

「びっくりした?」

 僕を含めて三人ともが尻餅をついてます。正直言って驚きました。

「ウギー! 脅かすな!」
「元気そうっすねー」

「二人も元気そうだね。けどちゃんと修行してるの? こんな事で驚いちゃってさ」

 ニヤニヤ笑うウギーさん。
 ウギーさんもみんなに会えて嬉しいみたいですね。



 今夜は腕によりをかけて夕食を作りました。
 タロウの要望もあって、マトンとマギュウのハンバーグに焼き立てのパンです。
 食後用に、タロウの証言を元にして小さな甘いカシパン・・・・も焼いてみました。

「久しぶりのヴァンさんの料理、やっぱサイコーっすわ!」

 料理を作るのは大好きですが、中でもタロウは世界一美味しそうに食べるから作り甲斐がありますね。

 ちなみに、これもタロウの要望ですが、家の中でなく外で食べています。結界を通して盗み聞きされますからね。誰に、とは敢えて言いませんが。

 久しぶりの再会で、この五年の事をお互い披露しています。

「そういやこの前、パンチョさんとファネルさんに会ったすよ。ガゼルさんとこで」
「爺さまコンビか。元気なのか?」

 寿命が尽きると言われたファネル様ですが、ウギーさんに代替わりした途端、五大礎結界から解き放たれると共に元気になってしまったんです。
 少し若返ってしまったかのようでさえありました。

 そして二人で世界を巡ると仰られ、数日後には旅に出られました。
 その際、正式にパンチョ兄ちゃんからタロウへプックルを譲られ、「この宝剣があれば、タロウの『自分の魔力が使えない問題』が解決するだろう?」と明昏天地あかぐらきてんちの宝剣も併せて譲られました。

 もう百二歳と九十七歳ですから、のんびりしてくれて良いと思うんですけどね。


「ところでタロウはガゼル様の所からですか?」
「そうっす。この半年くらいはガゼルさんとこで体術の修行っす」

 タロウはあれから五英雄の下を定期的に巡り、父さんとアンセム様からは魔術、ガゼル様からは体術、タイタニア様からは精霊術や大人のアレコレを教えて貰っています。

 大人のアレコレ、はタロウが言った通りに表現しました。

「お元気そうでしたか?」
「そうっすねー。全然寿命とか感じなかったっす。アレほんとに死ぬんすかね?」

 それなら何よりです。
 まだまだ長生きして頂きたいものですね。

「修行の方は順調かい?」
「そりゃもうバッチリっすよ。次のニートチャンスは間違いなくゲットしたいっすから!」


 十年前のあの日、ウギーさんは言いました。

『ボクじゃアギーに絶対に勝てない。今度アギーが動き出した時、アギーを抑え切れる可能性があるのはタロウしかいない。だからボクがこの北の生贄になる』と。

「じゃ明日はボクと手合わせしよう! ニート生活も悪くないけど、偶には体動かさなきゃ!」

 そう言ったウギーさんにニカッと歯を見せて笑うタロウ。

「良いっすよ! バラ色のニート生活を奪われた恨みを晴らしたるっす!」


 今夜は賑やかな夜になりそうですね。

 次の代替わりに備えて僕もちゃんとトレーニングしておきましょう。

 異世界から来た現ニートと、異世界から連れて来られたニート希望の二人に頼ってばっかりじゃ、カッコ悪いですからね。



 突然立ち上がったタロウが大声で叫びました。

「あぁぁ! 大事なこと言うの忘れてたっす! こないだプックルが一回だけ――」
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