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第一章
第九話 前進するために
あれからずっと考えていた割には、今日はよく眠れたと思う。
昨日は部屋に戻ってから、夕ご飯もそのまま部屋に用意してもらった。
相変わらず私に付いてくれる侍女は一人。
料理を運ぶとか、いろんなことで迷惑をかけるのは分かってはいたが、なんとなく一人になりたかったのだ。
でもそれも、もうおしまい。
この状況を打開するためにやらなければいけないことと、やりたいことをみつけたから。
「まずはやらなければいけないことを片付けないとね」
王家主催の夜会までは約あと一週間。
それまでにせめて悪役令嬢という今の立場から、婚約者に捨てられた女くらいにはシフトチェンジさせなければいけない。
どっちにしても十分惨めな立ち位置だけど、いじめをしていた女よりかは幾分かマシだ。
夜会で次の婚約者を探すのならば、と考えての私なりの結論だった。
ホントはおじい様たちのいる郊外にでも送ってくれる方がいいのに。
今の段階では父さまにはその考えはなさそう。
まだ今のところは、こんな私であっても利用価値があると思っているのかな。
「利用価値って……。なんかモノみたいね」
自分で思っておいて、なんとも皮肉だなと自嘲する。
でも向こうがそう思っているなら、それを利用するぐらいじゃないとね。
ココでは生きていけないだろう。
さて、まずは周りにどうにかして、私はマトモであるということを認識させる方がいいのかな。
「グレンたちが私を捨てるためにハメられたなんて、恨み節を一人で言ってもただの痛い子よね」
まだ日も登りきる前の薄暗い部屋に私はランプを灯した。
本来ならば侍女がやってくれるのだが、まだ起こすには少し早い。
それにマッチの使い方も分かる私には、何の問題もなかった。
薄い羽織を掛け、そのまま机に向かう。
ランプを机に置くと、ゆらゆらとした光がその周りを照らしていた。
「とりあえず」
机から紙とペンを取り出す。
インクを付けて書くペンは、ボールペンなどに比べるととても書きにくい。
しかも消すものがないから、失敗すれば書き直しという悲惨さだ。
「よし、書くか」
気合をいれてから、ペンを進めていく。
まずはお世話になった学園の先生たちに書く手紙からだ。
当たり障りのない挨拶からお世話になった感謝、そして何か面白いことがあれば教えてほしいと書く。
そして最後にまたお会いしましょうとしめる。
今はどうにかして味方を増やさないと、立ち位置が悪すぎるもの。
「使い道がないと思われたとしても、その後に普通の市民として働ければいいけど……。でも良く物語で出てくるような冒険者とかは無理そうよね」
魔法はこの国に一部あるものの、もちろん私は使えない。
それに剣術も使えないし、体力もほぼなかった。
力拳を作ってみても、ぷにぷにしているだけ。
貴族としてはきっと生きてはいけないのなら、女でもこの世界で働ける仕事を見つけないと。
「ホントなら、両親や誰かの口添えがあれば女でも働けるはずだけど」
昨日の言い方では、それは絶対に無理だ。
もし次の婚約者を見つけられなければ、きっとお見合いなどで強制的に結婚させられるだろう。
それも、悪役令嬢であり、妹に婚約者を盗られた人物像の惨めなままで。
そんな令嬢のお見合い相手など、普通の人は見つからないでしょうね。
良くて、どこかの後妻か。
悪くて、好色家か。
「さすがにそれは悲惨ね」
ため息交じりに立ち上がり、鏡に写る自分を見る。
確かに愛想もなく、貴族令嬢にしては可愛げはない。
口角を上げて笑顔を作ってみても、やはりぎこちなかった。
唯花とアイリスは、ただ世界が違っただけでなにも変わっていない。
「致命傷よね、これ」
でも進む以外に道はない。
先生や友だちだったはずの人に文を出して状況を見つつ、父の命令である王家主催の夜会を成功させないと。
笑顔の練習を諦め、とりあえずドレスを探す。
衣装棚のドレスは、どれも地味で装飾品など少ないものばかり。
ある意味、昨日の食事会で着たドレスが一番まともに思える。
「夜会に着ていけそうなものがないって。ああ、そういえばほとんど出たこともなかったわね。チェリーと違って」
グレンという婚約者がいたからこそ、あまり興味のない夜会には参加してこなかった。
そのため夜会用のドレスも作っていない。
悪循環もいいところだろう。
基本、この世界でのドレスというものは既製品ではなく採寸してからのオーダーメイド。
夜会まで一週間しかないというのに。
「ん-。これは困ったわね。体形はチェリーとほとんど変わらないからドレスを借りても……」
言いながら、チェリーのドレスを思い返す。
ふわふわとしたチェリーに合わせた、淡い色ばかりのドレスたち。
豪華な装飾品もさることながら、私のイメージとは正反対な気がする。
「んーーーーー。ダメ元で、ドレスを見に行く方が早そうね」
思い立ったが吉日という言葉もある。まぁ、この世界にではないけど。
街のこともこの世界のことも再認識するいい機会かもしれない。
記憶が戻ったとはいえ、いきなり二つになった記憶のせいで曖昧になっている部分が多いから。
私は出していた手紙たちを片付けると、出かける用意を始める。
