上 下
2 / 11

第2話 怪獣戦

しおりを挟む
その夜。
けたたましい非常を告げるアラームが施設内に鳴り響く。

いつもの事とは言えるけど。
余りに煩く、寝て居られないので非番なのに自分のデスクの陰で寝袋にくるまって眠っていた俺は、自身の能力を使って外の空間に逃げる。
自分の位置情報とかはとっくにコントロールしているので視覚情報もアクセス情報も存在していない。

なので今は夜の空に浮かんでいる。寝袋は置いて来ざるを得なかったが。
さすがに夏とは言え、夜の、しかもそこそこの高度に居ると寒い。
尤も寒さなんて空気の層を利用して遮断している、魔法瓶と同じ。

目の前を横切って高速で飛行していく早期迎撃用攻撃機:スーパーファング一号機から三号機が3機出撃。ごくろうさま。
まあ、あの場所に来た隊員たちは俺を悪く言ってはいるだろうけど。別に構わんしな。

さて。
彼:旭 竜次隊員(愛称の竜ちゃんっていつも呼ばれている)
も動いてはいるだろうけど・・・どれどれ、遠隔感知で見るとするか。何しろ地球人じゃないからな、感知し易くて助かる。
人の事は言えんけどさ。
地上応援と避難指示か。報われんねえ。
態々この星に来て修行しているのに。
まあ、ちょいと弱いがな。

もう少ししたら対応策を持っていくか誰かに教えるか、するとしようか?
・・・・・・

「ありゃ。アンさん、一緒に行かへんので?」

似非関西弁の商人:ド・ドーン・トコンビニエンサーが来てしまった。まあ、日本語だと変わった音だけど、彼らの種族語としては一般的なのだそうだ。

「なに?そうだけど。記録映像かい?それとも何か買っていく?」
少しうざい部分が有るけど、根は良いヤツだし、何より気兼ね無く話せるのでとても助かっている。

「いえいえ。今回は見物です。今日はオフ!なので!」

オフを強調して来た。

「すまんね。警備防衛隊所属なのに不真面目で」
「実戦部隊では無いでしょう?第一、本気出したら他の人達、要らんでしょう」

まあ、そうなので頷く。

「どっちかって言えば、兵器屋だな」
「ご自分の力では無いのがええんですよ」

このすぐに返してくるのが微妙にうざい。

「その兵器を実現してくれるのが他のチームの人とあんただよな。いつもあんがとな」
「てれますがな」
まんざらでもなさそうで何より。

「でも今度のンは不味くないですか?」

「宇宙タイプだしな、それよりも地中にいる方のがまずいけどね」
「やっぱり気づいてましたな。それにかなり心配しておられる様で」
こいつは。顔がネズミとモグラの中間の眼つき顔つきになってやがる。
変化の能力が感情なんかで発動するので、人前ってか、地球人達の前で居続けるのはまずい。
普通の地球人でも顔つきが変わるけどさ。

「顔に出てる。幾ら空と言え、もうちょっと警戒した方が良い」
「ここらあたりなら、アンさんのジャミングが尋常やないので」
「それもそうだけど。撃ち落されたり巻き添えされてもカバーは期待しないでくれよ」
「ええ。そんときゃ逃げますさかい」

持っていた端末からアラート。
こっちも察知したが地上のが対象を変えた。
デカブツ二体がガチンコか・・・。
「ほな。ここまででんな。又会いまひょ」
「おう!!」

同時に飛行要塞の別称を持つ大型の対地対空防御用攻撃機:スーパーファルコン富士号が電磁浮上とプラズマイオンエンジンで大加速していく。で巻き添え喰らって空中を何回もきりきり舞いさせられる。

あいつこれを避けたな。

とりまオレ非番!なので何時もは大体アレに乗っているけど今回はオーケー。
けど助力はしないとな。


こうなってくると、旭隊員のサポートになる。


地上誘導中の人の流れに空から向かっていく。
残念だけどここは危険地帯にクラスチェンジしていて非常にデンジャラス。
何故か民族大移動中を狙いたがる巨大生物。或いはエネルギー源か。
その為逆に誘導している。目立っているからなあ。

