64 / 89
第四章
第五十九話 胸を占める想い
しおりを挟む
バツの悪そうに、グレンは打たれた頬を撫でる。
そして打った方のチェリーは、下を向きながらぼとぼとと大粒の涙を流していた。
よほど悔しかったのか、涙を拭うこともなく、床にこぼれ落ちていく。
「まったく、こんなとこで何してるの? 痴話喧嘩ならよそでやってちょうだい」
「ずいぶんな言い様だね、アイリス」
「だってそうでしょ、グレン。私にはあなたたちが仲違いをしようが何をしようがまったく関係ないもの」
そう関係ない。
私にとって二人は自分を断罪した元婚約者と、それを奪い盗った妹にしかすぎない。
なんでそんな二人の仲を私が取り持たなければいけないのよ。
馬鹿じゃないの。
心の底からそう言いたい。
だいたい、こんなやりとりすら、本当は見たくもない。
でも、こんな風に泣くこの子を初めて見た気がする。
私にとっては、涙は当たり前のようなものだった。
今、どんな気持ち?
さすがにそう聞くほど、私も性格は悪くないつもりだ。
そう関係ない。と、もう一度自分に言い聞かせる。
なのに、ため息とともに言葉があふれ出す。
「前から思っていたけど、自分と似ているからって、自分と同じではないのよ。あくまで自分以外は全て他人」
「それは……」
「分かってないでしょ。自分ならココまでなら大丈夫。自分はコレでは傷つかない。だとしても、それが他人に当てはまるわけではないんだから」
どこまでいったって、言い方は悪いけど自分は自分。
他人とは違う生き物だと私は思っている。
だからこそ、最低限として自分がやられて嫌なことは人にはしない。
前の人生で私が学んだことだ。
でもそれ以上に、自分と他人との境界線はしっかりさせないと。
グレンにも唯奈にも、これはずっと私が二人に言いたかっこと。
私が傷ついたフリをしていなくたって、傷つかないわけじゃないんだから。
自分中心に物事を考えないでよ。
「他人の気持ちを思いやれない以上、最低と言われても仕方ないわね。でもだからと言って、私にとってはどっちもどっちよ」
グレンもチェリーも、私にとってはどちらが味方でどちらが敵というわけではない。
今までしてきたことを考えれば、どっちもどっちよ。
「それよりも、私はこの状況をキース様にも説明していただきたいのですが」
先ほどの王妃の態度。
そして聞いていた話と全く異なる点。
少なくとも、父から聞いた話では国王と王妃は二人とも退位した後、療養をするという話だったはず。
でも先ほどの態度を見ていると、王妃は自分の退位に納得などしていない。
それどころか、このまま居座る気満々だったし。
キースへの接し方を見ていると、居座る以上のことを考えていそうなのは私だけではないはず。
「王妃のこと、だね」
「他に何かあるとお思いですか?」
「いや、うん。まぁ、そうだね」
キースは何とも歯切れの悪い言葉を返した。
その曖昧な態度が、私の胸をもやもやさせる。
言いたいことはあるのに、上手く言葉が出てこない。
イライラとは少し違うなにか。
ただはっきりと分かるのは、なんか嫌だという思いだけだった。
そして打った方のチェリーは、下を向きながらぼとぼとと大粒の涙を流していた。
よほど悔しかったのか、涙を拭うこともなく、床にこぼれ落ちていく。
「まったく、こんなとこで何してるの? 痴話喧嘩ならよそでやってちょうだい」
「ずいぶんな言い様だね、アイリス」
「だってそうでしょ、グレン。私にはあなたたちが仲違いをしようが何をしようがまったく関係ないもの」
そう関係ない。
私にとって二人は自分を断罪した元婚約者と、それを奪い盗った妹にしかすぎない。
なんでそんな二人の仲を私が取り持たなければいけないのよ。
馬鹿じゃないの。
心の底からそう言いたい。
だいたい、こんなやりとりすら、本当は見たくもない。
でも、こんな風に泣くこの子を初めて見た気がする。
私にとっては、涙は当たり前のようなものだった。
今、どんな気持ち?
さすがにそう聞くほど、私も性格は悪くないつもりだ。
そう関係ない。と、もう一度自分に言い聞かせる。
なのに、ため息とともに言葉があふれ出す。
「前から思っていたけど、自分と似ているからって、自分と同じではないのよ。あくまで自分以外は全て他人」
「それは……」
「分かってないでしょ。自分ならココまでなら大丈夫。自分はコレでは傷つかない。だとしても、それが他人に当てはまるわけではないんだから」
どこまでいったって、言い方は悪いけど自分は自分。
他人とは違う生き物だと私は思っている。
だからこそ、最低限として自分がやられて嫌なことは人にはしない。
前の人生で私が学んだことだ。
でもそれ以上に、自分と他人との境界線はしっかりさせないと。
グレンにも唯奈にも、これはずっと私が二人に言いたかっこと。
私が傷ついたフリをしていなくたって、傷つかないわけじゃないんだから。
自分中心に物事を考えないでよ。
「他人の気持ちを思いやれない以上、最低と言われても仕方ないわね。でもだからと言って、私にとってはどっちもどっちよ」
グレンもチェリーも、私にとってはどちらが味方でどちらが敵というわけではない。
今までしてきたことを考えれば、どっちもどっちよ。
「それよりも、私はこの状況をキース様にも説明していただきたいのですが」
先ほどの王妃の態度。
そして聞いていた話と全く異なる点。
少なくとも、父から聞いた話では国王と王妃は二人とも退位した後、療養をするという話だったはず。
でも先ほどの態度を見ていると、王妃は自分の退位に納得などしていない。
それどころか、このまま居座る気満々だったし。
キースへの接し方を見ていると、居座る以上のことを考えていそうなのは私だけではないはず。
「王妃のこと、だね」
「他に何かあるとお思いですか?」
「いや、うん。まぁ、そうだね」
キースは何とも歯切れの悪い言葉を返した。
その曖昧な態度が、私の胸をもやもやさせる。
言いたいことはあるのに、上手く言葉が出てこない。
イライラとは少し違うなにか。
ただはっきりと分かるのは、なんか嫌だという思いだけだった。
1
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。
柊
ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。
そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。
すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。
ただ、愛されたいと願った。
そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。
◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる