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第2章 変動
第11話ー④ 旅立ち
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演奏会当日。奏多の朝練に付き合いつつ、今日のスケジュールを確認していた。
「よし。タイムスケジュールはこれで大丈夫そうだな」
「先生、今日までお手伝いをしてくれて助かりました。ありがとうございます!」
「これくらいなんてことないさ。でも今日の演奏で奏多の気持ちがみんなに届くといいな」
「そうですね! それと、あの件は……」
心配そうに問いかける奏多。
「ああ。もちろん、OKだ!」
「よかった……」
俺の言葉で奏多はほっとしていた。
奏多が俺に依頼したこと、それは研究所の剛にも自分の音を届けたいということだった。
俺は奏多から依頼を請け、すぐに研究所にいる所長に連絡を取った。
所長から許可を得た俺は、それからどうやって剛に届けるかを考えた。そしてその結果、ライブ配信という形を取ることにした。
もちろんこのライブ配信は俺一人の力では実現不可能だったため、研究所にいる白銀さんも協力してくれることになった。
「きっと剛も喜ぶと思うよ。素敵な提案をありがとな、奏多」
「剛とは付き合いも長いですし、ちゃんと感謝を伝えたかったので」
「そうか……奏多の思いは、きっと剛に届くよ」
「そうなるように、ありったけの想いを込めて演奏しますね」
そう言って、万遍の笑みを見せる奏多。
そして俺のポケットの中にあるスマートフォンが振動した。
スマホを手に取り、画面に目を落とすと、
――着信 白銀さん
と表示されていた。
「ちょっと、電話してくる」
そして俺はその場を離れてから、画面をタップし、その電話に応じた。
「おはよう、暁先生。こっちの準備はいつでもOKだよ」
「おはようございます! 白銀さん、今回のこと、本当にありがとうございます。忙しいのにすみません……」
「ふふふ。いいのだよ。私は君の手伝いができて、大満足さ。じゃあ、また始めるときに連絡をくれると助かる」
「わかりました」
「今日もいい日にしよう、じゃあまた」
そして電話が切れた。
「いい日に、か。そうだな!!」
白銀さんの言う通り、今日も素敵な一日にしよう。
俺は白銀さんの言葉を聞き、そう思ったのだった。
それから俺は奏多のところに戻り、演奏会の最終チェックをしたのだった。
その日の午後。シアタールームに暁と生徒たちは集まっていた。
俺は全員が着席したのを確認して、口を開く。
「さて、今日は今年度最後のレクリエーションになる。最高に楽しんでくれ」
そう俺が言うと、奏多が後ろの扉から登場した。
その顔はほんのりとお化粧をしており、真っ白なステージ衣装を身にまとった奏多は堂々とした雰囲気で、ステージに向かう通路をまっすぐに歩いている。
今この場所にいる全員が、そんな奏多の姿に釘付けになっていた。
そして奏多は、生徒たちの前に立った。
そのタイミングで俺は白銀さんにスマホでメッセージを送る。
そして俺は白銀さんからの返事を確認すると、構えていたビデオカメラの録画ボタンを押した。
「今日はみんなに感謝の気持ちと、これからの未来を願って、私から演奏のプレゼントです。みんな、楽しんでいってくださいね!」
そう言ってから奏多はバイオリンを構え、そしてその音を奏で始める。
演奏する奏多の姿は、とても優雅で楽しそうだった。
そんな奏多が奏でる音は、とても美しく、そして幸せな音色。
ありがとうの気持ちと、未来への期待を感じさせてくれる希望の音だった。
やっぱり奏多のバイオリンは、誰かを幸せにできる音だ。
俺は奏多の演奏を聴きながら、確かにそう感じた。
研究所で剛に奏多の演奏動画を見せるゆめか。
そしてその演奏を聴きながら、剛に微笑みかける。
「ふふ。これはとても多幸感がある音だ。剛君、君もそう思わないかい?」
しかしゆめかがそう問いかけても、剛が何か反応することはなかったが、でもほんの少し、剛の口角が上がったようにも見えた。
全ての演奏を終え、シアタールームでは大きな拍手が響き渡った。
「本当にありがとうございました!」
そして奏多は満開の笑顔でみんなにお礼を告げ、頭を下げた。
演奏を聴いていた生徒たちの顔はとても幸せそうだった。
それはきっと奏多の思いが、生徒たちに届いた証なんだろうと思い、俺は嬉しくなって微笑んだ。
それからポケットのスマホが振動する。そこに目を向けると、それは白銀さんからのメッセージだった。
「きっと剛君にも届いたよ」
それを見た俺は、安堵の気持ちと剛に届いた喜びで口元が緩んだ。
