魔伝士ネイラーラ・ゾフィープ

随想アルファ

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亜空間「箱庭」異譚

箱庭行脚 第捌話

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竜が消えた直後から、本当の闘いをする事に。

「よくやったなマギ!ご苦労さん!さあ、ベルベルを連れて帰ろう」
ダマさんは、悪気の無い声色で言う。
でも。
知っているんだ、貴方が死んだ理由と此処に来た訳を!
「いえ、ベルベルさんはもう手遅れになっています。それはダマさんの火魔法をゼロ距離から放たれたからです」

「ほう。見えていたとはな~・・・お前ナニモンなんだ?」

「此処の管理者権限を持っている者です」

「ブッワッハ!冗談もいい加減にしろよ。そんなゲームみたいなこと有る訳ねエだろうが!」
隠し持っていたショートソードを一閃。
竜人化は解いていない。
だから身体で受け止めた。
避ける必要が無いからだ、たとえ、その件にどのような魔術が付与されていても!

ソードが俺の身体に触る寸前、いきなり止まった剣は突然激しい火花を放ち出す。

「な!!」
「本性を引っ込ませないんですね。では遠慮無く」

後ろに軽く3メートルを超えて跳ぶ、ダマさんを追って殴ろうとする腕は当然空振をする。
ほくそ笑むダマさんが、次の瞬間地面に叩き付けられる。
俺は水平方向に空振って、彼は垂直に動かされた。

「ぐはっ」

すぐに起き上がるダマさん。
「手前ェ。猫被っていたな」
「それは貴方ですよダマさん。いえ、記憶保持者のヒナワ・キイチさん」
「何で知っている?」
「だから、管理者権限ですよ。で、日本人だったんですね。親近感が湧きます」
ここで微笑みかける。
ああ構図がラスボスじゃんか。

「ハワード!クラフト!こいつを生きて返すな!!」
「応!」「任せろ」

このチームの真のリーダーが誰なのか。
さすがに一定期間見ていたのだから見えて来る。

全速力で走ってくる二人の手には支給品やイミテーションの武器では無く本来の得物を握っていた。
最後まで使わなかったんだ。まあ、エグイ魔法付与されていたからな。
で。それを惜しみなく出すって事は強敵の認識って事で。
けど用意がイイなぁ。
予定してたってんならベルベルさんもこれで片付けるつもりだったんだ。
俺は逃げる時の囮かな?
けど、竜に対して本気で無いのはもう一つ目的があるんでしょうね。
もういいけどさ。だって。
「サヨナラです。ダマ」

俺はダマさんにアイアンクローを仕掛けて、そのまま後ろを振り返り足を軽く前に蹴る。
全力疾走中の二人は突然透明な壁にでも当ったかの様にその場で弾かれて地面へと転がる。
危険と判断したリジット兄弟は火と風と土の攻撃魔法で牽制をしてくる。

「なるほど。このメンバーが本来のチームかい・・・って事は上層部にもいるんだな。腐った奴らが!」
その時の顔を見る事が出来たダマは血の気を引かせた表情をしていた。
竜人化しているから、相当獰猛な顔なんだろう。いや竜化しかかっているかも・・・。
「面倒くさくなって来た。あの時と同じで良いかな」
「な・・・何をする気だ」
「竜化爆散解除」

竜人化をしている事は、体の周りに魔力を張り巡らせている事でも有り、それを一気に解除するのに周囲に撒き散らすのも手だ。
キャストオフだね。

ただ、そんな魔力の濁流に呑み込まれたら。

皆は吹き飛ばされた。
ダマも。
彼はアイアンクローで顔と頭皮の一部を失っている。
魔力の放出をまともに受けたにしては極めて軽い。
なにしろそこは加減していたからね。

放出した魔力は脆くなっているこの岩山の内部を覆った。
この構図は召喚されたあの部屋の状況と瓜二つ。
つまり・・・。

「肉化!」

あの時と同じ魔法陣が全てを覆う。
違うのは、全員が戦う事を諦めていない事と今回は俺がこの術式を使う事だ。

「何だこの景色は・・・」「なんで肉が蠢いて」「小僧!何をしやがった」

「まさか!グレートエルフを堕とした術式と同じか?」
ダマは気が付いたのか。凄いな。
それに回復を自分に掛けていて、収納空間から自分の得物を取り出した。
攻撃魔法の込められた、外見がそのまま拳銃だ。
自分で魔道具を作成出来ると言っていたからこれがそうなんだろう。

今は俺が術者だ。肉化の違う使い方を見せてやる。

銃が狙いを俺に取り、引き金を絞る頃には肉の壁が聳え立っていた。
かなり飛ばされて転がっていた皆はやっと立ち上がりこちらに近寄って来ようとしている。
彼等を取り込むつもりは無い。
竜人で嬲る事も、竜化で捩じ伏せる事も、ミッチーの鎧を使う事も考えてはいない。