地上迎撃は非難が終わらないと出来ない。警察や地上部隊がやっているが。

おお。竜ちゃん:旭隊員がガンバっちょる。


けっど。まづい・・・。

竜ちゃんも人目が多くて変身できそうにない。
助けないとね、けど何故俺に気付けない。。。減点だよ?
けど、こっちに目を向けさせてやっから。上手くやれよ。ま。わざとらしい方法でな。

「あっちは出来ないが。変身して派手にお披露目しよう」

音声拡大!チューニング開始:終了。

『こっちに怪獣が来るぞ!逃げるんだ!! でもってトランスフォーメーション』
空中を飛びながら眩く輝き、等身大から広く一帯を覆う。実は障壁展開と方向混乱の二重がけ。

相手は一応生物なのである程度は撹乱できる。あとは人ね。

なのにポケッとこっち見てんぞ旭隊員。チャンスを生かさんか~い。

外見をまるっきり変える。顔はヘルメット状態でハロウィンみたいに原型を留めて無い。特撮ヒーローより凶悪顔ね。
下半身を狼に。その背に翼を。色もド派手に。
人型の上半身。ケンタウロスタイプね。一応戦闘を仮定して弓と剣。鎧は無しで派手な色と派手な装飾を。
我ながらファンタジーだな。
飛行はするが、翼に依らないので異常な機動が可能。
飛び回って、時に地上に降り立ち、避難誘導を促す。
勿論警官や地上部隊員にも。

ところで補足説明が必要だろう。
俺は宇宙人との混血だが、両親も実に混血で、俺はダブルクォーターとかツインギフトって言われる変異体でも有る。
なので、両親の体質を引き継いでいて、地球人の部分が繋ぎの役目と増幅を促して三種の形態を持っている。
一つは人間としての本体。父方が獣人タイプとのハーフなので動物形態、母方が有翼有角の天使/悪魔タイプ。
今は半人半獣だけど幻影では無くて物理的な変形。で、魔法や魔術を扱える。

だから竜ちゃんよ。さっさとでっかくなって向かっていくの!!

シャインの巨大化についても補足を。
いつもは人型で非戦闘形態、それが全身タイツかダイバースーツの様な一体型の強化戦闘形態へ。
大きさは等身大から段階的に大きく重くなる。同時に縮小で重さも少なくなり相手に合わせられるのが特徴。
最大に巨大化すると銀河規模以上にデカくなれるようだが、分子間距離が広がって素粒子レベルで存在強化して太陽やブラックホールが身体の中を透過するそうだ。
これも種族特性でドーンから聞いた。変身と言うより地球人の擬態を解除した状態の場合、種族名のシャイン・グレイトエルフと言おう。

丁度地面に居たので地響きで接近を感知。
ちょっとまずい。

二体が対面しやがった。

ちらっと見ると蔭に入っていく彼を見る。

こっちも空に。

武装隊が地上迎撃を開始した、ナイス!
けっど対戦車砲なので宜しくない。
自分の後ろには悲鳴を上げて逃げ出しているパニックした民衆がいるんだよ。
上に撃ってんじゃ無くデカブツの足とか足元を撃ちなよ。
前進させない工夫が大事。

空中で弓を構える。
弓道ってあるけど空から撃つってのは無かろうな。
取り敢えず相手が倒れればいい威力で。

「付与!術式:重力偏向」「自動追尾開始!」
二射!

命中!でっかいし!距離の問題だけ。
二体はひっくり返った!

