お姉様の代わりに悪役令嬢にされそうです

Blue

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公爵令嬢は冒険者

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「行って参ります」
「気を付けるのよ。ケガしないようにね」
「はい、お母様」

「お嬢様、今夜はぼたん鍋がよろしいですね」
家令が扉を開けながら私に言った。
「うん、わかったわ。ワイルドボア3頭くらいで足りる?」
「ええ、勿論。それだけあれば、屋敷の者全員に行き渡りますよ」
「ふふ、じゃあ行ってきます」

いかにも冒険者という出で立ちで、公爵家の門から出て街へ向かう。真っ直ぐな白金の髪を高い位置で結び、アクアマリンとペリドットの瞳で晴れ渡った空を見る。
「んんー、今日もいい天気」

公爵令嬢でありながら、冒険者をしている私はリリー・アヴァティーニ。名門アヴァティーニ公爵家の三女だ。そんな私が何故、冒険者などしているかというと、一人で生きていくためだ。

今年の冬には社交界デビューを控えている私。

 この国では16歳で成人となる。実際は18歳まで学校へ行くので、結婚は18歳以降というのが常なのだが、一応は16歳で大人だ。学業を飛び級で終わらせている私は、学校に行く必要はない。一人で生きるためのお金を貯めるには、一番手っ取り早い冒険者になること。

公爵家は長女のローズ姉様が、侯爵家の次男を婿にして継ぐことになったので安泰。

隣国に留学していたカメリア姉様も、留学先の国の公爵と婚約した。ここまで来れば、三女の私は割と自由にさせてもらえる。一応名家の娘なので、婚約打診の手紙をたくさんいただくが気が乗らない。

そんな私が何故、一人で生きて行こうとしているのか。それは、昔の小さなトラウマが、どうしても消えないから。

 まだ幼い頃、お茶会の席で紹介された侯爵令息がいた。あちらのご両親から是非にと来た話だったのだが、その令息に会って開口一番に言われた言葉が、根深く私の心に残っているのだ。

「なんで君の眼の色、片方ずつ違うの?気持ち悪い」

これにはうちの両親が激怒した。あちらの両親は泣いて謝罪したが、幼い私にとって、このセリフは実に辛いものだった。私という人間は気持ちの悪いモノなのだと、そう思わざるを得ない心境に陥ってしまった。

今考えれば小さな事。実際、今の私は気にしていないし、なんならこのオッドアイを気に入ってもいる。お父様とお母様の瞳を両方貰ったのだからと。そう考えられるようになったのは、大分成長してからだが。

そんなトラウマのせいで、結婚したいとは思えないようになったのだ。だからこそ、私は一人で生きていく決心をした。

ローズ姉様は、ずっと家に居ればいいと言ってくれているれど、流石にそれはないと思っている。


「こんにちは」
ギルドに入ると、受付のマリーさんが挨拶してくれた。
「こんにちは、何かいい依頼はありますか?」
「リリーちゃん向きなのは、そうねえ」

「すみません!緊急でお願いしたいのですが」
二人で話をしていると、慌てた様子で誰かがギルド内に入って来た。

「司祭様?まあ、どうされました?」
すぐ近くにある、教会の司祭様だった。マリーさんが話を聞く。

「突然で申し訳ありません。教会の裏手の森から、ワイルドボアが出てきたようなのです。森と教会の境を数頭、ウロウロしているのです。教会敷地内部に入ってしまいますと殺生が禁止されてしまい、下手をすれば街の中へと入ってしまいます。なんとしても今のうちに討伐をお願いしたいのです」

「ワイルドボア!」
私は思わず歓喜の声を上げてしまった。
「リリーちゃん、ワイルドボアをご所望なの?」
「はい、ぼたん鍋って言われたので」

「じゃあ、緊急クエストで上げておくから、行っていいわよ」
「わかりました。では司祭様、行きましょう」
「はい、お願いします」
司祭様を連れて、ギルドを出た。しかし、行きも走ってきた司祭様に、また走らせるのは忍びない。

「司祭様、先に行きますね」
私は、強化魔法で一気に加速する。
「お願いします」
司祭様の声を背に、猛ダッシュをかけた。

教会の裏手に回ると、そこには2頭のワイルドボアがいた。
『一気にやってしまおう』
両手に魔力を込める。まだこちらには気付いていない2頭に向けて魔力を放った。大きな氷の槍が見事に2頭の脳天を貫通する。そのまま、パキパキと頭部だけを凍らせた。

「よし、次は……」
気配を探ろうとした瞬間、横の茂みが大きく揺れ、1頭のワイルドボアが飛び出してきた。
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