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021 違う、そうじゃない
「騎士団のみんなもすごく喜んでいたよ。ありがとうミレイヌ」
「いえ……。ランド様たちこそ、この暑い中お疲れ様です」
戦いが終わったとはいえ、いつ何があるかなんて誰も分かりはしない。
そう前回と同じように、この国が戦火に包まれる可能性はいつだってある。
あの恐ろしい戦いがあったからこそ、騎士団を始めとしたランド様たちは日ごろからの丹念を怠ることはなかった。
事実、そのことには頭が下がる思いだわ。
「いや。大切なものを守るためなら、そんなことは何でもないよ。それに鍛えたい理由もあるからね」
「理由ですか?」
「そう。理由さ」
思わせぶりな台詞の先を、ランドは笑ってごまかした。
何かしら。理由って。
私を守りたいとか、そんなコトではない気がする。
「それよりも急に料理なんて始めて何かあったのかい? うちのご飯が美味しくなかった?」
「いえ。そんなことないですよ。ただこのお屋敷で一人何もせずにゴロゴロしているのが嫌なんです」
「それならお茶会とか開けばいいじゃないか」
貴族はよくお茶会なるものを開催する。
それは自分の家や庭の自慢だったり、見栄の張り合いだったり。
さもなくば、ほぼ井戸端会議の豪華版って感じ。
ああいう雰囲気って好きではないのよね。
ただでさえ、私は貴族の中でも異質なのだもの。
この屋敷に女性を招くのは得策ではないことぐらい知っている。
だってみんなランドを狙う人ばかりだから。
「……あまりそういうことをする友だちもいませんし」
「そうか……。君はあまり夜会も好きではなかったな」
「ええ」
「それでも今日は王宮まで足を運んでくれたんだね」
「ランド様のお顔が見たかったので」
これは本音。
もっとすごく愛情表現出来ればいいんだけど、私はたぶん自覚している以上に自分の夫であるランドが好きだ。
誰にも渡したくなくて、外でだってイチャイチャしたい。
でもどうしても自信もないし、そんなことされてランドが困るのではないかって。
そちらばかり気になってしまって、うまく伝えることが出来ていない。
初夜が会ったら、違ったのかな。
ううん。
まずは自分が自信を持てるようにならないとダメよね。
「君からそんな風に言ってくれるのは、本当に嬉しいよミレイヌ」
「……ランド様、あの……」
「ん?」
『ランド様は私が妻で良かったのですか?』そう言いかけた言葉を飲み込む。
「何でもないです」
「やっぱり君のこんなに可愛らしい顔は、みんなに見せたくないな」
ランドの温かな手が頬に触れた。
ただそれだけで、体が熱を帯びて行く。
夫婦だし、夫婦だし、夫婦だし!
これぐらい、普通なのよ。
私が目指すのは初夜なのだから。
そう自分に言い聞かせても、ベッドについた手から汗がにじみ出すのが自分でも分かった。
「ミレイヌ」
「……ランド様」
もしかしてこれはすごくいい雰囲気なんじゃないの?
あれ、このまま初夜とか?
私まだ痩せてないけど、でもでも。
ランドは私の顔をじっと見つめ、微笑んだあとそのままおでこにキスを落とした。
「んっ」
自分でも声が出たことに驚く。
しかしランドはそんなことなど気にすることなく、どこまでも優しかった。
そして汗ばむ私の手をランドがとった。
「あ、あの……」
ランドはなぜかその手を引っ張り、私をベッドから立ち上がらせる。
「ん?」
あれー?