「よかった……」
奏多の思いがちゃんとみんなに伝わったと思うと、俺は自分のことのように嬉しく思ったのだった。
「よし。タイムスケジュールはこれで大丈夫そうだな」
「先生、今日までお手伝いをしてくれて助かりました。ありがとうございます!」
「これくらいなんてことないさ。でも今日の演奏で奏多の気持ちがみんなに届くといいな」
「そうですね! それと、あの件は……」
心配そうに問いかける奏多。
「ああ。もちろん、OKだ!」
「よかった……」
俺の言葉で奏多はほっとしていた。
奏多が俺に依頼したこと、それは研究所の剛にも自分の音を届けたいということだった。
俺は奏多から依頼を請け、すぐに研究所にいる所長に連絡を取った。
所長から許可を得た俺は、それからどうやって剛に届けるかを考えた。そしてその結果、ライブ配信という形を取ることにした。
もちろんこのライブ配信は俺一人の力では実現不可能だったため、研究所にいる白銀さんも協力してくれることになった。
「きっと剛も喜ぶと思うよ。素敵な提案をありがとな、奏多」
「剛とは付き合いも長いですし、ちゃんと感謝を伝えたかったので」
「そうか……奏多の思いは、きっと剛に届くよ」
「そうなるように、ありったけの想いを込めて演奏しますね」
そう言って、万遍の笑みを見せる奏多。
そして俺のポケットの中にあるスマートフォンが振動した。
スマホを手に取り、画面に目を落とすと、
――着信 白銀さん
と表示されていた。
「ちょっと、電話してくる」
そして俺はその場を離れてから、画面をタップし、その電話に応じた。
「おはよう、暁先生。こっちの準備はいつでもOKだよ」
「おはようございます! 白銀さん、今回のこと、本当にありがとうございます。忙しいのにすみません……」
「ふふふ。いいのだよ。私は君の手伝いができて、大満足さ。じゃあ、また始めるときに連絡をくれると助かる」
「わかりました」
「今日もいい日にしよう、じゃあまた」
そして電話が切れた。
「いい日に、か。そうだな!!」
白銀さんの言う通り、今日も素敵な一日にしよう。
俺は白銀さんの言葉を聞き、そう思ったのだった。
それから俺は奏多のところに戻り、演奏会の最終チェックをしたのだった。
その日の午後。シアタールームに暁と生徒たちは集まっていた。
俺は全員が着席したのを確認して、口を開く。
「さて、今日は今年度最後のレクリエーションになる。最高に楽しんでくれ」
そう俺が言うと、奏多が後ろの扉から登場した。
その顔はほんのりとお化粧をしており、真っ白なステージ衣装を身にまとった奏多は堂々とした雰囲気で、ステージに向かう通路をまっすぐに歩いている。
今この場所にいる全員が、そんな奏多の姿に釘付けになっていた。
そして奏多は、生徒たちの前に立った。
そのタイミングで俺は白銀さんにスマホでメッセージを送る。
そして俺は白銀さんからの返事を確認すると、構えていたビデオカメラの録画ボタンを押した。
「今日はみんなに感謝の気持ちと、これからの未来を願って、私から演奏のプレゼントです。みんな、楽しんでいってくださいね!」
そう言ってから奏多はバイオリンを構え、そしてその音を奏で始める。
演奏する奏多の姿は、とても優雅で楽しそうだった。
そんな奏多が奏でる音は、とても美しく、そして幸せな音色。
ありがとうの気持ちと、未来への期待を感じさせてくれる希望の音だった。
やっぱり奏多のバイオリンは、誰かを幸せにできる音だ。
俺は奏多の演奏を聴きながら、確かにそう感じた。
研究所で剛に奏多の演奏動画を見せるゆめか。
そしてその演奏を聴きながら、剛に微笑みかける。
「ふふ。これはとても多幸感がある音だ。剛君、君もそう思わないかい?」
しかしゆめかがそう問いかけても、剛が何か反応することはなかったが、でもほんの少し、剛の口角が上がったようにも見えた。
全ての演奏を終え、シアタールームでは大きな拍手が響き渡った。
「本当にありがとうございました!」
そして奏多は満開の笑顔でみんなにお礼を告げ、頭を下げた。
演奏を聴いていた生徒たちの顔はとても幸せそうだった。
それはきっと奏多の思いが、生徒たちに届いた証なんだろうと思い、俺は嬉しくなって微笑んだ。
それからポケットのスマホが振動する。そこに目を向けると、それは白銀さんからのメッセージだった。
「きっと剛君にも届いたよ」
それを見た俺は、安堵の気持ちと剛に届いた喜びで口元が緩んだ。
「よかった……」
奏多の思いがちゃんとみんなに伝わったと思うと、俺は自分のことのように嬉しく思ったのだった。
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