あれ?すぐに起き上がってこないですと?まさかノーシントーとか?
ええ・・・威力ないし・・・トドメの攻撃手段は決めていたのに・・・。

そうこうするうちに竜ちゃんが変身巨大化して登場。
うんうん、好きだよ、正統で肉弾戦な巨人。
シャイン・グレイトエルフが登場したのならお邪魔虫は撤退。
ガンバ!!で俺は基地に転移で戻る。
後方支援!こっちが良いんだよね。

説明のついでで。
地球人だけど、実は大銀河規模の連邦会議での産物。
各種族から遺伝情報とかを分け与えて生成した経緯が有って、俺みたいな特異体質もそこから来ている。
なんでも万能で増幅効果を隠し持っているんだとか。
後からそのことが暴露されて一悶着が有って、地球に地球人を収容する決定と監視と注意に保護をする事に。
悶着を起こした種族は地球を離れて行ったけど、創成を行った種族が旧支配者:オールド・ワンズ、監視役を請け負った種族と離脱した種族を支配者:グレート・ワンズと呼ばれ一部の地球人の協力者の身に伝えられている呼称。(まあ、小説の題材にもなっているが結構別物で同じなのは名前くらい)
地球人の特性が実は宇宙人や怪獣からの目的の対象。
なので彼や商人みたいな存在も遥か太古から渡来して庇護や保護をしている。

いかにも慌てて出てきましたって態で自分のデスクまで。
居たメンバーからはちょっと白い目で視られっけど。
けど彼女:二戸部 紗理退院からの視線の圧力がスゴ・・・。
うう?もしかしてビーム放射中とか。怪獣を倒せんじゃないのだろうか。
そういや、いつもなら一番槍で出撃するのに?あっローテだっけ。

この間、口撃も受けている。実は少しダメージが。。。

因みに俺はこの機関や組織の立案と創始を行った人達の一人で生き残り。
寿命がさ、成人した頃から見かけが変わらないしね、やっぱり長いんだよね。
因みに90年位生きてる。
けどさ。寿命で見送るのも辛いけど、戦いで殉職されていくのも悲しいんだよね。
基本のメンタルって人と同じでさ。

さて。モニターに注視。どうなったか?

宇宙タイプ。昆虫に近い外見と性質。エネルギーを直接補給可能な二足直立と爬行に飛行能力を持つ。
地上種。地球由来の巨大生物で筋力や特殊能力を有し再生能力が凄まじい。多様な形態が有りどう規定する種族か議論中。

虫っぽいのが今回ので、あっネームがタグされた、IB(インセクトビースト):オレンジマンティスとな?
確かに二足状態ででっかい蝶みたいな翅が背中に有って長くてカマキリよろしく腕を構えているし体色とマッチしているネーミングだけどさ、センスがな~あんまり他人の事は言えないけどさ。
昆虫とは違うのは顎で横に開かないで縦に開く、後は腹部に当たる場所に普通に尾が有る。後は体が節で覆われているので着ぐるみっぽく感じる。まあ、頭部はカマキリだな。

地上種の方は、地獣:アーマーハイラックス。確かに鎧状の皮膚でずんぐりむっくりだけど動物のハイラックスは小型で象と同じ祖先の種だが?怪獣としては雰囲気的には亀じゃ無いかなって思うけど。それにしても倒れたままだな。
あっ立ち上がって・・・柔らかいのか、あの鎧な皮膚。
雰囲気的に犀かな、そう言えば体毛が無いな、ハイラックスは短毛で覆われている。

これもしかして。二体を消耗戦にしてからの方が良かったのか?

彼も巨大化したら二体居るんで少し対処に困っている態度。いや、避難を優先させないと。せめてヘイトを集めなよ。

攻撃部隊の到着まで時間を稼がないと。
シャイン・グレイトエルフはハイラックスに向かう。起きたばっかりなのを狙ったか。
チョップにミドルキック。
連撃。地味だけど市街地では案外被害を広げずに済む。そしてパワータイプなので結構ダメージが溜まる。
ひるんで後退り、少し戦意喪失したっぽい。

マンティスに目標を変えて。おお。身体をスゴク捩じったと思ったら回転しながらボディプレスか。
やるねえ。
特撮映画かこっちの記録動画だな、そのまんまか。
マンティスも頑丈だな、それでも亀裂が入ったか。
モニターを拡大して解析。うん。少しだが割れたな。化学的な支援攻撃をしたいが。
アラーム音と共にモニターが切り替わる。やっと到着した様だ。


