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ランザ・マラガーニ2
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ダンスのレッスンの授業。普段はクラスごとで受けるのだが、今日は学校から貸し出されたドレスを着て、本番さながらの状態でレッスンをするらしい。
ただ、Aクラスは十数人ほどの人数しかいないので、同じく人数の少ないDクラスとの合同授業となってしまった。
「よりによってDクラスとだなんて」
フランがアリーのドレスのファスナーをしめながら呟く。
「心配してくれるの?私は大丈夫よ」
ドレスを着終わった私たちは、ホールへと向かった。
ホールの端へ寄って、授業が始まるのを待っていると、騒がしい一団がやって来た。
「うわぁ」
フランが嫌悪感丸出しで一団を見ている。アリーは大きな溜息と共に黙って見ていた。
騒がしい一団の中心にいたのはダヴィデ殿下だった。二人の女性の腰を抱き、後ろにも数人侍らせている。男性も二人ほど見受けられた。明らかにマナーがなっていない様子に、Aクラスの生徒は勿論、Dクラスのまともらしい数人も眉をひそめている。
「まるで、場末の娼館みたい」
何かの本で読んだ場面さながらの光景に少しだけ気分が悪くなる。これが本当に次の王となる男なのだろうか。ゲイブリエル殿下との差に呆気に取られてしまった。
先生が到着して、いよいよ授業が始まる。男性からのアプローチに応えて1曲踊る。それが今日の一連の流れだった。授業なので断る事は出来ないらしく、望まれれば応じなければいけなかったのが若干、不服ではあったけれど幸いにして、ダヴィデ殿下含めたあの下世話な三人には当たらなかった。
Dクラスの人であっても、一生懸命頑張っている人ばかりだったのでほっとした。
フランは三人のうちの一人に、一度誘われてしまっていた。踊っている間のフランの顔が可笑しくて笑うのを堪えるのが大変だった。
ダヴィデ殿下は、侍らせていた女性たちと順番に踊っていたが、その中の一人とは連続で踊っていた。本来ならば、婚約者でもない女性と連続で踊るなどあってはならない事なのだが、あくまでも授業だからなのか、先生も注意することはなかった。
ダンスとは名ばかりで、ただただ身体を密着させていただけの二人を見て、これはもう身体の関係にまで発展しているのでは?そう思えて仕方がなかった。
そして、いよいよラストダンス。このままアリーに何事も起こりませんようにと祈ったのも束の間、ダヴィデ殿下がアリーの元へと真っ直ぐに向かって行った。
「アリアンナ、待たせたな。ラストダンスはおまえと踊ってやる」
「いいえ、殿下。待ってなどおりませんわ。私の事は捨て置いて、あちらの可愛らしい方々のどなたかをお誘いになってあげてくださいまし」
アリーは、強気な態度で断ったのだけれど、そんな事全くお構いなしのダヴィデ殿下は、彼女の手首を掴んで中央へと引っ張って行った。
「なんだ?妬いてるのか?おまえとは卒業したら結婚するんだ。それまでの遊びには目をつむれ」
とんでもない勘違いをのたまって、笑うダヴィデ殿下。しかも全くダンスの型を取らないで、アリーの腰をつかむ。
「離してください!こんなのはダンスではありませんわ」
「うるさい!おまえは黙っていればいいんだ……それにしても細い腰だな。なかなかいいじゃないか」
禿げかけたおっさんのような言い方に、傍にいた私までもが鳥肌が立つ。
流石にブチ切れたらしい先生が、ツカツカとやって来て。ダヴィデ殿下をアリーから剥がした。
「いい加減にしなさい。あなたはいつになったらダンスが踊れるようになるんです?今日はもうやらなくて結構よ」
そして、アリアンナの正面に向き直った。
「私でよろしければ、どうかラストダンスの栄誉を頂けますか?」
普段はオネエさんな先生だけれど、真っ直ぐに立つ姿勢は美しくてカッコよかった。
「はい、喜んで」
アリーはニッコリと微笑み、先生の手を取る。
二人のダンスは、それはもう見事なものだった。他の生徒も踊る事を忘れて見入ってしまうほどだった。
「はあ、先生が助けて下さって良かった」
授業終了後、ほおっと息を吐く私同様、フランもほおぉっと息を吐いた。
「ホント。おかげで素晴らしいダンスを見ることが出来たわ」
「それは確かに。私、先生がちゃんと踊るのを初めて見たけれど、とても素敵だったわ。アリーと二人、まるで物語の一幕を見ているようだった」
再び息を吐く私にアリーが微笑む。
「私も。先生のエスコートがあまりにも素晴らしくて、いつもよりも上手に踊れたわ。嬉しかった。ダンスって楽しいのね。それに、お腹が空いてしまったわ」
小さく舌を出すアリーにフランがくらっとした。
「危ないわ。予想外なところで可愛い仕草は禁止よ、アリー」
「可愛い仕草って……フランはよくするわよ」
「え?私はしてないわ」
「しているわよ。ねえ、ランザ」
「しているわね。ただ、出している舌の面積が大分違っていたみたいだけれど」
そう言って私もちょろっと舌を出す。
「もう、ふたりして私の真似?をしないで。しかも私より可愛いって反則じゃない?」