前進するためには、この晴れた日は何よりもいい日に思えた。
昨日は部屋に戻ってから、夕ご飯もそのまま部屋に用意してもらった。
相変わらず私に付いてくれる侍女は一人。
料理を運ぶとか、いろんなことで迷惑をかけるのは分かってはいたが、なんとなく一人になりたかったのだ。
でもそれも、もうおしまい。
この状況を打開するためにやらなければいけないことと、やりたいことをみつけたから。
「まずはやらなければいけないことを片付けないとね」
王家主催の夜会までは約あと一週間。
それまでにせめて悪役令嬢という今の立場から、婚約者に捨てられた女くらいにはシフトチェンジさせなければいけない。
どっちにしても十分惨めな立ち位置だけど、いじめをしていた女よりかは幾分かマシだ。
夜会で次の婚約者を探すのならば、と考えての私なりの結論だった。
ホントはおじい様たちのいる郊外にでも送ってくれる方がいいのに。
今の段階では父さまにはその考えはなさそう。
まだ今のところは、こんな私であっても利用価値があると思っているのかな。
「利用価値って……。なんかモノみたいね」
自分で思っておいて、なんとも皮肉だなと自嘲する。
でも向こうがそう思っているなら、それを利用するぐらいじゃないとね。
ココでは生きていけないだろう。
さて、まずは周りにどうにかして、私はマトモであるということを認識させる方がいいのかな。
「グレンたちが私を捨てるためにハメられたなんて、恨み節を一人で言ってもただの痛い子よね」
まだ日も登りきる前の薄暗い部屋に私はランプを灯した。
本来ならば侍女がやってくれるのだが、まだ起こすには少し早い。
それにマッチの使い方も分かる私には、何の問題もなかった。
薄い羽織を掛け、そのまま机に向かう。
ランプを机に置くと、ゆらゆらとした光がその周りを照らしていた。
「とりあえず」
机から紙とペンを取り出す。
インクを付けて書くペンは、ボールペンなどに比べるととても書きにくい。
しかも消すものがないから、失敗すれば書き直しという悲惨さだ。
「よし、書くか」
気合をいれてから、ペンを進めていく。
まずはお世話になった学園の先生たちに書く手紙からだ。
当たり障りのない挨拶からお世話になった感謝、そして何か面白いことがあれば教えてほしいと書く。
そして最後にまたお会いしましょうとしめる。
今はどうにかして味方を増やさないと、立ち位置が悪すぎるもの。
「使い道がないと思われたとしても、その後に普通の市民として働ければいいけど……。でも良く物語で出てくるような冒険者とかは無理そうよね」
魔法はこの国に一部あるものの、もちろん私は使えない。
それに剣術も使えないし、体力もほぼなかった。
力拳を作ってみても、ぷにぷにしているだけ。
貴族としてはきっと生きてはいけないのなら、女でもこの世界で働ける仕事を見つけないと。
「ホントなら、両親や誰かの口添えがあれば女でも働けるはずだけど」
昨日の言い方では、それは絶対に無理だ。
もし次の婚約者を見つけられなければ、きっとお見合いなどで強制的に結婚させられるだろう。
それも、悪役令嬢であり、妹に婚約者を盗られた人物像の惨めなままで。
そんな令嬢のお見合い相手など、普通の人は見つからないでしょうね。
良くて、どこかの後妻か。
悪くて、好色家か。
「さすがにそれは悲惨ね」
ため息交じりに立ち上がり、鏡に写る自分を見る。
確かに愛想もなく、貴族令嬢にしては可愛げはない。
口角を上げて笑顔を作ってみても、やはりぎこちなかった。
唯花とアイリスは、ただ世界が違っただけでなにも変わっていない。
「致命傷よね、これ」
でも進む以外に道はない。
先生や友だちだったはずの人に文を出して状況を見つつ、父の命令である王家主催の夜会を成功させないと。
笑顔の練習を諦め、とりあえずドレスを探す。
衣装棚のドレスは、どれも地味で装飾品など少ないものばかり。
ある意味、昨日の食事会で着たドレスが一番まともに思える。
「夜会に着ていけそうなものがないって。ああ、そういえばほとんど出たこともなかったわね。チェリーと違って」
グレンという婚約者がいたからこそ、あまり興味のない夜会には参加してこなかった。
そのため夜会用のドレスも作っていない。
悪循環もいいところだろう。
基本、この世界でのドレスというものは既製品ではなく採寸してからのオーダーメイド。
夜会まで一週間しかないというのに。
「ん-。これは困ったわね。体形はチェリーとほとんど変わらないからドレスを借りても……」
言いながら、チェリーのドレスを思い返す。
ふわふわとしたチェリーに合わせた、淡い色ばかりのドレスたち。
豪華な装飾品もさることながら、私のイメージとは正反対な気がする。
「んーーーーー。ダメ元で、ドレスを見に行く方が早そうね」
思い立ったが吉日という言葉もある。まぁ、この世界にではないけど。
街のこともこの世界のことも再認識するいい機会かもしれない。
記憶が戻ったとはいえ、いきなり二つになった記憶のせいで曖昧になっている部分が多いから。
私は出していた手紙たちを片付けると、出かける用意を始める。
前進するためには、この晴れた日は何よりもいい日に思えた。
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