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「さすが公爵家ね。ティアのこと、本当に大切にしてくれているみたいで良かったわ」
「大切にされすぎちゃって、逆に私は心配だわ」
「ティアは心配性ね。そうだ! お部屋の片付けも終わったのなら、ラウンジで二人でお茶しましょう?」
この学園内には食堂の他にも、貴族たちが主に使用するラウンジがある。
ラウンジではお茶やお菓子などが提供されていた。
ああでも、あそこのお支払ってどうなっているのかしら。
今までは学費とか、ラウンジでのお金は家に請求がいっていると思っていたけど。
あのケチな叔父が私のためにお金なんて使うわけがないし。
家に帰ったら請求されるのかしら……。
何か、私でも出来るような仕事を見つけないとダメねきっと。
「ね、行きましょうティア」
リーリエが私の手を引っ張り、ベッドから立たせた。
値段とか見たこともなかったし、そうね、一度行って確認するのもいいかもしれないわね。
何事も勉強よ。
ちょっと……高い勉強代かもしれないけど。
「そうね。久しぶりだし……」
「ふふふ」
ただすぐこの後、私はこの判断を後悔することとなった。
それこそほんの一瞬で冷や水をかぶせられるかのように――
◇ ◇ ◇
ラウンジには、その雰囲気に似つかわしくないような大きな笑い声が響き渡っていた。
「なんなの?」
入った瞬間、その声にリーリエが眉をひそめ不快感を示す。
そしてリーリエが入って来たことに気づいた他の令嬢たちが、わらわらとこちらに近づいてきた。
ラウンジの入り口で他の生徒たちに囲まれるようになった私たちは、すぐにどこからその大きな声が聞こえてくるのか理解出来た。
一番奥の席。
ラウンジは基本的には平民でも使用できるものの、今まではその格式の高さと値段から使用する者はいなかった。
そして席にしても、暗黙の了解として奥になればなるほど爵位が高い者が使うというのがほぼここでの慣例となっている。
絶対的なルールではないにしろ、今まで破る人間なんていなかったのに。
「シャロン侯爵令嬢様! お願いです。どうか注意なさって下さいな」
「もうどうにもならなくて……」
「居心地が悪すぎですわ」
令嬢たちは口々に、リーリエに話かけた。
どうやら相手は一筋縄ではいかないか、彼女たちよりも身分が高いかどちらかということ。
でも一番奥に座っているからこの入り口からは姿は見えないものの、この声聞いたことがあるのよね。
どこで……。
私はそんなことを薄ぼんやりと考えていた。
「あ、え、あ……ルイス男爵令嬢」
「!」
リーリエの後ろにいた私に気づいた令嬢たちが顔を引きつらせた。
そしてみんな一斉に私から視線を外す。
まるで見てはいけないものを見たかのように。
聞いたことのあるような声……そしてこの令嬢たちの反応。
自然と私には、答えが分かってしまった。
「ティア?」
リーリエを置いて、私はその声がする方へ歩き出した。
自分でもびっくりするほど、なぜか心の中はスンっと落ち着いていた。
怒りとも言えるような、何か……。
そんなものが私を突き動かしていた。
「あはははは。もーさぁ、ホント堅苦しくていやになるわ~」
「学園だもの仕方ないでしょう」
「だってあの先生の顔見た~?」
「みたみた。なんかさ、魔物みたいだよね」
一番奥の席には、大きな声を上げながら話す三人の令嬢たちがいた。
彼女たちは周りなど一切気にすることなく、しゃべり散らかしている。
汚い。何もかも。作法なども何も気にせず、ぽろぽろとお菓子はこぼれおちている。
そして机をバンバンと叩き、ここはどこなのかと思える状況だ。
でも一番問題なのは、彼女たちが周りを全く気にしていないこと。
こんなに大きな声を出しても、きちんと座っていなくても、お菓子をこぼしても全く気に留める様子はない。
貴族令嬢……というよりも、普通に考えて人としてダメだと思う。
「ラナ!」
私はその席の少し前で立ち止まると、大きく息を吸い、声を上げた。
そう一番奥に座る彼女の名を。
ラナは一瞬、すごく嫌そうな顔をした後、不適な笑みを浮かべこちら見た。
「なぁんだ、誰かと思えば元男爵令嬢のティアじゃないの」
「!」
またこの子は、元だなんて言って。
「あははははは。なに、この人元ってことはあんたの義姉になる人じゃないの~」
「家族なのに元とか言われちゃってるし。え、なに、平民になってるの?」
馬鹿みたいなことを、下品な声を上げつつ彼女たちは笑い出す。
ああ、こういうのを同じっていうのね。
同じようなモノたちは同じようなモノたちと群れるっていうか。
ラナの友だちと思しき二人は、おそらくどこかの地方貴族の令嬢なのだろう。
由緒正しいこの学園に入ったというのに、まったくその体を成してはいない。
「除名されたわけでも、家を捨てたわけでもないので元ではありませんわ。そんな簡単なことも知らないのですの?」
「何、この人。感じ悪い」
「ねーラナ、この人大丈夫?」
「まぁったく、ティアは相変わらず自分の置かれた状況が理解できていないのね」
ラナはいつものように大きくため息をついた。
状況を理解できていないのは自分だと、どうして分からないのだろう。
私はラナがしたように、大きくため息をつき返した。
それが気に食わなかったのか、ラナが敵意をむき出す。