ここは押し倒す場面ではなかったのかな。
なんで私はランドに手を取られて立ち上がってるの⁉
「ランド様?」
まったく状況が掴めない私はただ視線を宙に泳がせる。
「うん、ちょっと待ってね」
ランドは何かを確かめるように私の脇に手を差し込むと、まるで子どもを高く掲げるように持ち上げた。
ただ持ち上げたとは言っても、体重差がかなりある私とランド。
宙に浮いたのはきっと数センチくらいだと思う。
「んんん?」
「ん-。まだまだだな」
「あの、これは一体?」
「うん。気にしないでミレイヌ」
「へ?」
この状況で気にしないって無理じゃないのかな。
ランドは何を思って私を持ち上げたのか、全く分からなかった。
「じゃあお休みミレイヌ。良い夢を~」
颯爽と私に手を振りながら部屋を出て行くランドの背を、ただ茫然と見つめる。
「え? なんか思ってたんと違う……」
その言葉は誰に聞かれることもなく、部屋に虚しく消えていった。
「いえ……。ランド様たちこそ、この暑い中お疲れ様です」
戦いが終わったとはいえ、いつ何があるかなんて誰も分かりはしない。
そう前回と同じように、この国が戦火に包まれる可能性はいつだってある。
あの恐ろしい戦いがあったからこそ、騎士団を始めとしたランド様たちは日ごろからの丹念を怠ることはなかった。
事実、そのことには頭が下がる思いだわ。
「いや。大切なものを守るためなら、そんなことは何でもないよ。それに鍛えたい理由もあるからね」
「理由ですか?」
「そう。理由さ」
思わせぶりな台詞の先を、ランドは笑ってごまかした。
何かしら。理由って。
私を守りたいとか、そんなコトではない気がする。
「それよりも急に料理なんて始めて何かあったのかい? うちのご飯が美味しくなかった?」
「いえ。そんなことないですよ。ただこのお屋敷で一人何もせずにゴロゴロしているのが嫌なんです」
「それならお茶会とか開けばいいじゃないか」
貴族はよくお茶会なるものを開催する。
それは自分の家や庭の自慢だったり、見栄の張り合いだったり。
さもなくば、ほぼ井戸端会議の豪華版って感じ。
ああいう雰囲気って好きではないのよね。
ただでさえ、私は貴族の中でも異質なのだもの。
この屋敷に女性を招くのは得策ではないことぐらい知っている。
だってみんなランドを狙う人ばかりだから。
「……あまりそういうことをする友だちもいませんし」
「そうか……。君はあまり夜会も好きではなかったな」
「ええ」
「それでも今日は王宮まで足を運んでくれたんだね」
「ランド様のお顔が見たかったので」
これは本音。
もっとすごく愛情表現出来ればいいんだけど、私はたぶん自覚している以上に自分の夫であるランドが好きだ。
誰にも渡したくなくて、外でだってイチャイチャしたい。
でもどうしても自信もないし、そんなことされてランドが困るのではないかって。
そちらばかり気になってしまって、うまく伝えることが出来ていない。
初夜が会ったら、違ったのかな。
ううん。
まずは自分が自信を持てるようにならないとダメよね。
「君からそんな風に言ってくれるのは、本当に嬉しいよミレイヌ」
「……ランド様、あの……」
「ん?」
『ランド様は私が妻で良かったのですか?』そう言いかけた言葉を飲み込む。
「何でもないです」
「やっぱり君のこんなに可愛らしい顔は、みんなに見せたくないな」
ランドの温かな手が頬に触れた。
ただそれだけで、体が熱を帯びて行く。
夫婦だし、夫婦だし、夫婦だし!
これぐらい、普通なのよ。
私が目指すのは初夜なのだから。
そう自分に言い聞かせても、ベッドについた手から汗がにじみ出すのが自分でも分かった。
「ミレイヌ」
「……ランド様」
もしかしてこれはすごくいい雰囲気なんじゃないの?
あれ、このまま初夜とか?
私まだ痩せてないけど、でもでも。
ランドは私の顔をじっと見つめ、微笑んだあとそのままおでこにキスを落とした。
「んっ」
自分でも声が出たことに驚く。
しかしランドはそんなことなど気にすることなく、どこまでも優しかった。
そして汗ばむ私の手をランドがとった。
「あ、あの……」
ランドはなぜかその手を引っ張り、私をベッドから立ち上がらせる。
「ん?」
あれー?
ここは押し倒す場面ではなかったのかな。
なんで私はランドに手を取られて立ち上がってるの⁉
「ランド様?」
まったく状況が掴めない私はただ視線を宙に泳がせる。
「うん、ちょっと待ってね」
ランドは何かを確かめるように私の脇に手を差し込むと、まるで子どもを高く掲げるように持ち上げた。
ただ持ち上げたとは言っても、体重差がかなりある私とランド。
宙に浮いたのはきっと数センチくらいだと思う。
「んんん?」
「ん-。まだまだだな」
「あの、これは一体?」
「うん。気にしないでミレイヌ」
「へ?」
この状況で気にしないって無理じゃないのかな。
ランドは何を思って私を持ち上げたのか、全く分からなかった。
「じゃあお休みミレイヌ。良い夢を~」
颯爽と私に手を振りながら部屋を出て行くランドの背を、ただ茫然と見つめる。
「え? なんか思ってたんと違う……」
その言葉は誰に聞かれることもなく、部屋に虚しく消えていった。
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