大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉日和。(旧美杉。)

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第四章

第五十七話 二度と会わないのならば

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「なんだか、ずいぶんな言われ様が聞こえてきた気がするんだが、気のせいかな」

「キース殿下は、あってるから言われても仕方ないんじゃないのですか?」


 白熱しつつあるお茶会に水を差すように、キースたちがやってきた。

 どうやら先ほどの私とチェリーの会話は、遠くからでも聞こえてしまっていたようだ。

 そんな大きな声を出していたつもりはなかったんだけど、周りを見てはいなかったのも事実。

 もっとも、急に現れた二人を見て驚く姿を見れば、誰も彼らが近づいてきたことに気づいていなかったのが分かる。


「まぁ」

「まぁ、キース。珍しいではないの、あなたがこのお茶会に顔を出してくれるなんて」


 チェリーの言葉を遮るように、王妃が甘えたような声でキースにすり寄る。

 勢いよく立ち上がったせいで座っていた椅子が後ろに倒れても、王妃は気にする素振りを見せない。

 完璧な王妃とは、明らかに言い難い作法だ。

 それに、やっぱりなんだろう。

 ああいう風に、キースにすり寄る姿を見ると、イライラする。

 王妃だから、キースも無下に出来ないみたいだし。

 だいたい、義理の姉なのに馴れ馴れしいっていうか、厚かましいっていうか。

 
「キー……」


 キースの名前を呼ぼうとした私の手を、チェリーが強く掴んだ。

 そしてどこか怒ったように、私を睨みつける。

 『名前を呼ぶな』無言のまま、チェリーがそう言っている気がした。

 王妃といい、チェリーといい、一体なんなの。


「迎えに来て下さったのですね、グレン様。チェリー、お話したいことがあったので嬉しいですわ」

「そろそろお開きの時間だと思ってね。散歩がてら、キース殿下も来たいというから来たんだ」


 先頭がキースだった辺りからして、キースも来たいと言ってというのは無理がありそう。

 でもまぁ、これ以上白熱する前に撤収出来るだけマシだけど。


「せっかく来てくれたのに、もう行ってしまうの?」

「すみませんね姉上」

「ねぇ、キースぅ」


 王妃の手が、キースの腕に触れた。

 そしてそのまま腕を絡ませ、しな垂れかかろうとする。

 わざとでも、思うだけでも不倫ってなるんだっけ。

 そんなことを冷静に考える頭とは裏腹に、私は勢いよく立ち上がる。

 カーンという、大きな椅子が倒れ込む音。

 その音に、みんなの視線が集まる。

 作り笑顔、作り笑顔。そう、ここはあくまでも王妃様のお茶会なんだから。


「大丈夫かい、アイリス」

「ええ、大丈夫ですよキース殿下。それより、ごめんなさい。椅子に足を引っかけてしまったようで」

「音を立てるなど、無作法ですわよ」


 しな垂れかかれなかった恨みを込めたように、王妃は眉間にシワをよせた。


「本当に申し訳ございません。王妃様と同じで、足が少し長かったようですわ。以後気を付けます」

「な!」


 初めに椅子を倒したのは、そっちも同じでしょう。

 私だけ責められるのは、はっきり言ってお門違い。

 同じなのだから、王妃も反省すればいいのよ。

 ま、私のはわざとだけとね。

 自分だけがこの場で特別扱いされると思っている王妃は、怒りで顔が真っ赤だ。

 もうどうせ会うこともないんだし、関係ないけど。


「お迎えが来たとのことなので、皆さまこれにて失礼させていただきます。今日はこのような華やかなお茶会に参加させていただきまして、ありがとうございました」


 全ての状況を無視し、私が挨拶をするとそそくさとチェリーも立ち上がりお辞儀をした。

 ただ二度と会いたくないと思うほど、こういうのって続くのよね。

 でもキースにベタベタする王妃の姿を見たくはなかったし、いいや。


「さ、送っていくよ」

「ありがとうございます、殿下、グレン様」


 王妃の顔色を窺う令嬢たちも、憤慨する王妃も全て無視しとおし、私たちは中庭をあとにした。
 
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