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第1章 新人編
第1話ー⑨ 初任務
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キリヤは裕二と共に裕二の家を目指していた。そしてその道中、裕二は終始無言で俯きながら歩いていた。
それからキリヤは裕二と出会った児童公園が見えた時、
「ちょっと休憩しようか」
そう言ってから公園のベンチに向かい、そこに腰掛けた。
ベンチに座ってもなお、裕二は一言も言葉を口にせず――。
「ずっと黙っているけど、どうしたの? もうあいつらは、きっと裕二にひどいことはしないさ」
キリヤはそう言いながら、裕二に笑顔を向けた。
すると、裕二はゆっくりと口を開き、
「ごめんね、お兄さんを巻き込んで……。全部、僕のせいなんだ」
小さな声でそう言った。
「……ねえ。聞かせて、君の気持ちを」
「うん。……昨日、お兄さんが言っていたよね。墓地の怪奇事件のことを調べているって。その犯人は僕なんだ……」
裕二は勇気を振り絞って、キリヤに真実を告げた。
そんな裕二にキリヤは微笑みながら答える。
「うん。知っていたよ。だから僕は裕二に声を掛けたんだ」
それを聞いて驚く裕二。しかしすぐに冷静になる。
「そうだよね。そうじゃないと、お兄さんみたいなすごい人が、僕に声なんてかけるはずないよね」
「僕は別にすごくなんてないよ。ただの能力者さ」
「すごいよ! 僕なんて、人を驚かすことしかできないのに」
そう言って俯く裕二。
「……ねえ、なんで裕二はあの墓地で人を怖がらせているんだい?」
「意味なんてない。ただの八つ当たり。お母さんが僕のことを構ってくれないから、それに腹が立ってあんなことをしていただけ」
「そうなんだね」
思った通り、裕二は妹への嫉妬心からあの事件を起こしていたんだな――。
そう思いながら、裕二を見つめるキリヤ。
「僕だって、お母さんともっと一緒にいたいのに……。でも仕方がないことないことなんだよね。だって妹はまだ赤ちゃんなんだからさ」
そしてキリヤは裕二のこの言葉から、昔の記憶がよみがえる。
『マリアは赤ちゃんだから、僕が我慢しなくちゃいけないんだよ』
4歳のキリヤは部屋の隅っこに隠れながら、父にそう言った。
『別に我慢なんてしなくてもいいんじゃないか? キリヤはママが大好きなんだろう? だったら、我慢せずに甘えたらいいんだよ』
『でも僕にばっかり構っていたら、今度はマリアが……』
『ママがマリアに構えないなら、その分キリヤがマリアを構えばいい。キリヤがこの世界で一番にマリアを好きでいたらいいんだよ。そうしたら、解決だ』
笑いながら、父はキリヤに告げる。
『僕がマリアを一番に好きでいればいいんだ……。わかった! 僕はこの世界の誰よりもマリアのことを好きでいることにする!』
――そうか。それから僕は、マリアのことを大切に思うようになったのか。
「お兄さん?」
キリヤのはっとした顔を見て、心配そうにのぞき込む裕二。
そしてキリヤは、自分があの時父に言ってもらった言葉を裕二に贈った。
「いいかい、裕二。お母さんに甘えたいのなら思いっきり甘えたらいいんだよ。それでもし、お母さんが妹のことを構えなくなっても、裕二がこの世界で一番、妹のことを好きでいれば、大丈夫だから」
キリヤは優しい笑顔で裕二にそう告げる。
「この世界で一番……」
「そう。僕はそう思うことにした。そうしたら、辛くなくなったよ」
「……わかった。僕もそうする! 妹を世界で一番好きでいるよ!」
裕二はそう言って笑った。
その笑顔を見たキリヤは、きっと裕二はもう大丈夫だと悟った。
「じゃあ、僕はそろそろ帰らないと。お母さんと妹が待っているからね」
「そうだね」
「ありがとう、お兄さん! またね!!」
そう言いながら、裕二は走っていってしまった。
「またね……か」
その言葉にキリヤはさみしさを感じる。
「ちゃんとお別れしなくてもいいの?」
「ゆ、優香!?」
ベンチの裏から、突然現れた優香にキリヤは驚く。
「せっかくできた友達なのに、そんな別れからはさみしいじゃない?」
「そうだね」
「ほら、早く追いかけなって」
優香はそう言って、キリヤの背中を押した。
「ありがとう」
そしてキリヤは裕二を追いかけた。
「すぐに追いつくといいけど」
それからキリヤは家に入ろうとする裕二を見つけ、声を掛ける。
「裕二! 頑張ってね!! ありがとう、バイバイ!」
そう言って、キリヤは裕二に手を振った。
そして裕二も手を振り返して、家の中に入っていった。
