大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第一章

第二十一話 精霊との契約

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 くまさんはまるで涙を流すように、目をこする。

 黒く、つぶらな瞳。

 茶色いふわふわとした毛並みは、年数とともにだいぶ汚れてしまっている。

 精霊でも洗ったら、きれいになったりするのかな。

 そもそも、精霊は中身だけで外身は人形のままだから、ダメなのかな。


「ご主人サマ、何考えてるの~? 契約するよ」

「ああ、ごめんごめん。よろしくね、くまさん」

「はいだリン」


 短く答えると、くまさんはそのまま手を自分の前で組む。

 すると床に魔法陣のようなサークルが現れた。

 サークルはまばゆく光り出し、私とくまさんを包み込む。

 そして頭の中に、聞いたことのない男性の声が響いた。

 ゆったりと心地いいのに、どこか威厳のあるような声。


『汝の聖名みなの元、ここなる精霊リンとの契約を結ぶ』


 精霊リン。それがくまさんの今の名前。

 そういえば前はくまさんとだけずっと呼んでいて、名前も付けてあげなかったもんね。


『契約は互いが死す時まで継続し、その加護を与えるものとする。契約の誓いをここに』

「ご主人サマはずっとボクが守るリン」

「うん。ずっとずっとそばにいてね、リン」


 私はリンの手を掴む。

 光は大きくなり、視界が飲み込まれた。

 それでも恐怖感はそこにはなく、心地よい温かさと優しい風に包まれているような感覚だ。

 ああ。そうだ。

 ココに転生してくる前にも、こんな光の中にいた気がする。


『ここに精霊と人との契約を新たに結ぶ』


 祝福を告げる鐘の音を聞いた気がした。

 いつの間にか頭に響き渡る声も光も消え、元の自分の部屋に戻っている。


「リン、これで契約は終わったの? なんか何も変わった感じはしないけど」

「はいだリン。これで契約は終了だリン。もしご主人サマが怪我などをした時は治すことが出来るようになったリン。それに加護もあるから、大抵のコトでは傷つくこともなくなったリン」

「傷つかないなら、怪我はしないんじゃないの?」

「はっ」


 今頃気づいたというように、びっくりした顔をリンがする。

 そしてそのまま口元を抑え、固まったまま動かない。


「あー、ほら、。あの……他の人の怪我を治せばいいんじゃない?」

「そうだリン。そうするリン。何かあったらすぐボクに言うリン」

「うん。ありがとぅ」


 思わず助け船を出したものの、そうすると私が力を持っていることがバレてしまうってことか。

 ん-。いきなり精霊使いとかになりましたー!

 って、さすがに怪しさ満載ね。

 今は悪役令嬢の身だし。

 仮に、今の私が使えたとしたら、精霊使いというより魔女扱いされそうね。

 もし力を使うような時は本当に慎重にならないといけないわね。


「あ、そいえばくまさん……えっと、リンの外見っていうのはどうにかならないの?」

「んとぉ、どうにかというのはどういうコトだリン?」

「だってほら、汚れてしまっているし、くたくただし」

「!」


 あ、また固まった。

 もしかして自覚なかったのかな。


「ボク、汚いリン?」

「えーーー。いや、そういうわけじゃないけど。んと、ほら、その」

「ガーーーーンだリン」

「だってほら、私がずっと持っていたから。だいぶその、ね」

「だいぶ汚かったリンか!」

「あー、あー、ん-」

「ガーーーーーンだリン」


 あごが外れてしまわんばかりに、リンが大きく口を開けていた。

 やっぱり自覚なかったんだ。

 私の言い方も完全にダメだったわね。

 リンに悪いことしちゃった。


「綺麗にするリン」

「出来るの?」

「もちろんだリン。ボクは精霊なんだリン。ご主人サマ、ボクを抱っこしならがボクの綺麗だった時の姿を思い浮べられるリンか?」

「うん。大丈夫」


 リンを抱きしめながら、もらったばかりの頃を頭の中で思い描く。

 大好きだった祖父にお誕生に買ってもらったくまの人形。

 今でもあの時をずっと覚えているから。

 記憶の中のくまの人形を、リンに重ね合わせる。

 するとリンの体が光を放ちながら、思い出の中の人形とまったく同じものへと変化した。


「すごーい。あの時のままだわ」


 リンの体を撫でる。

 もらったばかりの新品で、ほつれもよたってもいない体。


「これで完璧リン」

「うん、良かった。リン、これからもよろしくね」

「はいだリン!」


 二人で見つめ合い、笑い出す。

 こんな穏やかで幸せな時間は、私にとって本当に何年ぶりのことだった。
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