白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

文字の大きさ
267 / 501
第7章 それぞれのサイカイ

第53話ー① 風向き

しおりを挟む
 風が吹いている。

 その風は方向が定まらないまま、どこに向かっているのか誰にもわからない。とても孤独で不安で寂しい風だった。

 でもその風の周りには温かいメロディが加わり始め、少しずつその風は変わっていく。

 しかし今はまだ吹き抜ける先は定まらない。でもいつかはきっと――。


 * * *


『はちみつとジンジャー』がメディアで紹介されてから1か月が経った頃。

 2人の評判が気になった暁は、ふとSNSで『はちみつとジンジャー』のことを調べていた。

 するとそこにはしおんと真一に対する様々コメントが拡散されていた。

『あやめのしおん君に対する兄愛やばいよね! かわいい!!』
『しおん君を見てあやめがギターを始めたらしいよ! マジ感謝だよね!』

「しおんへの反応は思いのほかいいみたいだけど――」

 そして真一に対するコメントを見る暁。

『そういえば、どっかのネット記事で見たけど『はちみつとジンジャー』のボーカル、子供の頃に事故で両親亡くなってるらしいよ』
『本当!? かわいそう~』

 真一は憐みのコメントが多くみられるように思えた。

「このまま変に詮索するような人がいなきゃいいけどな」

 暁はそう呟きながら、スマホをそっと机の上に置いたのだった。


 * * *


 ――食堂。

 いつものように生徒たちがそれぞれの席で食事を楽しんでいた。

「はあ!? なんだよ、これ!!」

 しおんはそう言いながら、勢いよく立ち上った。そしてその勢いのせいで椅子がガタンと音を立てて倒れる。

「何? そんなに大きな声を出して」

 そんなしおんに冷たく言い放つ真一。

「ちょっとこれ! 見てみろよ!!」

 そう言って真一にスマホの画面を見せるしおん。

 そして真一はその画面を見つめた。

「あることないこと好き勝手書きやがって!」
「……まあ、こうなるだろうなとは予想していたけどね」

 そう言って画面から目をそらす真一。

「どうしたんですかあ?」

 凛子はそう言ってしおんのスマホを覗き込む。

「えっと、なになに……。14年前の事故の加害者家族! 『はちみつとジンジャー』のボーカル・風谷真一の悲惨な人生。……うわぁ。どこでこんな情報を」
「ああ、腹立つっ!」

 しおんはそう言って椅子を起こし、少々荒めに椅子へ腰を掛ける。

「しおんが気にすることじゃないよ。僕の問題なんだから」

 真一は淡々としおんに向かってそう言った。

「いや! 真一の問題は俺の問題だ!! だって一緒に音楽をやる仲間なんだからな!」
「……あり、がと」

 真一は照れながらそう答えた。

「まあスキャンダルが出るのは人気者の証拠ですよお! 気にしないのが一番です☆ そのうちに収まりますから」

 そう言って凛子はしおんたちの前を去っていった。

「凛子もああ言っているし、今は様子見しよう。いいね、しおん?」
「ああ、わかったよ。でも何かあれば言えよ? 一人で抱え込もうとするんじゃなくて、俺にも背負わせろよな!」

 そう言ってしおんは真一に歯を見せて笑った。

「わかった」

 真一はそんなしおんの顔を見て、嬉しそうにそう言った。



 食堂を出た真一は自室にいた。

 ベッドに寝転び、スマホを触る真一。

「あ、これ……」

 そして真一は先ほどしおんが見ていたネットの記事を見つけ、その記事を開いた。

「え……こんなことまで」

 その内容は身内しか知らないような情報が載っていた。

 親戚の家を転々として、その度にその家に災難が降りかかったことと叔父がミュージシャンを目指していたが、夢半ばで交通事故により死去したこと。

 もしかして、身内の誰かが情報をリークしたんじゃ――

 そんな考えが真一の頭をよぎった。

「どこまで醜い奴らなんだ……」

 そしてスマホを握る力が強くなる。

『一人で抱え込もうとするんじゃなくて、俺にも背負わせろよな!』

 真一はさっき食堂で聞いたしおんの言葉を思い出した。

「そうだね」

 ――今の僕は信頼する仲間がいる。今までみたいに一人で悩む必要はない。

「しおんの部屋で練習でもしようかな」

 それから真一は起き上がって、しおんの部屋に向かった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

【完結】黒の花嫁/白の花嫁

あまぞらりゅう
恋愛
秋葉は「千年に一人」の霊力を持つ少女で、幼い頃に龍神――白龍の花嫁として選ばれていた。 だが、双子の妹の春菜の命を救うために、その霊力を代償として失ってしまう。 しかも、秋葉の力は全て春菜へと移り、花嫁の座まで奪われてしまった。 それ以来、家族から「無能」と蔑まれながらも、秋葉は失われた力を取り戻すために静かに鍛錬を続けていた。 そして五年後、白龍と春菜の婚礼の日。 秋葉はついに霊力が戻らず、一縷の望みも消えてしまった。 絶望の淵に立つ彼女の前に、ひとりの青年が現れる。 「余りもの同士、仲良くやろうや」 彼もまた、龍神――黒龍だった。 ★ザマァは軽めです! ★後半にバトル描写が若干あります! ★他サイト様にも投稿しています!

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

処理中です...