しかし私はそんなラナを気にすることなく、言葉を返した。
「大切にされすぎちゃって、逆に私は心配だわ」
「ティアは心配性ね。そうだ! お部屋の片付けも終わったのなら、ラウンジで二人でお茶しましょう?」
この学園内には食堂の他にも、貴族たちが主に使用するラウンジがある。
ラウンジではお茶やお菓子などが提供されていた。
ああでも、あそこのお支払ってどうなっているのかしら。
今までは学費とか、ラウンジでのお金は家に請求がいっていると思っていたけど。
あのケチな叔父が私のためにお金なんて使うわけがないし。
家に帰ったら請求されるのかしら……。
何か、私でも出来るような仕事を見つけないとダメねきっと。
「ね、行きましょうティア」
リーリエが私の手を引っ張り、ベッドから立たせた。
値段とか見たこともなかったし、そうね、一度行って確認するのもいいかもしれないわね。
何事も勉強よ。
ちょっと……高い勉強代かもしれないけど。
「そうね。久しぶりだし……」
「ふふふ」
ただすぐこの後、私はこの判断を後悔することとなった。
それこそほんの一瞬で冷や水をかぶせられるかのように――
◇ ◇ ◇
ラウンジには、その雰囲気に似つかわしくないような大きな笑い声が響き渡っていた。
「なんなの?」
入った瞬間、その声にリーリエが眉をひそめ不快感を示す。
そしてリーリエが入って来たことに気づいた他の令嬢たちが、わらわらとこちらに近づいてきた。
ラウンジの入り口で他の生徒たちに囲まれるようになった私たちは、すぐにどこからその大きな声が聞こえてくるのか理解出来た。
一番奥の席。
ラウンジは基本的には平民でも使用できるものの、今まではその格式の高さと値段から使用する者はいなかった。
そして席にしても、暗黙の了解として奥になればなるほど爵位が高い者が使うというのがほぼここでの慣例となっている。
絶対的なルールではないにしろ、今まで破る人間なんていなかったのに。
「シャロン侯爵令嬢様! お願いです。どうか注意なさって下さいな」
「もうどうにもならなくて……」
「居心地が悪すぎですわ」
令嬢たちは口々に、リーリエに話かけた。
どうやら相手は一筋縄ではいかないか、彼女たちよりも身分が高いかどちらかということ。
でも一番奥に座っているからこの入り口からは姿は見えないものの、この声聞いたことがあるのよね。
どこで……。
私はそんなことを薄ぼんやりと考えていた。
「あ、え、あ……ルイス男爵令嬢」
「!」
リーリエの後ろにいた私に気づいた令嬢たちが顔を引きつらせた。
そしてみんな一斉に私から視線を外す。
まるで見てはいけないものを見たかのように。
聞いたことのあるような声……そしてこの令嬢たちの反応。
自然と私には、答えが分かってしまった。
「ティア?」
リーリエを置いて、私はその声がする方へ歩き出した。
自分でもびっくりするほど、なぜか心の中はスンっと落ち着いていた。
怒りとも言えるような、何か……。
そんなものが私を突き動かしていた。
「あはははは。もーさぁ、ホント堅苦しくていやになるわ~」
「学園だもの仕方ないでしょう」
「だってあの先生の顔見た~?」
「みたみた。なんかさ、魔物みたいだよね」
一番奥の席には、大きな声を上げながら話す三人の令嬢たちがいた。
彼女たちは周りなど一切気にすることなく、しゃべり散らかしている。
汚い。何もかも。作法なども何も気にせず、ぽろぽろとお菓子はこぼれおちている。
そして机をバンバンと叩き、ここはどこなのかと思える状況だ。
でも一番問題なのは、彼女たちが周りを全く気にしていないこと。
こんなに大きな声を出しても、きちんと座っていなくても、お菓子をこぼしても全く気に留める様子はない。
貴族令嬢……というよりも、普通に考えて人としてダメだと思う。
「ラナ!」
私はその席の少し前で立ち止まると、大きく息を吸い、声を上げた。
そう一番奥に座る彼女の名を。
ラナは一瞬、すごく嫌そうな顔をした後、不適な笑みを浮かべこちら見た。
「なぁんだ、誰かと思えば元男爵令嬢のティアじゃないの」
「!」
またこの子は、元だなんて言って。
「あははははは。なに、この人元ってことはあんたの義姉になる人じゃないの~」
「家族なのに元とか言われちゃってるし。え、なに、平民になってるの?」
馬鹿みたいなことを、下品な声を上げつつ彼女たちは笑い出す。
ああ、こういうのを同じっていうのね。
同じようなモノたちは同じようなモノたちと群れるっていうか。
ラナの友だちと思しき二人は、おそらくどこかの地方貴族の令嬢なのだろう。
由緒正しいこの学園に入ったというのに、まったくその体を成してはいない。
「除名されたわけでも、家を捨てたわけでもないので元ではありませんわ。そんな簡単なことも知らないのですの?」
「何、この人。感じ悪い」
「ねーラナ、この人大丈夫?」
「まぁったく、ティアは相変わらず自分の置かれた状況が理解できていないのね」
ラナはいつものように大きくため息をついた。
状況を理解できていないのは自分だと、どうして分からないのだろう。
私はラナがしたように、大きくため息をつき返した。
それが気に食わなかったのか、ラナが敵意をむき出す。
しかし私はそんなラナを気にすることなく、言葉を返した。
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