【外伝】 白雪姫症候群 ースノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

文字の大きさ
8 / 126
第1章 新人編

第1話ー⑤ 初任務

しおりを挟む
 翌日、キリヤたちは再び同じ街にやってきた。

「今日こそ、解決できそうかな?」

 ゆめかはそう言いながら、笑顔でキリヤたちに問う。

「頑張ります……」

 鬼教官が出てくる前に、早く解決しなくては――キリヤは心の中でそう思ったのだった。

 そしてキリヤたちは再びあの墓地へと向かう――。



「じゃあ昨日と同じ時間に同じ場所で。頑張って!」

 そう言ってゆめかは研究所に戻っていった。

「よし、行こうか」

 キリヤたちは昨日訪れた墓地まで歩いて向かう。

「そういえば昨日、優香が何を見たのかを僕は結局聞けていないんだけど?」

 キリヤは歩きながら、優香に問う。


「あーそうだったね」

「僕がお化けに襲われているとき、優香は何を見ていたの?」

「あの子がどんな能力を使うかを見ていただけ。あのお化けは自ら生成しているのか、それとも幻を作り出しているのか」

「結局、どっちだったの?」

「幻だった。だからたぶんあの子は幻影使いなんだと思う。今まで誰にもばれずにあんなことができたのは、遠距離で幻を見せていたからってこと」

「やっぱりそうなんだ……」


 そして優香の顔は真剣になる。

「犯罪行為って初めてやる時は勇気がいるものなんだけど、何度も繰り返すうちに感覚がマヒして、それが当たり前になってしまったりするのね。だからあの子が道を踏み外さないように、早いうちにこの事件は解決しなくちゃいけない」
「そう、だね……」

 そう。それが僕たちの仕事だ。能力を持った子供が変な道に進まないように、その道しるべになるため、僕たちは活動しているんだ――。

 そう思ったキリヤは小さく頷いた。

「今日こそ、あの子にこの事件を止めさせないとね」
「うん。……でも止めさせるって言っても、どうするの優香? 簡単ではなさそうだけど」

 キリヤが困った顔でそう問うと、優香は笑顔で答える。

「まあ任せてよ」

 キリヤは優香の表情に首をかしげる。

 それから準備があると言って、優香はどこかへ行ってしまった。

 キリヤは時間を潰す為、近くの児童公園で優香の帰りを待った。

「一体、どこで何をしているんだろう……」

 そして優香は1時間経っても帰ってこなかった。

「はあ」

 ベンチに座っているキリヤは、静かに空を眺める。

「いい天気だな……。こんな日は施設の屋上でお昼寝すると気持ちがいいんだよね」

 そういえば施設のみんなは元気かな。卒業してからもう5か月か――。

 そう思い、あれから1度も施設に帰っていないことに気が付くキリヤ。

 訓練に追われているうちに、こんなに時間が経っていたなんてね。先生は元気にしているかな。まゆおと真一は仲良くできているかな。結衣は相変わらずアニメばっかり観ているのかな。そういえば、マリアは今年卒業の年だったよね。どんな進路に決めたんだろう。

 今日まで必死に働いてきたキリヤは施設にいたみんなの顔を久しぶりに思い出す。そしてかわいい妹の顔が頭をよぎった。

「マリアは僕と離れて、さみしがっていないかな……」

 キリヤは妹のマリアのことを思い出し、急にさみしい気持ちになる。

 こんなにマリアと会わないのは、初めてかもしれない――。

「はあ」

 そのさみしさから、ため息がこぼれるキリヤ。

 キリヤが一人、悲しみに暮れていると近くで子どもの声がした。

「もう下校の時間か。……それにしても優香はどこにいったのかな」

 キリヤはなかなか戻ってこない優香の行方が気になっていた。

 今頃、どこで何をしているんだろう。僕もついていけばよかったかな――。

「あ、あの子……」

 児童公園に一人の少年がやってきた。その少年はキリヤと優香が追っている幻影使いの少年だった。

「今日は一人なんだ」

 そしてその少年はしょんぼりとした表情で一人、ブランコに座っていた。

 その様子が気になったキリヤは、少年に声を掛ける。

「元気がないみたいだけど、どうしたの?」

 声を掛けた時にキリヤは気が付かなかったが、いきなり知らない大人が声をかけてくるというのは小学生からしたら恐怖の沙汰で――

「な、なんですか!? 僕を誘拐しても何もないですよ!」

 少年は怯えながら、キリヤにそう言った。

「ゆ、誘拐!? そんなつもりじゃ……」
「家もそんなにお金持ちじゃないし……それに、僕なんて誘拐してもお金になりません!!」
「だ、だから違うって!」

 キリヤは誘拐犯であることを全力で否定したが、少年には伝わらなかったようだ。少年は怪しい人間を見る、不信の眼差しをキリヤに向けていた。

「そんな目で見ないでくれよ……」

 昨日に続き、今日も怪しい人間と間違われたキリヤは、そう言いながら肩を落とした。

「じゃあ、僕はこれで――うわっ」

 少年は足早にその場を後にしようとするが、慌てて足がもつれ、派手に躓き、地面に思いっきり倒れこむ。

(かなり豪快に転んだけど、大丈夫かな……)

 キリヤはその少年をじっと見つめた。しかしなかなか起き上がらない少年のことが心配になったキリヤは急いで駆け寄る。

「ね、ねえ大丈夫!? 変なところぶつけてない? 意識はしっかりしてる??」

 すると少年は身体を起こし、涙目でキリヤに答える。

「大丈夫だもん。痛くなんて……うぅ……」

 少年の膝には擦り傷ができていた。

「わあ。痛そう……。ちょっと座って、すぐに治すから」

 キリヤは少年に近くのベンチへ座るよう言うと、少年は素直に従った。

 それからキリヤは少年の傷口に手をかざした。すると、先ほどまですり傷があったところは少しずつ治っていく。

「すごい……。お兄さん、何者?」
「別にすごくなんかないよ。……よし、これで塞がった。もう痛くないね?」

 少年は塞がった傷口を触ったり、膝を動かして確認すると、

「大丈夫みたい! ありがとう、お兄さん!」

 そう言って笑顔になった。

「やっと笑ってくれたね!」

 キリヤはようやく見られた少年の笑顔にほっとする。

 それからキリヤはベンチに座って、少年の話を聞いていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

近すぎて見えない物

あんど もあ
ファンタジー
エルリック王子と一夜を共にした男爵令嬢。エルリックの婚約者シルビアが、優しく彼女に言った一言とは。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...