「耐地上戦準備完了しました。スーパーファルコン、シールド展開中。上部迎撃装備安全装置解除!」
「ファング第一隊展開修了。ホバリングウェザーファイヤー限界時間まで260秒」


シールドはこれで二重展開できた。俺のは任意と時間経過で解除や消滅するタイプ。

ファルコンには前と左右と上下にハードポイントが有り今回は上部から山なり砲撃を誘導弾で行う様だ。
全翼機が基本だけどどちらかと言えば横にしたビルの風貌で機体の中央から左右が対象で推進器と攻撃用の発射口とバリアー展開器えお持っていて同時若しくは左右のバリアーと砲撃を切り替えて活動できる。

ファング隊は単座のロケット/ジェットの推進の他、ヘリと同じローターに切り替えて銃砲火器を使う。ロケットブースターを付けた攻撃ヘリ。ちなみに分離できる。

共に金食い虫であるが。

これらには俺が提案したアイディアや能力依存の特殊素材を供与している。
勿論商人のドーンが一枚絡んでもいる。
実は友好的な知性体との交流は黙認されている。一部は商人の事を知っているって事だ。

特にファルコンの浮遊は俺の魔力を遠隔で供給と充填/放出が可能にさせている。教えていないけどさ。
再現には苦労したが、自力で機能を発現するのはとても頼れる。
それに非常に心強い協力者:及川・イデア・英二隊員がいる。なので今回も頼んで特殊武装を運んでもらう。
今頃はガントリーから出撃中だろう。

シャインは各個攻撃を開始。単発で近距離用のエネルギー弾を射出。まあ適切だろうね。
あっと、嫌がって向きを変えたハイラックスがファングを視認した。同時に彼の攻撃がクリーンヒット。
どうも用心深いのか?・・・いや怒ったっぽい。何も考えていない感じでファングに向かっていった。
あ~砲撃を食らっている。

マンティスはシャインを優先脅威と認識。歩行で向かっていった。飛翔能力の制限でも有るのか?それともパワーを使って格闘戦か?
彼はそこでジャンプ。かなりの距離を空けて着地して低い位置からさっきより強いエネルギー放出攻撃を行う。
クリーンヒット!
アッパーカットを食らう状態になったので仰向けにひっくり返った。
こりゃ。飛ぶんじゃないか?
おおっ飛び出した。前に。シャインはディフェンスフィールドを展開。ぶつかってまた倒れた。
馬鹿か?あれ。
虫並みの知恵なのか?

ファルコンから射撃開始。対象はマンティス。
ある程度避難が終わったらしい。地上部隊も戦闘車両が多数入って来た。ああファルコンから出したのね。ある意味揚陸艦や空母だからね。

シャインは一旦離脱。

ファングは時間制限が有るから有効限界内で代わる代わる砲撃。強力な効き目じゃないけど、その分嫌だろうな。逃げ出したし。
シャインはそのハイラックスに目標を変えて。おいおい。高エネルギー放射の構えを取るよ・・・。街中だからやめてくれ。

もうちょっとで応援が届くから。
なのでテレパシー通信開始。
〈おお~い。チョイ。待ってくれ今そっちに向かわせたから〉

《ああ!あなたは何時も助けてくれる・・・》

そのびくっとした反応はやめて欲しい。
返事は無し、何しろ荷物が目の前に実体化したから、注意をそらせるのは戦闘中なのでダメ。

穴の開いた翼を広げたやや長い機体が現れる。

空間転移。
オーバーテクノロジー化したけど俺の能力の再現。
協力者:及川隊員あればこそ実現できた。彼の知識は。地球人以上だから。

コクピットユニットは分離して離脱。普通の航空機と同等なので、戦闘力は無いのから自力で戻ってね。

ホバリングのまま、主翼を機体下部に向かって折りたたむ。ファルコンと同じ浮遊だけどそれほどは持続しない。

折りたたんだら。そこには人のサイズじゃないマシンガンもどき、いやライフルか、浮いている。
シャインは躊躇せず掴まえて構える。
エネルギー供給はシャイン自身からもらう。
砲身が保てば無限に近く使えるが。
冷却機能にさすがに限界が来る。