先ずは翻弄させる。

次に放出術式を同時多数に展開して、岩山から外の反射塔に向ける。

本来の使い方で岩山ごとこいつらを蒸発させる。

「さあ、始めよう」
俺は肉に覆われた地面に吸い込まれて消えた。
銃から発射された爆散魔法は肉壁を打ち壊す。

「やったか」
喜色を見せるダマ。
「いやまだだ」「下に潜ったぞ」「気を付けろ、何か仕掛けて来るぞ」
駆け寄ってくると口々に伝えるメンバー達。
壁際に集まり、周囲を警戒する。

そのすぐ横で、肉の密度が高まる壁。
次の瞬間大きくボコッと凹む。
気が付いて警戒するメンバーの前、凹んだ中央から生えて来る肉の塊。
それは変形して、俺の姿を取る。
壁から上半身が水平に突き出した格好だ。
「もう逃げるって諦めて下さいね」
普通の口調で話しかける。ホラーだよね。

「!・・・この!」
ダマが再び銃を撃ち、肉片が辺りに飛び散る。

蠢く肉の壁は大きく穿たれているが岩は見えない。
さすがにその意味を感じて息を飲む面々。

注視している壁の逆側の壁に俺の顔を再現して語り掛ける。
「いきなり撃つのは酷いと思いますよ」
ギョッとして振り返る面々。

同時に初撃で撃たれた場所にニョキっと肉の棒が生えて俺の姿を形取りここからも声をかける。
「話し合えますよ?その気が有れば」
クラフトが最も壁の顔に近く、メイスを叩き付ける。
リジット兄弟が攻撃魔法を俺の姿に浴びせた後、周囲にも盲撃ちをする。

この時、本体である俺は彼の居る場所の、壁の中に居た。
実は俺自身がこの肉の塊と同一化は不可能で、地面や壁の表面に展開した術式が門となって亜空間と繋がるが、その門も亜空間も肉状の固形物なんだ。
自由に操作できる系のダンジョンが恐らく近い感覚じゃないだろうか。
これからやるのは一部の寄生を適当に誰かに行う事。
そう、以前に神経系を浸蝕したのを使って同士討ちをさせる。
同時に二人。自分の意思を持っている状態での恐怖を味わって貰う為に。

でもこれって・・・完全に敵役の行動だよな。
俺は悪役だったのかい。

肉の壁から俺の腕を出す。これは本物だけど基部は例によって肉が盛り上がっている。
扱い的にはゲートとかホールの魔法かな。
俺自身は奴らと位置がダブっている感じで、腕を入れているのは丁度ブラスト研磨箱に手を突っ込んでいる感じ。
或いは医学や精密機器でよくある無菌や無塵の作業用で固定されている手袋に手を入れる感じだろう。
やった事は無いけど映画やテレビで見てたし。

攻撃はこれだけ接していると切るとか突くとか殴るかな?
触っては来ないだろうけど、捻り揚げられたら基部が伸びたりするので面白い反応が期待できるけど。
でもなあ、やられたら痛いんだよね。
ちゃんとダメージを受ける。
すぐ直るけどさ。

さて埋め込んじゃいますか。

丁度いい位置に居たので、クラフトの横顔にペタッと。
それを目の前でみていたダマは引き攣った表情で絶句してた、勿論、態と見せたんだ。
もう一人はリーフ。さっき魔法を乱射して少しバテていたからな。右手の甲にボトッ。
すぐに手を引っ込めて、無線接続かな?
意識を残した状態で身体制禦を切り替える。

さすがにね。管理者権限に、この世界の人達を作ったのは自分の魔法なのでサクサクと終わる。
もっと、俺が楽に終わらせるのも出来るけど、これは見せしめを兼ねたお仕置きだからね。
ちょい、派手にいきますか。

「うわああああ!」「ひやああああ」
悲鳴がさすがに挙がります装着者のお二人。
それに加わるのが二人に攻撃を掛けられている周りの方々。
「ぐわ!」「や・・・やめろ!何をしている」「うお!」
ダマは支配を受けて絶望な表情に変わるのをモロに見てたからかなりの恐怖になったなら上々だね。

この同士討ちでは死なせない。
支配状態の二人には切り合い殴り合ってから外に向かって走り出せる。
外に出たら反射塔に向かってブレスを放ち、この岩山に展開して保持している肉壁を解く。

俺も脱出するよ。
二か所も脱出口が外に走っていくからね。

う~~ん。これじゃ悪役そのまんまだな。
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