「これでよかったのかな」
「よかったんじゃない? じゃあ私達も帰ろうか」
その後、キリヤは優香と共にこの街を去った。
それからキリヤは裕二と出会った児童公園が見えた時、
「ちょっと休憩しようか」
そう言ってから公園のベンチに向かい、そこに腰掛けた。
ベンチに座ってもなお、裕二は一言も言葉を口にせず――。
「ずっと黙っているけど、どうしたの? もうあいつらは、きっと裕二にひどいことはしないさ」
キリヤはそう言いながら、裕二に笑顔を向けた。
すると、裕二はゆっくりと口を開き、
「ごめんね、お兄さんを巻き込んで……。全部、僕のせいなんだ」
小さな声でそう言った。
「……ねえ。聞かせて、君の気持ちを」
「うん。……昨日、お兄さんが言っていたよね。墓地の怪奇事件のことを調べているって。その犯人は僕なんだ……」
裕二は勇気を振り絞って、キリヤに真実を告げた。
そんな裕二にキリヤは微笑みながら答える。
「うん。知っていたよ。だから僕は裕二に声を掛けたんだ」
それを聞いて驚く裕二。しかしすぐに冷静になる。
「そうだよね。そうじゃないと、お兄さんみたいなすごい人が、僕に声なんてかけるはずないよね」
「僕は別にすごくなんてないよ。ただの能力者さ」
「すごいよ! 僕なんて、人を驚かすことしかできないのに」
そう言って俯く裕二。
「……ねえ、なんで裕二はあの墓地で人を怖がらせているんだい?」
「意味なんてない。ただの八つ当たり。お母さんが僕のことを構ってくれないから、それに腹が立ってあんなことをしていただけ」
「そうなんだね」
思った通り、裕二は妹への嫉妬心からあの事件を起こしていたんだな――。
そう思いながら、裕二を見つめるキリヤ。
「僕だって、お母さんともっと一緒にいたいのに……。でも仕方がないことないことなんだよね。だって妹はまだ赤ちゃんなんだからさ」
そしてキリヤは裕二のこの言葉から、昔の記憶がよみがえる。
『マリアは赤ちゃんだから、僕が我慢しなくちゃいけないんだよ』
4歳のキリヤは部屋の隅っこに隠れながら、父にそう言った。
『別に我慢なんてしなくてもいいんじゃないか? キリヤはママが大好きなんだろう? だったら、我慢せずに甘えたらいいんだよ』
『でも僕にばっかり構っていたら、今度はマリアが……』
『ママがマリアに構えないなら、その分キリヤがマリアを構えばいい。キリヤがこの世界で一番にマリアを好きでいたらいいんだよ。そうしたら、解決だ』
笑いながら、父はキリヤに告げる。
『僕がマリアを一番に好きでいればいいんだ……。わかった! 僕はこの世界の誰よりもマリアのことを好きでいることにする!』
――そうか。それから僕は、マリアのことを大切に思うようになったのか。
「お兄さん?」
キリヤのはっとした顔を見て、心配そうにのぞき込む裕二。
そしてキリヤは、自分があの時父に言ってもらった言葉を裕二に贈った。
「いいかい、裕二。お母さんに甘えたいのなら思いっきり甘えたらいいんだよ。それでもし、お母さんが妹のことを構えなくなっても、裕二がこの世界で一番、妹のことを好きでいれば、大丈夫だから」
キリヤは優しい笑顔で裕二にそう告げる。
「この世界で一番……」
「そう。僕はそう思うことにした。そうしたら、辛くなくなったよ」
「……わかった。僕もそうする! 妹を世界で一番好きでいるよ!」
裕二はそう言って笑った。
その笑顔を見たキリヤは、きっと裕二はもう大丈夫だと悟った。
「じゃあ、僕はそろそろ帰らないと。お母さんと妹が待っているからね」
「そうだね」
「ありがとう、お兄さん! またね!!」
そう言いながら、裕二は走っていってしまった。
「またね……か」
その言葉にキリヤはさみしさを感じる。
「ちゃんとお別れしなくてもいいの?」
「ゆ、優香!?」
ベンチの裏から、突然現れた優香にキリヤは驚く。
「せっかくできた友達なのに、そんな別れからはさみしいじゃない?」
「そうだね」
「ほら、早く追いかけなって」
優香はそう言って、キリヤの背中を押した。
「ありがとう」
そしてキリヤは裕二を追いかけた。
「すぐに追いつくといいけど」
それからキリヤは家に入ろうとする裕二を見つけ、声を掛ける。
「裕二! 頑張ってね!! ありがとう、バイバイ!」
そう言って、キリヤは裕二に手を振った。
そして裕二も手を振り返して、家の中に入っていった。
「これでよかったのかな」
「よかったんじゃない? じゃあ私達も帰ろうか」
その後、キリヤは優香と共にこの街を去った。
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