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第1話
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「やっ、ああっ、待って、んっ、せんぱいっ……!」
後ろから与えられるリズムのまま、口から声がこぼれ出る。
その時僕はどういうわけか、社員寮の2階にある先輩の部屋で彼に抱かれていた。
5月。第一志望だった大手システム制作会社に入社して、2カ月目のことだった。
「声抑えろよ。隣に聞こえる」
そんなことを言うくせに、僕を責め立てる先輩の腰の動きに容赦はない。
「ふあっ、もうちょっと、優しく」
激しい抽挿に、擦られる粘膜が熱くなる。
ローションのおかげで痛くはないけれど、慣れない感覚にどうにかなってしまいそうだ。
「優しくって、朝までじっくり時間かけて抱かれたいのか?」
腰の動きを緩め、先輩は余裕たっぷりにため息をついてみせる。
「や、それはそれで……困りますけどっ」
そんな恋人同士みたいなこと、僕には想像もつかなかった。
そう、僕らは恋人同士じゃない、体だけの関係だ。
同じ社員寮に住む先輩後輩の間柄で、部署は同じ開発部だけれどチームは違う。
そして僕としては、好きでこんな関係になったわけじゃないんだ。
今だって、こうして彼の前に恥ずかしい部分をさらけ出していることが居たたまれない。
けど、やむを得ない事情があって……。
「教えてください、なんであのシステムは動かないんですか!?」
「それは当然、お前のソースコードに問題があんだろ」
「1行目から全部見直しても、ほんとに分からなくて」
僕は涙目になって、肩越しに先輩を見上げる。
先輩が大きな手で僕の腰を引き寄せ、いったん動きを止めた。
「俺には一瞬で分かったけどな」
「だと思ったから聞きに来たんです。あれ、今夜中に完成させなきゃマズくて」
ベッドで四つん這いになっている僕の内股を、ローションが伝い落ちていく。
実技試験を突破して入社したはずなのに、僕は社内の落ちこぼれで。
このままでは試用期間のうちにクビになってしまいそうだった。
一方先輩は僕と3歳しか違わないのに、社内イチのエンジニアで。
どういう目と脳をしているのか、ソースコードの間違いには一瞬で気づくんだ。
そして書かせれば誰より早くて正確だという。
部署のみんなが先輩には一目置いていて、僕自身も彼を尊敬していた。
「お願いします、氷室先輩……」
今日はこの部屋に入った途端に押し倒されてしまったけれど、もうこうなってしまったからにはこの人に頼るしかない。
先輩の唇の端が軽く持ち上がった。
「だったらギブアンドテイクだな」
「ああんっ!」
内側の敏感な部分をえぐられて、大きな声が出てしまう。
「だから声」
「無理ですっ、そこだめ!」
「俺はお前のここ気持ちいい」
この人は僕の体をそこそこ気に入っているらしかった。
けどほんと困る。
あんまりされると僕は壊れて叫びだしてしまいそうだ。
先輩が大きく腰をグラインドさせた。
「やあっ、それもだめ、ほんとに無理っ」
「お前、面白いな」
背中越しに先輩の、クツクツという笑い声が聞こえてきた。
それから――。
先輩が僕の背中を抱きしめるようにして、中でドクドクと精を放つ。
「……く」
耳元で聞くうめくような声にゾクゾクしてしまった。
「はあっ、せんぱい……」
「楠木、お疲れ」
背中から先輩の熱が離れていく。
「帰りに開いていたファイル、102行目を見直せ」
「102行目……」
「ああ。ミスはその1カ所だけだ」
言い終えると彼は、僕の中に埋めていた楔を引き抜いた。
息を整えながら振り向くと、先輩はもうコンドームを外している。
そしてその口を結び、ごみ箱へと投げ捨てた。
「はあ……」
同じ手で髪を掻き上げる仕草には、妙な色気が漂っている。
会社では無口な人なのに、ベッドではいろんな表情を見せている気がした。
本当に変な人だ。
「なんだ、早く戻りたいんじゃなかったのか?」
見つめていたところで目が合ってしまい、ドキリとした。
「も、戻りますよ!」
僕はベッドの下に散らばっていた服を身にまとい、部屋のドアへと向かった。
先輩も変だけど、僕自身も変だ。
仕事のためとはいえ、どうしてこの人に大人しく抱かれるのか。
僕は自分の感情がよく分からずにいる。
「……なあ、楠木」
ドアノブに手をかけたところで、先輩に呼び止められた。
「あんま無理すんなよな」
「え? はあ……」
戸惑いつつも、先輩の表情を確かめる。
この人は酷いんだか優しいんだか。
いや、けっして優しいなんてことはないか。ただでは助けてくれないんだから。