入力は少なくて、放出時に加速によって砲弾かエネルギーを増幅して目標に命中させる。
その切替はシャインが手で行う。
実弾を選択したのがモニターに表示。特殊コーティングした弾頭が、彼のエネルギーで加速して発射。

ハイラックスは自慢のアーマーごと打ち抜かれた。
背面中央にでっかい穴が開く。?なんか嫌な予感がするんだが。
あっけなく空いたってか開いた感覚。
アーマーの強度は想定以上で貫通にかなりエネルギーを消費してくれた。
もし簡単に貫通か外したら破壊波は地上にも及ぶ。

スポーンと体外に出た砲弾は滑空して地上に落下。丁度駐車場でかなりの面積が有って人的被害は最小に。施設のダメージが酷いが・・・。

マンティスは地上からの砲撃とファルコンからの攻撃で空中に。
早い!第一宇宙速度を突破する気か?
おっと。シャインは自前の高エネルギー放射で決める気だ。投げ出した機体からのアラートで制御を俺が受け持ち、ホバリング再開させて主翼展開。
飛行モードに。

あれ?及川隊員が出て来てドッキングした。居たのか・・・モニターしてなかったけど・・・一応オートに設定して置いて良かった。

地対空の攻撃は彼に勝者を与えた。

今回は楽だった。無事に終わってよかった。

か?
実はやな感じがアーマーハイラックスからまだ出ている。
とっ、モニターにアラートが表示されて警報音までなる。

げげ・・・背中の開口部は元からか。
ハイラックスの行動を多角度カメラでモニターしていた一覧から行動初期の外観合成図から開閉しながら移動してる画像が出て来た。
そこから小型のハイラックスがわんさかと出て来る。
指揮所は混乱。色々サーチして解析。どうも体内にハイラックスの小型が多く存在。
いやこっちが本体か。

どうも、背中の開口部に鉱石か魔石が有ってそこから触手みたいに繊維体を伸ばして連結し、群体を一個体にしているようだ。
一応被弾しててダメージ有り。
単体はそれでも巨大、優に2トンくらいで象とかのサイズ。
このまま避難先に突撃されると厳しい。

ファングとファルコンの砲火。地上部隊の攻撃である程度は倒せているが。

ピンチ!!主に非難した人たちがヤバい。

仕方が無いか・・・奥の手の一つを使う。

「非常宣言!緊急対応開始」
これでも古参の一人。見かけは20代の青年だがこの機関の創設者で発案者、なので指揮管制の隊長権限を特定事項に限り超越する事が認められている。
同時に隊長のお目付け役も。
「ボイスコマンド:トゥルーピー」同時に指紋と掌紋の認証。
俺のデスクが動き出す。さながらコクピット。

ただ普段のズボラから物が溢れているので、持ち上がって左右に開くと色々と落っこちてしまう。
すかさず圧力のビームが無言のまま直撃。耐える。

展開し複数のモニターや操作パネルとジョイステックにサブコントロールレバーが現れる。

今回使用するのはシャイン専用に調整し装着するプロテクター。
元来は人型巨大機器のパーツ、丁度良いエネルギー源なので彼のパワーを使う。
パワーアップユニットってものだ。

シャインの防御を底上げし、同時多数の目標に対し補佐をする。ま、俺がやるんだけどさ。

専用品なので半分封印した状態で専用のガントリーにスタンバイしている。
単体でも戦闘は可能。
ハーフクローズからフルクローズに移行。そのまま後ろ向きに移動しつつ90度向きを変えて施設の外に迫り出す。

