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第5章 新しい出会い
第39話ー⑥ 夜空の下の奇跡
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翌日。真一としおんは、今日も食堂に集まっていた。
「真一、どうだ? 進捗の方は……」
しおんは心配そうな顔で、真一の方を見ていた。
「……これ」
真一はそんなしおんを気にせず、小さなノートを取り出し、しおんの前に出す。
「これは?」
「歌詞ノート。昨日、書けたから持ってきた」
それを聞いたしおんは、椅子を蹴飛ばして急に立ち上がる。
「さすが真一! あの一日で書き切るなんて!! やっぱり真一を選んで正解だったよ!!」
身を乗り出しながら、しおんはとても嬉しそうにしていた。
「喜ぶなら、まずは中を見てからにしてよ」
表情を変えず、真一はしおんにそう告げた。
「そうだったな! どれどれ……」
そしてしおんはノートを手に取り、ページをめくる。
ポーカーフェイスでそれを見ている真一。しかししおんの反応が気になり、チラチラとしおんの方を見ながら、
しおんは僕の歌詞を見て、何を思うのだろう――。
真一はそんな不安を抱いていた。
「……真一」
しおんはノートから目を離さずに、真一の名を呼ぶ。
(しおんは僕の歌詞にどう思ったのかな……)
ごくりと唾を飲み込む真一。
「どう、だった?」
そう言って恐る恐る尋ねる真一。
「これ……やばいぞ! すごくいい!! すごくすごい!! とにかくすごいんだ!!」
しおんはそう言いながら、真一に詰め寄った。
その反応からしおんが歌詞を気にいってくれたことを理解し、真一はほっと胸を撫でおろした。
「ちなみに壊滅的な語彙力で感想を言ってもらったわけだけど、具体的にどの辺が良かったのか聞かせてくれない?」
「そうだな……えっと。ここの『この音楽≪キセキ≫に触れて今その音を奏でる』とか。あとは『心を動かす歌≪きみ≫の声』とか! エモいよ! なんでこんな言葉が出てくるんだ! すごいぜ!! 本当に!!」
「そう」
真一はそっけなくしおんにそう答えつつも、自分の感情を誰かに受け入れてもらえることってあるんだな――と内心ではとても嬉しく思っていた。
僕は誰かに期待することを諦めていたけれど、もしかしたら音楽を通してならば、また誰かに期待できるかもしれない。こいつなら、しおんと一緒なら……僕は――
真一はしおんを見ながらそう思っていた。
「そっけないなあ! もっと喜べよ!」
そう言って、真一の肩に腕を乗せるしおん。
「そういうの、やめてってば」
「はいはい!」
そして真一はふっと笑う。
僕としおんもここから始まるんだ。この始まりの歌のように――。
「次はしおんがそれに合った曲を書く番だからね。台無しにしないでよ」
「任せろ! 俺がめちゃくちゃイカした曲を書くぜ!」
「ほどほどに期待して待ってるよ」
「そこはしっかりと期待しておけよ!!」
「じゃあ、僕はこれで……」
そう言って、真一は立ち上がる。そんな真一を名残惜しそうに見つめるしおん。
「もう少し話そうぜ! 俺は今、そういう気分なんだよー」
「それはしおんが曲を書き終わったらね。まだこの歌は完成じゃないんだから」
「はーい」
「じゃあ」
そして真一は食堂を後にしたのだった。
真一から歌詞を受け取ったしおんは、その歌詞からインスピレーションを受け、作曲を終えるのにそう時間はかからなかった。
そして歌詞が完成した翌日。今日もしおんと真一は食堂にいた。
「これでどうだ?」
しおんは椅子に座ったまま、作った曲をアコースティックギターで披露する。
「……うん。いいね。これならいける」
「よし!」
しおんはそう言って小さくガッツポーズをした。
「ようやく……だね」
「ああ。ここが俺たちの始まりだな」
「そうだね。……本当にこのままライブができそうな気がするよ」
「できそうじゃねぇ。やるんだって! さあて。曲もできたし、さっそく先生とライブの打ち合わせを――」
立ち上がろうとするしおんの腕を真一は掴んだ。
「待って。まだちゃんと合わせてない。だからこの歌は本当の完成じゃないよ」
「そうだったな……焦っちまったよ!」
「はあ。先が思いやられるよ」
それからしおんと真一は、それぞれの音を確認するように合わせる。
しおんのギターと真一の歌声。お互いの熱い思いが重なり、2人は手ごたえを感じていた。
「おい! この曲は、やばいぞ真一!」
「それは僕も感じた……」
「やろうぜ、ライブ! きっと俺たちなら、ビッグなロックミュージシャンになれる! そう感じたぜ!!」