彼の侵入を許したお尻の奥が甘い疼きを発する。
「なんだよ、分かったなら早く行け」
今度は先輩の方が恥ずかしそうに、目を逸らした。
後ろから与えられるリズムのまま、口から声がこぼれ出る。
その時僕はどういうわけか、社員寮の2階にある先輩の部屋で彼に抱かれていた。
5月。第一志望だった大手システム制作会社に入社して、2カ月目のことだった。
「声抑えろよ。隣に聞こえる」
そんなことを言うくせに、僕を責め立てる先輩の腰の動きに容赦はない。
「ふあっ、もうちょっと、優しく」
激しい抽挿に、擦られる粘膜が熱くなる。
ローションのおかげで痛くはないけれど、慣れない感覚にどうにかなってしまいそうだ。
「優しくって、朝までじっくり時間かけて抱かれたいのか?」
腰の動きを緩め、先輩は余裕たっぷりにため息をついてみせる。
「や、それはそれで……困りますけどっ」
そんな恋人同士みたいなこと、僕には想像もつかなかった。
そう、僕らは恋人同士じゃない、体だけの関係だ。
同じ社員寮に住む先輩後輩の間柄で、部署は同じ開発部だけれどチームは違う。
そして僕としては、好きでこんな関係になったわけじゃないんだ。
今だって、こうして彼の前に恥ずかしい部分をさらけ出していることが居たたまれない。
けど、やむを得ない事情があって……。
「教えてください、なんであのシステムは動かないんですか!?」
「それは当然、お前のソースコードに問題があんだろ」
「1行目から全部見直しても、ほんとに分からなくて」
僕は涙目になって、肩越しに先輩を見上げる。
先輩が大きな手で僕の腰を引き寄せ、いったん動きを止めた。
「俺には一瞬で分かったけどな」
「だと思ったから聞きに来たんです。あれ、今夜中に完成させなきゃマズくて」
ベッドで四つん這いになっている僕の内股を、ローションが伝い落ちていく。
実技試験を突破して入社したはずなのに、僕は社内の落ちこぼれで。
このままでは試用期間のうちにクビになってしまいそうだった。
一方先輩は僕と3歳しか違わないのに、社内イチのエンジニアで。
どういう目と脳をしているのか、ソースコードの間違いには一瞬で気づくんだ。
そして書かせれば誰より早くて正確だという。
部署のみんなが先輩には一目置いていて、僕自身も彼を尊敬していた。
「お願いします、氷室先輩……」
今日はこの部屋に入った途端に押し倒されてしまったけれど、もうこうなってしまったからにはこの人に頼るしかない。
先輩の唇の端が軽く持ち上がった。
「だったらギブアンドテイクだな」
「ああんっ!」
内側の敏感な部分をえぐられて、大きな声が出てしまう。
「だから声」
「無理ですっ、そこだめ!」
「俺はお前のここ気持ちいい」
この人は僕の体をそこそこ気に入っているらしかった。
けどほんと困る。
あんまりされると僕は壊れて叫びだしてしまいそうだ。
先輩が大きく腰をグラインドさせた。
「やあっ、それもだめ、ほんとに無理っ」
「お前、面白いな」
背中越しに先輩の、クツクツという笑い声が聞こえてきた。
それから――。
先輩が僕の背中を抱きしめるようにして、中でドクドクと精を放つ。
「……く」
耳元で聞くうめくような声にゾクゾクしてしまった。
「はあっ、せんぱい……」
「楠木、お疲れ」
背中から先輩の熱が離れていく。
「帰りに開いていたファイル、102行目を見直せ」
「102行目……」
「ああ。ミスはその1カ所だけだ」
言い終えると彼は、僕の中に埋めていた楔を引き抜いた。
息を整えながら振り向くと、先輩はもうコンドームを外している。
そしてその口を結び、ごみ箱へと投げ捨てた。
「はあ……」
同じ手で髪を掻き上げる仕草には、妙な色気が漂っている。
会社では無口な人なのに、ベッドではいろんな表情を見せている気がした。
本当に変な人だ。
「なんだ、早く戻りたいんじゃなかったのか?」
見つめていたところで目が合ってしまい、ドキリとした。
「も、戻りますよ!」
僕はベッドの下に散らばっていた服を身にまとい、部屋のドアへと向かった。
先輩も変だけど、僕自身も変だ。
仕事のためとはいえ、どうしてこの人に大人しく抱かれるのか。
僕は自分の感情がよく分からずにいる。
「……なあ、楠木」
ドアノブに手をかけたところで、先輩に呼び止められた。
「あんま無理すんなよな」
「え? はあ……」
戸惑いつつも、先輩の表情を確かめる。
この人は酷いんだか優しいんだか。
いや、けっして優しいなんてことはないか。ただでは助けてくれないんだから。
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