【外伝】 白雪姫症候群 ースノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第1章 新人編

第2話ー⑤ 風船少年

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 ――翌日。朝食を終えたキリヤたちは今夜の警備任務のためにキリヤの部屋で作戦会議をしていた。

「とりあえずパーティが始まったら、私達はなるべく太陽坊ちゃまの近くにいよう。それが一番手っ取り早そう」
「……でもあの太陽くんが、おとなしく僕たちの傍にいるかな」

 キリヤがそう言うと、優香は苦笑いをした。

「それもそうだね……。結局、それが一番の問題。能力が発動しなかったとしても、目を離したすきに誰かれ構わずにいたずらをする可能性は否定できない」

 そしてキリヤたちは頭を悩ませる。

「どうしたら、太陽くんはいたずらをしなくなるんだろう……」

 それからキリヤたちはしばらくそのことを考えたが、結局答えは出なかった。

「何か起こりそうだったら、私達がしらみ潰しにしていくしかなさそうね」
「そうだね。それが最善かもしれない」
「じゃあ特に作戦ってわけじゃないけど、そういう段取りでいこうか」

 そして立ち上がる優香。

「どこ行くの?」
「着替えだよ。今日のパーティはドレスコードがあったでしょ? ほらスーツケースに白銀さんが用意してくれたじゃない」
「ああ、そうだったね」
「じゃあまたあとでね!」

 そう言って優香はキリヤの部屋を出て行った。

「さてと、僕も着替えを――これを僕が……!? なんだか恥ずかしいな」

 そしてパーティの時間まで、キリヤたちはそれぞれ準備を始めた。


 ***


 同時刻、『グリム』基地内、情報担当である龍崎りゅうざき拓真たくまが使用しているモニタールーム。そこには初美はつみと拓真の姿があった。

「今頃、キリヤたちは警護任務中かのう」

 初美は机に頬杖をつきながらそう呟く。

「今回の任務は難易度もそんなに高くないですし、あの2人なら安心ですね」

 PCの画面を見たまま、拓真はそう答えた。

「そういえば、最近隊長たちが追っている組織ってキリヤ君たちの警護しているパーティ会場の近くに潜伏しているとかって噂があるみたいですよ」

 そう言って初美にPCを見るように指をさす拓真。

 拓真は戦闘員ではなく情報収集に特化した隊員で、PCを使ってあらゆる方面から情報を収集するプロフェッショナルである。

「ほう、どれどれ」

 初美はそう言って、拓真のPCを覗き込む。

「このあたりに、潜伏先があるみたいですね」

 拓真はマウスのカーソルを合わせながらそう言った。

「……何も起こらなければ良いがのう」

 そして心配そうに画面を見つめる初美だった。


 ***


 完全に太陽が沈んだ頃、御茂山おもやま邸には多くの人が集まり出した。

 足を運ぶ人たちは、全員が綺麗な衣装に身を包み、優雅に会場に入っていった。

 そんな浮世離れした様子をキリヤと優香は、会場の入り口でぽかんとしながら見ていた。

 キリヤと優香も一応ドレスコードに会った服装をしているものの、やはり来場客の人たちのような華やかさはなかった。

「僕たちって、まだまだ垢抜けていないんだね」
「そうみたいね……。井の中の蛙だったよ」

 それからキリヤたちは、しばらくその場で放心状態だった。



 パーティの開始時間になり、キリヤたちは太陽の元へ向かった。

 始まる直前まで母親と楽しそうに過ごしている様子だった太陽は、母親がその場を離れた時にとても悲しい表情をしていた。

「やっぱりさみしいみたいね」

 優香は太陽を見ながら、そう呟いた。

「僕たちがなるべくそばにいてあげよう。嫌がられても、絶対に一人にしちゃだめだ」
「うん」

 そして太陽の隣に行くキリヤたち。

「何?」

 急にやってきたキリヤたちに、少々不機嫌そうな顔をしながら太陽はそう言った。

「退屈そうだなと思ってさ」

 キリヤはそう言いながら、太陽を覗き込むように微笑む。

「まあ庶民にはわからないよね。このパーティの楽しさはさ」

 太陽は嫌味っぽく、キリヤにそう告げた。

 そしてキリヤはそんな太陽に笑顔で、

「そうだね」

 と答えて隣に立った。

「鬱陶しいなあ……」

 そう呟きつつも、太陽はキリヤたちの傍を離れずにいたのだった。

 それからパーティの間中、キリヤたちはずっと太陽の隣にいた。

 そしてキリヤたちが隣にいたからなのか、それとも両親に迷惑を掛けたくないからなのかはわからないが、太陽が誰かにいたずらを仕掛けることはなかった。

 ただつまらなそうに壁にもたれたまま、太陽は静かに過ごしていた。

 そんな太陽を見て、このまま何も起こることもなく、平和にパーティが終わるだろうとキリヤがそう思った時――

「え!?」「な、何!??」「何も見えないぞ!!」

 照明が落ちて、視界はさえぎられた。

「て、停電!? 優香、太陽くんは……?」

 突然の停電に焦りながらキリヤがそう尋ねると、

「太陽坊ちゃんなら、そこに……ってあれ。どこにもいない!?」

 優香は自分の隣にいるはずの太陽を見失っていた。

「じゃあこの停電は、太陽くんの仕業、なの……?」

 キリヤはだんだんと暗闇に目が慣れて、周りが見えるようになった。

「もうこのあたりにはいないみたいだね。急いで太陽くんを探そう! まだそんなに遠くには行っていないはずだ!」
「う、うん。わかった!」

 それからキリヤたちは、手分けして太陽を捜索することにした。
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