白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第6章 家族

第42話ー④ 父と娘

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 暁が去った部屋は、急に静寂が訪れていた。

 誰かが話さないと……。

 マリアはそんなことを考えるが、久しぶりに会った両親と何を話していいのかわからなかった。

 言いたいことや言わなくちゃいけないことがたくさんあることはわかっているのに……今の自分には、それを言葉にするのがとても難しいな――とマリアはそう思っていた。

「あ、の……」

 マリアはパクパクと口を動かしながら、両親を見ていると、

「ふふふ……」

 母はそんなマリアの姿を見て笑い出した。

「え……」

 そんな母を見て、なぜ自分が笑われているのかわからない様子のマリア。

「しばらく見ないうちに大人っぽくなったなって思ったのに、中身は昔のかわいいマリアのままね」

 母は口を手で押さえて、くすくすと楽しそうに笑っていた。

「そうかな……」

 きょとんとするマリア。

「ええ。だから安心した。マリアは相変わらずのいい子なんだって」

 そう言いながら、優しく微笑む母。

「ありがと……」

 マリアは頬を赤く染めながら、俯いてそう言った。

「せっかくだし、何か話そうか」
「うん……」

 それからマリアは母にこれまでのことを話す。

 ここで会った仲間と親友。そして妹みたいにかわいかった少女の話。

「マリアはここでとても楽しい時間を過ごせていたのね。良かった……」

 そう言いながら、ほっとした表情の母親。

「うん……ここに来れて本当に良かったって思ってるよ。初めは確かに不安なこともたくさんあったけど、でもここで素敵な人たちに出会えた」

 マリアは嬉しそうに笑った。

 そしてそんなマリアを見た父がようやく閉ざしていた口を開いた。

「父さんのことは、恨んでいないのかい……?」

 その言葉に今まで抱えてきた後悔と懺悔の気持ちが込められているのをマリアは感じた。

「恨むわけない……お父さんに非はないんだから。私が持った能力のせいでお父さんをずっと苦しめちゃったよね……」

 マリアは俯きながら、父にそう告げる。

「マリア……」
「だから、今度こそ……ううん。ここからちゃんとお父さんと関わっていきたい。本当の家族として」
「ああ。俺もそうしたい。マリアの父として、これからのマリアを応援したい」
「ありがとう、お父さん」

 そう言って、マリアは父の胸の中へ。

 そしてそんなマリアの行動に最初は驚きつつも、その後は優しく抱きしめた。

「すまなかった、マリア。もっと早く来るべきだったな。そうしたら、マリアにも辛い思いをさせずに済んだのに……ごめんな」

 父はそう言いながら、目に涙を浮かべる。

「ここでこうして分かり合えたんだから、遅くなんてない。それに私は、お父さんよりも辛くなかったよ。だから謝らないで」
「ありがとな……」

 そして父と娘の様子を優しく見つめる母。

 それから職員室から戻った暁が、部屋に入ってきた。

「遅くなってすみません。じゃあ面談を始めましょうか」

 そして4者面談は始まったのだった。



「先生、今日はありがとう」

 そう言いながら、マリアはエントランスゲートで帰っていく両親を見守っていた。

「ああ。でも俺の方こそありがとな。良いものを見られたよ」
「もしかして見てたの?」
「ちょっとだけな!」

 ニヤリと笑う暁。

「それ、最初から見ていた時に言うセリフ」
「ははは!」
「でも、やっと前に進めたかもしれない。私、ずっと過去に縛られてた。だけど、今日お父さんにあって、ようやく過去から抜け出せた気がする」

 マリアはそう言って笑った。

「よかった。マリアが変わることができたのなら、面談を企画して正解だったってことだな!」

 暁もマリアにそう言って微笑んだ。

 それから暁たちはマリアの両親を見送って、建物の中に戻っていった。



 その日の晩。

 夕食を終えた暁は今日のことを思い出しつつ、自室でボーっと過ごしていた。

「両親か……」

 暁はふと自分の両親の今が気になった。

「父さんは元気にしているだろうか……それに母さんの病気は良くなったかな」

 そして残してきた妹や弟たちは――。

「みんなに会いたいな……」

 暁はそう呟き、はっとする。

 家族を裏切った自分がそんなことを願っていいはずがない。でももしまた会えるのなら、もう一度――。

 そしてそう思った暁は、所長に電話をした。

「もしもし所長……実は、ご相談があって……」



 そして暁は、再びあの場所へと向かうことになった。
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