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第五章
第七十八話 紅茶に毒の風味を添えて
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「なに、これ! ごほぉぉぉ、ぁぁあ!」
王妃はティーカップを手から落とし、喉を抑え込む。
そしてそのまま椅子から滑り落ちつつ、飲み込んだ紅茶を吐き出そうとした。
「どうされたんですか、王妃様」
私は答えを知りつつも、ゆっくりと王妃に近づいた。
あくまでもびっくりしたように、何も知らなかった体で。
「こ、これ、も、もしかして毒!」
「毒ですかぁ? まぁ、大変」
「な。なんで、どうして」
その言葉を聞きつけた侍女たちが駆けつける。
「あああ、あんた!」
侍女の中に、王妃は彼女を見つけた。
そう。
自分が毒を私に盛る様に言いつけた先ほどの侍女を。
そしてここまできてやっと、王妃は私の意図に気づいたハズ。
全部が仕返しでしかなかったことに。
「あんたが毒をー!?」
「毒だなんて、私は手に入れることなんて出来ないですよ」
「そ、そんなことはいいから。解毒、解毒を!」
「そう言われましても。ああ、薬師様お呼びしましょうか」
「そんなの間に合わないわよ。これは猛毒なのよ」
「どうしてそんなこと知ってるんですか? 盛られたモノが猛毒だって」
「だって、だってそれは……」
「リン出てきて~」
私の声に、リンがふわふわと姿を現す。
先ほどの言葉を聞いていた王妃なら、リンを出したことの意味も分かるはず。
リンになら解毒出来るって。
「その子で、解毒をして!」
「どーしましょうねぇ」
「わ、わたくしを見殺しにする気なの?」
「元々、私に毒を盛ったのは王妃様じゃないですかぁ。それを今、私に言うのですか?」
「そ、それは」
「どうします? ああ、もう時間がなくないですかぁ? ほら、体が震えてますよ」
毒はもちろん入ってはいない。
あの毒と同じような苦みのあるものを、用意して入れてもらっただけ。
でも紅茶が変な味がして、あの侍女が出てくれば毒を盛った本人である王妃なら、勝手に錯覚してくれると思ったから。
そして毒を飲んだという恐怖から体が震えているだけでも、毒が回って体が震えてると勝手に勘違いしてくれているのだ。
きっと想像以上の恐怖だとは思う。
だって王妃が一番、あの毒の効能を知っているのだから。
「あ、謝るわ。わたくしが悪かった。貴女が目障りだったのよ。わたくしがまた次の王妃となるには、王妃候補たちを蹴落とさないと」
「で、他の候補たちにも似たようなコトをしてきたと?」
「そ、そうよ! だって、わたくしはこの国の王妃となるためにずっとずっと努力してきたのよ! それがたった二年。たった二年で退位だなんて納得できるわけないじゃない!」
「でも、あなたはやってはいけないことをしたのですよ。私にも、私以外にも」
「そんなのなんだっていうのよ! わたくしの苦労が水に流れることに比べたら些細なことじゃないの!」
「些細? 人の人生の全てをダメにしているのに、どこが些細だというんですか!」
私は死にかけて、チェリーは死罪になるところだった。
それだけじゃなく、他の令嬢たちも暴漢に襲われたり、事故で後遺症が残った子もいる。
それを些細なことだなんて。
いくら自分がどれだけ努力をして王妃という立場を手に入れたからといって、それを守るためにやっていいことの範囲なんてとっくに超えてしまっている。
そんな判断すら出来ないような人が、身分に縋りつこうだなんて。
「王妃というのは、あんたたちなんかよりもずっと偉い身分なのよ!」
「偉い身分だったら、むしろ下の者のお手本となって守らなければいけなかったんじゃないんですか? なのに、あなたはその全く逆のことをした。ただご自分の身分を守るためだけに」
「それのなにが悪いって言うのよ! わたくしはずっと努力してきたのよ! 報われるのが当然でしょ!」
「努力してきたからって、それを他人に押し付けていいわけではないでしょう。報われないからって、誰かに当たっていいわけでもない。あなたはやり方を間違えたんですよ」
奥から全ての話を聞いていたキースがゆっくりと出てきた。
キースを見た王妃は、蒼白な顔で全てが終わったことを自覚する。
初めからこうなるように私が仕組んだことだ。
王妃の告白。つまり自白をさせ、多くの証人を得ることを。
もうこれで逃げることは出来ないだろう。
今までしてきた全ての罪から。
「あああ、わたくし、は……」
王妃は割れたティーカップに視線を落とした。
もしかしたらここで死ねた方が楽だったと思えるのかもしれない。
でもそんなことで終わらせるつもりもない。
彼女がしっかりと罪と向き合い、そして被害者への謝罪を行うまでは。
叫びとも思える王妃の泣き声が、ただ中庭に響き渡る。
