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第4章 過去・今・未来

第28話ー③ 繋がる絆

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「まあこんな感じかな」

 そう言いながら、微笑む白銀さん。

「所長とはそんなに長い付き合いだったんですね。それに『白雪姫症候群スノーホワイト・シンドローム』の由来って」
「ああ。施設でつけてもらった『シロ』の原型である『白雪姫』から取ったんだ。あの能力でみんなと出会い、私も変われたからね」
「そうなんですね」

 俺は笑いながら、白銀さんにそう言った。

 そしてスッキリとした顔で白銀さんは背伸びをする。


「ああ……でもやっと話せた! ずっとずっと言いたかったけど、歴史が変わってしまうといけないから、我慢していたんだよ。もう喉のこの辺まで言いかけてしまったときもあって、それはもう大変だったんだからね!」

「ははは。それは苦労を掛けましたね」

「そういえば、暁先生はずっと敬語だよね? 別にシロの時みたいに、気軽に話してくれて構わないんだよ?」

「確かに……でもなんか、白銀さんとはずっと敬語だったから、なんだか今更恥ずかしいなって」

「まあ仕方がないか。そのことに関しては先生の好きにしてくれて構わないからね」

「あ、はい。ありがとう」


 俺は照れながら、白銀さんにそう言って笑った。

 そしてそんな俺の顔を見た白銀さんも笑っていた。

「そういえば、マリアにはいつ話すんですか? 白銀さんがシロってことを」

 俺の問いに白銀さんは少し考えてから、

「時が来たらね。きっとその時が来ると私は信じている。このブレスレットがあるからね」

 そう言って、ブレスレットを見せる白銀さん。

「そうですね」

 それから俺たちは研究所の中に入り、白銀さんは仕事に戻っていった。

 そして俺はいつものように剛の個室に向かった。



 同時刻の施設。

 今日の先生はシロを連れて、研究所に向かっている。

 そして僕たちはいつものように、各々の学習ノルマに取り組んでいた。

 卒業目前ということもあって僕の学習ノルマはほとんどなく、授業中はボーっと過ごす時間が増えていた。

 そんな僕は先日起こった、襲撃事件のことを考えていた。

 襲撃犯はシロを狙っていた。それなのにこの施設から出すことが、最善の答えなのか……。もしもシロが家に戻ったとして、その家族にも危険が及ぶんじゃないか。

 そしてもう一つ。白銀ゆめかさんの存在――

 彼女は研究所の特別機動隊『グリム』の一員だけど、あの事件のことを知っている様子だった。

 もしかしてゆめかさんはスパイなんじゃないか……。特別機動隊の中に潜入し、襲撃事件の主犯格に情報を流しているのかもしれない。

「はあ」

 そんなことを考えていると、つい大きなため息が漏れる。

「キリヤ君、その大きなため息をやめていただけません?」

 そう言いながら優香は腰に手を当てて仁王立ちをして、僕の目の前に現れた。

「ご、ごめん……。ちょっと教室出るよ」

 そう言われた僕は教室を出た。

「はあ。今のままじゃ、僕も優香も勉強に集中なんてできないよね」

 そんなことを呟きながら、僕は屋上を目指して歩いていた。

 優香は飛び級卒業の為に倍のノルマで頑張っている。僕から優香に飛び級の話を持ち掛けておきながら、その邪魔をしてしまうなんて……

 そして屋上に着いた僕は、そのままそこで過ごすことにした。

 空を見上げると流れる雲はゆっくりで、時間の流れを忘れさせてくれた。

「いい天気だな……」

 そんなことを思っていると、屋上の扉が勢いよく開いた。

 僕は驚いてその方に目を向けると、

「やっと見つけた! もうこんなところで何してるの!!」

そこはいつもより口調が強めな優香がいた。

「いや、ちょっと頭をスッキリさせたいなと思って。優香こそ、なんでここに?」
「時計見てみなよ」

 僕がスマホの時刻を確認すと、13時08分と表示されていた。


「いつまでたっても食堂に来ないから、心配したじゃない!! なんか、私が嫌なこと言っちゃったかなって……」

「あ、ごめん! 本当にいい天気だったからさ。それに頑張っている優香の邪魔はしたくなかったんだ」

「別に邪魔にはなってないし! それにため息が嫌なのは、キリヤ君が一人で悩んでいるのが嫌だったの! 私にも相談してよ!! 友達でしょ!!」


 優香は恥ずかしそうに顔を赤らめてそう言っていた。

 僕は優香の言葉にくすっと笑ってしまう。

「ちょっと! なんで笑うの!? 私、すっごく心配してるのに!!」
「いやあ。ありがとう、優香。……はあ。なんだか一人で悶々と悩むのが馬鹿らしいなって思ってさ」
「ふーん。わかったなら、いいよ。それで、何があったの?」

 優香はそう言って、僕の隣に腰かける。

 そして僕は悩みの種を優香に打ち明けることに。

「……なるほどね。確かにあの事件の後でシロちゃんを家へ帰すのは危険かなって、私もそう思った。でもさ、先生が考えなしに行動すると思う? 何か意味があると私は思うんだよね」
「確かに……」

 優香の考えを聞いて、僕は妙に納得した。

 根拠なんてないけど、でも優香の言う通りで先生が考えなしに行動するはずはないと思った。

「それに白銀さんも初めて会ったとき、怪しい雰囲気は感じなかった。だからあの人は信じてもいいって私は思ってる」
「まあ優香がそう言うなら、たぶんそうなんだろうね」

 僕はそう言って笑った。

 優香の直感はあてにできる。――でも、やっぱりゆめかさんへの不安はぬぐい切れない。

 そう思った僕は、また空を眺めた。

「まあ……そんなに気になるのなら、本人にもう一度聞いてみたらいいんじゃない? 根気よく聞いたら、答えてくれるかもしれないでしょ?」
「そうだね。わかった! そうしてみるよ!!」
「ほら! 一人で悩むより、ずっと早く答えが出たでしょ?」

 優香はそう言って、キリヤに微笑む。

「ははは。ほんとだね! ありがとう、優香。」
「じゃあご飯食べに行こう、キリヤ君! 私、もうお腹がペコペコなんだけど?」
「そういえば、お昼ご飯の時間だったね」

 そして僕たちは食堂に向かった。



 それから僕は、数日後にゆめかさんと会う約束をした。

 真実を知ることは怖いが、それでも前に進むためには必要なことだと僕は思ったから。
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