フランもいつもより小さく舌を出した。
「ふふ、フランも可愛いわ」
そうして、ふざけ合いながら私たちは食堂へと向かった。
ただ、Aクラスは十数人ほどの人数しかいないので、同じく人数の少ないDクラスとの合同授業となってしまった。
「よりによってDクラスとだなんて」
フランがアリーのドレスのファスナーをしめながら呟く。
「心配してくれるの?私は大丈夫よ」
ドレスを着終わった私たちは、ホールへと向かった。
ホールの端へ寄って、授業が始まるのを待っていると、騒がしい一団がやって来た。
「うわぁ」
フランが嫌悪感丸出しで一団を見ている。アリーは大きな溜息と共に黙って見ていた。
騒がしい一団の中心にいたのはダヴィデ殿下だった。二人の女性の腰を抱き、後ろにも数人侍らせている。男性も二人ほど見受けられた。明らかにマナーがなっていない様子に、Aクラスの生徒は勿論、Dクラスのまともらしい数人も眉をひそめている。
「まるで、場末の娼館みたい」
何かの本で読んだ場面さながらの光景に少しだけ気分が悪くなる。これが本当に次の王となる男なのだろうか。ゲイブリエル殿下との差に呆気に取られてしまった。
先生が到着して、いよいよ授業が始まる。男性からのアプローチに応えて1曲踊る。それが今日の一連の流れだった。授業なので断る事は出来ないらしく、望まれれば応じなければいけなかったのが若干、不服ではあったけれど幸いにして、ダヴィデ殿下含めたあの下世話な三人には当たらなかった。
Dクラスの人であっても、一生懸命頑張っている人ばかりだったのでほっとした。
フランは三人のうちの一人に、一度誘われてしまっていた。踊っている間のフランの顔が可笑しくて笑うのを堪えるのが大変だった。
ダヴィデ殿下は、侍らせていた女性たちと順番に踊っていたが、その中の一人とは連続で踊っていた。本来ならば、婚約者でもない女性と連続で踊るなどあってはならない事なのだが、あくまでも授業だからなのか、先生も注意することはなかった。
ダンスとは名ばかりで、ただただ身体を密着させていただけの二人を見て、これはもう身体の関係にまで発展しているのでは?そう思えて仕方がなかった。
そして、いよいよラストダンス。このままアリーに何事も起こりませんようにと祈ったのも束の間、ダヴィデ殿下がアリーの元へと真っ直ぐに向かって行った。
「アリアンナ、待たせたな。ラストダンスはおまえと踊ってやる」
「いいえ、殿下。待ってなどおりませんわ。私の事は捨て置いて、あちらの可愛らしい方々のどなたかをお誘いになってあげてくださいまし」
アリーは、強気な態度で断ったのだけれど、そんな事全くお構いなしのダヴィデ殿下は、彼女の手首を掴んで中央へと引っ張って行った。
「なんだ?妬いてるのか?おまえとは卒業したら結婚するんだ。それまでの遊びには目をつむれ」
とんでもない勘違いをのたまって、笑うダヴィデ殿下。しかも全くダンスの型を取らないで、アリーの腰をつかむ。
「離してください!こんなのはダンスではありませんわ」
「うるさい!おまえは黙っていればいいんだ……それにしても細い腰だな。なかなかいいじゃないか」
禿げかけたおっさんのような言い方に、傍にいた私までもが鳥肌が立つ。
流石にブチ切れたらしい先生が、ツカツカとやって来て。ダヴィデ殿下をアリーから剥がした。
「いい加減にしなさい。あなたはいつになったらダンスが踊れるようになるんです?今日はもうやらなくて結構よ」
そして、アリアンナの正面に向き直った。
「私でよろしければ、どうかラストダンスの栄誉を頂けますか?」
普段はオネエさんな先生だけれど、真っ直ぐに立つ姿勢は美しくてカッコよかった。
「はい、喜んで」
アリーはニッコリと微笑み、先生の手を取る。
二人のダンスは、それはもう見事なものだった。他の生徒も踊る事を忘れて見入ってしまうほどだった。
「はあ、先生が助けて下さって良かった」
授業終了後、ほおっと息を吐く私同様、フランもほおぉっと息を吐いた。
「ホント。おかげで素晴らしいダンスを見ることが出来たわ」
「それは確かに。私、先生がちゃんと踊るのを初めて見たけれど、とても素敵だったわ。アリーと二人、まるで物語の一幕を見ているようだった」
再び息を吐く私にアリーが微笑む。
「私も。先生のエスコートがあまりにも素晴らしくて、いつもよりも上手に踊れたわ。嬉しかった。ダンスって楽しいのね。それに、お腹が空いてしまったわ」
小さく舌を出すアリーにフランがくらっとした。
「危ないわ。予想外なところで可愛い仕草は禁止よ、アリー」
「可愛い仕草って……フランはよくするわよ」
「え?私はしてないわ」
「しているわよ。ねえ、ランザ」
「しているわね。ただ、出している舌の面積が大分違っていたみたいだけれど」
そう言って私もちょろっと舌を出す。
「もう、ふたりして私の真似?をしないで。しかも私より可愛いって反則じゃない?」
フランもいつもより小さく舌を出した。
「ふふ、フランも可愛いわ」
そうして、ふざけ合いながら私たちは食堂へと向かった。
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