しかしもう誰も、彼女に手を貸す者はいなかった。
王妃はティーカップを手から落とし、喉を抑え込む。
そしてそのまま椅子から滑り落ちつつ、飲み込んだ紅茶を吐き出そうとした。
「どうされたんですか、王妃様」
私は答えを知りつつも、ゆっくりと王妃に近づいた。
あくまでもびっくりしたように、何も知らなかった体で。
「こ、これ、も、もしかして毒!」
「毒ですかぁ? まぁ、大変」
「な。なんで、どうして」
その言葉を聞きつけた侍女たちが駆けつける。
「あああ、あんた!」
侍女の中に、王妃は彼女を見つけた。
そう。
自分が毒を私に盛る様に言いつけた先ほどの侍女を。
そしてここまできてやっと、王妃は私の意図に気づいたハズ。
全部が仕返しでしかなかったことに。
「あんたが毒をー!?」
「毒だなんて、私は手に入れることなんて出来ないですよ」
「そ、そんなことはいいから。解毒、解毒を!」
「そう言われましても。ああ、薬師様お呼びしましょうか」
「そんなの間に合わないわよ。これは猛毒なのよ」
「どうしてそんなこと知ってるんですか? 盛られたモノが猛毒だって」
「だって、だってそれは……」
「リン出てきて~」
私の声に、リンがふわふわと姿を現す。
先ほどの言葉を聞いていた王妃なら、リンを出したことの意味も分かるはず。
リンになら解毒出来るって。
「その子で、解毒をして!」
「どーしましょうねぇ」
「わ、わたくしを見殺しにする気なの?」
「元々、私に毒を盛ったのは王妃様じゃないですかぁ。それを今、私に言うのですか?」
「そ、それは」
「どうします? ああ、もう時間がなくないですかぁ? ほら、体が震えてますよ」
毒はもちろん入ってはいない。
あの毒と同じような苦みのあるものを、用意して入れてもらっただけ。
でも紅茶が変な味がして、あの侍女が出てくれば毒を盛った本人である王妃なら、勝手に錯覚してくれると思ったから。
そして毒を飲んだという恐怖から体が震えているだけでも、毒が回って体が震えてると勝手に勘違いしてくれているのだ。
きっと想像以上の恐怖だとは思う。
だって王妃が一番、あの毒の効能を知っているのだから。
「あ、謝るわ。わたくしが悪かった。貴女が目障りだったのよ。わたくしがまた次の王妃となるには、王妃候補たちを蹴落とさないと」
「で、他の候補たちにも似たようなコトをしてきたと?」
「そ、そうよ! だって、わたくしはこの国の王妃となるためにずっとずっと努力してきたのよ! それがたった二年。たった二年で退位だなんて納得できるわけないじゃない!」
「でも、あなたはやってはいけないことをしたのですよ。私にも、私以外にも」
「そんなのなんだっていうのよ! わたくしの苦労が水に流れることに比べたら些細なことじゃないの!」
「些細? 人の人生の全てをダメにしているのに、どこが些細だというんですか!」
私は死にかけて、チェリーは死罪になるところだった。
それだけじゃなく、他の令嬢たちも暴漢に襲われたり、事故で後遺症が残った子もいる。
それを些細なことだなんて。
いくら自分がどれだけ努力をして王妃という立場を手に入れたからといって、それを守るためにやっていいことの範囲なんてとっくに超えてしまっている。
そんな判断すら出来ないような人が、身分に縋りつこうだなんて。
「王妃というのは、あんたたちなんかよりもずっと偉い身分なのよ!」
「偉い身分だったら、むしろ下の者のお手本となって守らなければいけなかったんじゃないんですか? なのに、あなたはその全く逆のことをした。ただご自分の身分を守るためだけに」
「それのなにが悪いって言うのよ! わたくしはずっと努力してきたのよ! 報われるのが当然でしょ!」
「努力してきたからって、それを他人に押し付けていいわけではないでしょう。報われないからって、誰かに当たっていいわけでもない。あなたはやり方を間違えたんですよ」
奥から全ての話を聞いていたキースがゆっくりと出てきた。
キースを見た王妃は、蒼白な顔で全てが終わったことを自覚する。
初めからこうなるように私が仕組んだことだ。
王妃の告白。つまり自白をさせ、多くの証人を得ることを。
もうこれで逃げることは出来ないだろう。
今までしてきた全ての罪から。
「あああ、わたくし、は……」
王妃は割れたティーカップに視線を落とした。
もしかしたらここで死ねた方が楽だったと思えるのかもしれない。
でもそんなことで終わらせるつもりもない。
彼女がしっかりと罪と向き合い、そして被害者への謝罪を行うまでは。
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しかしもう誰も、彼女に手を貸す者はいなかった。
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