【外伝】 白雪姫症候群 ースノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第2章 魔女たちの暗躍編

第6話ー⑫ 訪問者

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「あ……僕から、もう一つだけ聞かせて」

 キリヤはそう言って一歩前に出る。

「ああ、いいぞ」
「君は、破道はどう慎太しんたって少年のことは知ってる?」

 キリヤがローレンスの顔をまっすぐに見てそう言うと、ローレンスは腕を組み、

「――うーん、知らねえな。キキの実験に俺は関わっていなかったからさ」

 首をかしげながらそう答えた。

「そっか」

 同じ組織にいても、すべての情報を共有しているわけじゃないんだ――

 そう思いながら、肩を落とすキリヤ。

「そいつがどうしたんだ?」
「うん……『林檎の雫』を飲まされた僕の友人さ」

 キリヤはそう言って拳を握る。

「それは、悪いことをしたな。……すまなかった」

 そう言って頭を下げるローレンス。

「謝って許されることじゃないんだろうけど、俺にはただ仲間のした不当な行いを謝罪することしかできねえ……」

 そんなローレンスを見たキリヤは、彼がキキやほたるとは違う感覚を持っているように思った。

「――いいよ。君が悪いわけじゃないからね」

 そう言ってキリヤは笑顔を作り、ローレンスの方を見た。

「お前、友達思いなんだな。……そうだ、友達を言えば! 剛はどうしてる? お前の友人なんだろ??」
「あ、うん。今頃部屋に籠って受験勉強かな。剛は教師を目指しているからね」
「憧れの先生と同じ教師ってか?」

 ローレンスはニヤリと笑いながらそう言った。

 もしかして剛から、暁先生のことを聞いたのかな――?

 そう思ったキリヤは、

「……そうだよ。その先生は僕にとっての憧れでもあるんだけどね」

 笑顔でそう答える。

「へえ。お前たちが言う、その『先生』に会ってみたいもんだな。そうしたら、俺も何かが変わる気がする」

 そう言って、ふっと笑うローレンス。

「ほう……うん。いいな、それ! 君もあの施設に行ってみたらいい。きっと暁君から得るものは大きいはずだからね!」

 所長の唐突な提案に目を丸くするキリヤとローレンス。

「い、いいんですか!? だって以前施設を襲撃した組織の仲間なんですよ? 今の施設の生徒たちに影響があるんじゃ……」
「大丈夫さ! 暁君が生徒たちを守ってくれるだろうし、それに――」

 ニヤリと笑う所長。

 それに……? 一体、所長は何を考えているのかな――と所長の笑顔を見ながらそう思うキリヤだった。

「じゃあ、今日はこの辺にしよう。ありがとう、ローレンス君」
「礼を言われることは何もしてないよ」
「でもありがとう、だ」

 そう言って所長はローレンスに微笑んだ。

「お、おう……」

 それからキリヤと所長が隔離部屋を後にしたのだった。



 ――『グリム』基地内、廊下にて。

 キリヤと所長は、ミーティングルームを目指して歩いていた。

 そして、ローレンスは素直に何でも話してくれたな――そう思いながら、先ほどまでの出来事を思い返す。

 それから最後に所長が言っていたことを思い出したキリヤは、

「あの、さっきの言葉の続きって……?」

 前を歩く所長にそう尋ねた。

「ああ、施設の件だな。実は、剛君にはそろそろ施設に戻ってもらおうかなと思っていてね」
「え? どうして急にそうなったんですか?」

 そう言って首をかしげるキリヤ。

「……君も彼に自分のことを隠すのが難しくなってきているだろう? 今回のことできっと彼は何か思うところがあるはずだ」
「――はい」

 キリヤはそう言って、俯く。
 
「能力者だと言っても、剛君は一般人だ。彼をこれ以上巻き込まない為に、これは必要な措置だと思うけど……どうだい?」

 確かに所長の意見も一理ある。これ以上剛が研究所にいれば、きっと僕の仕事に気が付くかもしれない。
 そして仲間想いの剛のことだから、自分も手伝うと言い出すだろう。やっと目を覚まして、また夢を追おうとしている剛の邪魔を僕はしたくはない――

 そう思ったキリヤは「うん」と頷き、

「僕も賛成です。それに先生の元にいたほうが、きっと剛も学べることが多いと思いますし」

 笑顔でそう言った。

「じゃあ、さっそく剛君の件は伝えておくよ。それとローレンス君のことは、検査を終えたら伝えるとしよう」
「はい、よろしくお願いします」
「ああ」

 それからキリヤたちはミーティングルームに戻って行ったのだった。



 研究所に訪れた『エヴィル・クイーン』に所属する子供たち。そして明らかになった事実。

 魔女がなぜ僕を狙っていたのかという理由はよくわからなかったけれど、その魔女はもういない。だからそれは解決する必要のないことなのかもしれないね。

 そして今回の件が解決したことで、今後は少しでも能力者の事件が減ればいいなと僕は思っている――。
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