そしてしおんはそれから暁のところを訪ね、ライブの日取りを話し合った。
ライブは2週間後……。ちょうど夏休みの時期に決まったのだった――。
「真一、どうだ? 進捗の方は……」
しおんは心配そうな顔で、真一の方を見ていた。
「……これ」
真一はそんなしおんを気にせず、小さなノートを取り出し、しおんの前に出す。
「これは?」
「歌詞ノート。昨日、書けたから持ってきた」
それを聞いたしおんは、椅子を蹴飛ばして急に立ち上がる。
「さすが真一! あの一日で書き切るなんて!! やっぱり真一を選んで正解だったよ!!」
身を乗り出しながら、しおんはとても嬉しそうにしていた。
「喜ぶなら、まずは中を見てからにしてよ」
表情を変えず、真一はしおんにそう告げた。
「そうだったな! どれどれ……」
そしてしおんはノートを手に取り、ページをめくる。
ポーカーフェイスでそれを見ている真一。しかししおんの反応が気になり、チラチラとしおんの方を見ながら、
しおんは僕の歌詞を見て、何を思うのだろう――。
真一はそんな不安を抱いていた。
「……真一」
しおんはノートから目を離さずに、真一の名を呼ぶ。
(しおんは僕の歌詞にどう思ったのかな……)
ごくりと唾を飲み込む真一。
「どう、だった?」
そう言って恐る恐る尋ねる真一。
「これ……やばいぞ! すごくいい!! すごくすごい!! とにかくすごいんだ!!」
しおんはそう言いながら、真一に詰め寄った。
その反応からしおんが歌詞を気にいってくれたことを理解し、真一はほっと胸を撫でおろした。
「ちなみに壊滅的な語彙力で感想を言ってもらったわけだけど、具体的にどの辺が良かったのか聞かせてくれない?」
「そうだな……えっと。ここの『この音楽≪キセキ≫に触れて今その音を奏でる』とか。あとは『心を動かす歌≪きみ≫の声』とか! エモいよ! なんでこんな言葉が出てくるんだ! すごいぜ!! 本当に!!」
「そう」
真一はそっけなくしおんにそう答えつつも、自分の感情を誰かに受け入れてもらえることってあるんだな――と内心ではとても嬉しく思っていた。
僕は誰かに期待することを諦めていたけれど、もしかしたら音楽を通してならば、また誰かに期待できるかもしれない。こいつなら、しおんと一緒なら……僕は――
真一はしおんを見ながらそう思っていた。
「そっけないなあ! もっと喜べよ!」
そう言って、真一の肩に腕を乗せるしおん。
「そういうの、やめてってば」
「はいはい!」
そして真一はふっと笑う。
僕としおんもここから始まるんだ。この始まりの歌のように――。
「次はしおんがそれに合った曲を書く番だからね。台無しにしないでよ」
「任せろ! 俺がめちゃくちゃイカした曲を書くぜ!」
「ほどほどに期待して待ってるよ」
「そこはしっかりと期待しておけよ!!」
「じゃあ、僕はこれで……」
そう言って、真一は立ち上がる。そんな真一を名残惜しそうに見つめるしおん。
「もう少し話そうぜ! 俺は今、そういう気分なんだよー」
「それはしおんが曲を書き終わったらね。まだこの歌は完成じゃないんだから」
「はーい」
「じゃあ」
そして真一は食堂を後にしたのだった。
真一から歌詞を受け取ったしおんは、その歌詞からインスピレーションを受け、作曲を終えるのにそう時間はかからなかった。
そして歌詞が完成した翌日。今日もしおんと真一は食堂にいた。
「これでどうだ?」
しおんは椅子に座ったまま、作った曲をアコースティックギターで披露する。
「……うん。いいね。これならいける」
「よし!」
しおんはそう言って小さくガッツポーズをした。
「ようやく……だね」
「ああ。ここが俺たちの始まりだな」
「そうだね。……本当にこのままライブができそうな気がするよ」
「できそうじゃねぇ。やるんだって! さあて。曲もできたし、さっそく先生とライブの打ち合わせを――」
立ち上がろうとするしおんの腕を真一は掴んだ。
「待って。まだちゃんと合わせてない。だからこの歌は本当の完成じゃないよ」
「そうだったな……焦っちまったよ!」
「はあ。先が思いやられるよ」
それからしおんと真一は、それぞれの音を確認するように合わせる。
しおんのギターと真一の歌声。お互いの熱い思いが重なり、2人は手ごたえを感じていた。
「おい! この曲は、やばいぞ真一!」
「それは僕も感じた……」
「やろうぜ、ライブ! きっと俺たちなら、ビッグなロックミュージシャンになれる! そう感じたぜ!!」
そしてしおんはそれから暁のところを訪ね、ライブの日取りを話し合った。
ライブは2週間後……。ちょうど夏休みの時期に決まったのだった――。
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