機体制禦は俺が行うので魔力の供給もする。

「フローティングスタート」
いちいち宣言しないといけないのがメンドイ・・・昔のアニメの様に技名を叫ぶのに近い。
ガントリーのプレートは下に折れて機体は浮上。

時間が無いので。
「ハイマニューバ:ジョブシフト!」
転移ね。実際には一時的に亜空間を使っての距離短縮。

ごっそり魔力を持っていかれる。あとでエナジー補給しないとな。

寸分違わず手間取っている彼の真上に実体化。
ライトを照射、気付いてもらう。テレパスがちょっとできないんだよね。

シャインの前に移動、格納している装甲を展開。本体部分はこれで分離してサポートを行う。
装甲は胸当てや手甲とかの、ロボットの外装部分だね。
これをフロートを使ってシャインと合体!パージは遠隔操作か彼なら強制的に外せる。

シャインの漲るパワーが視覚的に表現される。つまり光るラインが目映く輝く。ロマンだ~。
やる気が有って何より。

さて目標の内まだ一体化状態の本体と細い線で繋がっている群体と接続線の多い場所をターゲット。

ではシャインに任せてとどめを刺してもらう。
ただ、外れた奴やバラけた連中は可能な限り排除する、脅威になるから。
逃げ出してくれれば止められるんだけどね。これ新種っぽいからな。
地上部隊と出撃した機体に彼の尽力で終焉を迎える。

サンプルとかは別動隊にお任せ。

まあ、何とか戦闘は終わったな。

んで、紗理は肩を怒らせてこっちに来る・・・。
ああ、小言が始まるううう。
これでも君より年上で人の年齢なら年寄なんだから労わって欲しい。いや言えないけどさ。
君のオシメを変えたり、あやしたりしたんだよ?記憶に無いだろうし、有ったらちょっと困る。
どっちかと言えば俺が君を巻き込んだ方だけどさ。
で、その感覚からついつい名前で呼ぶ・・・、まあ紗理退院くらいまでなら許してくれるがプライベートでは呼び捨てだ。
そうしないと拗ねるんだよね。慕ってくれているんだと思うけどさ。
俺の正体については知っているかも位の認識。いやバレていると思うが。

父親の二戸部大将はまだまだ現役の軍人さん。同時にこの組織と関係機関の重鎮。

そうそう、俺の両親は非常勤の別動隊、今は各国を回っている。
使う装備はファンタジーの冒険者的な装備で少し見た目を変えて肉弾戦に魔術を使って活躍中。
いつまでやるんだろうか?

さてと帰るかね。
どうせあのドーンが来ていて、何か物色してるんだろうな。
自分が作った武器のハンドメイド玩具とかや、日本のサブカルチャーも輸出して荒稼ぎしているからな。
となると。
子供たちが来てわちゃわちゃしてもいるだろう。
俺の家には鍵を掛けていない。で、近くの保護施設から来るのを許している。

まあ、子供たちも怪獣なんかの被害者だ。

せめて俺の家でのびのびして欲しい。

まあ、あの家には自立魔法や各種の特殊加工で火事にならず子供に怪我をさせない様にしている。
何人かは俺の正体に感付いているけど。
割と懐かれていて、嫌われていない。幸いにもね。

我が家に近づくと声が聞こえて来る。
そういや時間は朝だ。まだ人の通りは少ない早朝。昨夜の事態も有るな。

大概、普通の人とは時間がズレているけど、家に来た時には人の気配が有る。

帰って来たって感じがする。ありがたいことだ。

扉を空けながら只今後告げる。
玄関には靴がいっぱいだ。子供達のが大半。揃えてて有るのも有るが、途中で辞めた雰囲気でばらけている。

思わず笑みが零れる。

一瞬の沈黙が有ってどたどたと足音が響いて来ると同時に声が沸き上がる。
「「「おかえり~」」」「「「かえってきた~」」」「「「ぶじ~~~」」」

賑やかな出迎えに思わず仔猫の群れが頭によぎる。

「おお!!心配かけて悪かったな。けど無事に帰って来た!」

飛びつく子もいるし、しがみつく子もいる。じっと見つめる子もいる。


何れは袂を分かれる。けどそれまでは近くに居ると頭の中で声を上げる。
さあ、朝飯だ。今日は半日休みになっている。
呼ばれたらいかないとだが。
しおりを挟む

処理中です...