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第8章 猫と娘と生徒たち
第61話ー② ずっと一緒だ!
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――数日後。あやめの所属する芸能事務所から真一としおんの2人宛に契約書が届いた。
「……げっ。保護者の印鑑がいるのか」
契約書を読みながら、しおんは不満そうな顔をする。
「保護者……僕はどうなるの? 誰の養子ってわけでもないんだけど」
「あ……うーん。あやめに聞いてみるよ。大人の印鑑が必要っていうのなら、暁先生のものでもありなのかどうかも!」
しおんがそう言って笑うと、
「あ、ありがとう」
照れながら真一はそう言った。
「おう! これも俺たち『はちみつとジンジャー』の未来の為だからな! 任せろって!」
そう言って微笑むしおん。
「うん……」
そして真一はそんなしおんに笑って返すのだった。
自室で1人過ごす真一。
そして先ほど受け取った契約書に再び目を通す。
「契約開始は契約書受諾時からとする、か……」
契約が始まったとして、僕はここから出られない。もしそうだとしたら――
「しおんの夢が、僕のせいで遠のいてしまう」
しおんの夢は世界一のミュージシャンになることだ。このチャンスをふいにしてしまったら、もうその夢に届かなくなるかもしれない――真一はそう思いながら、契約書をそっと手に取った。
「僕がしおんの邪魔をするわけにはいかない、よね……せめてしおんだけでも」
真一はそう言って、机の引き出しに契約書をしまったのだった。
――2日後。夕食時、食堂にて。
しおんは食堂に来ると先に夕食を摂っている真一のところへ行き、
「真一! あやめから連絡があったぞ! 先生のサインで良いってさ」
そう言って隣に腰かけた。
「そっか」
「おう! 真一がサインをもらったら、一緒に俺の実家に送るよ。そしたら、あやめが事務所に届けてくれるって」
しおんは笑顔で真一にそう告げた。
「そう、なんだ。わかった」
「じゃあサインもらったら、よろしくな!」
しおんはそう言うと、食べ物の並ぶカウンターへと向かった。
そして真一はそんなしおんの背中を見つめる。
ごめん、しおん。僕は――
そう思いながら、俯く真一。
「これもしおんの為なんだ。だから、これでいいんだよ」
真一はそう言ってから顔を上げて再び箸を動かし、残りのご飯を平らげた。
* * *
――翌日。
しおんと真一はいつものようにしおんの自室で歌の練習をしていた。
そしてその途中、突然しおんのギターの弦が切れる。
「あ……しまった。最近、替えてなかったからか」
「ふう。ちょっと休憩しようか」
「ああ、悪い……すぐ張り替えるから」
それからしおんは自室のクローゼットの中にある工具箱からペンチを取り出して、切れていない残りの弦を切り始めた。
「そういえば、真一。契約書の件はどうなった?」
しおんは手を動かしながら、真一にそう問いかける。
「あ、ああ。うん。ぼちぼち、かな」
真一はそう言って、しおんから顔をそらした。
「なんだよ、ぼちぼちって!! サイン、まだもらえてないのか」
「……」
「真一?」
「大丈夫。何とかするから……」
そう言って立ち上がった真一は、部屋を出て行った。
「え? おい! 真一!?」
出て行った真一に聞えるようしおんは声を上げたが、振り返ることはなかった。
「ど、どうしたんだ……?」
それからしおんはしばらく真一の戻りを待っていたが、いつまで経っても戻って来ることはなかった。
「真一、様子が変だったな。何とかするって言ってたけど……」
それにあの様子からすると、真一はたぶん先生からサインをもらっていないんだろうな――としおんはベッドに寝転がりながらそう思っていた。
「先生に聞いてみるか」
そしてしおんは身体を起こして、職員室へと向かった。
「……げっ。保護者の印鑑がいるのか」
契約書を読みながら、しおんは不満そうな顔をする。
「保護者……僕はどうなるの? 誰の養子ってわけでもないんだけど」
「あ……うーん。あやめに聞いてみるよ。大人の印鑑が必要っていうのなら、暁先生のものでもありなのかどうかも!」
しおんがそう言って笑うと、
「あ、ありがとう」
照れながら真一はそう言った。
「おう! これも俺たち『はちみつとジンジャー』の未来の為だからな! 任せろって!」
そう言って微笑むしおん。
「うん……」
そして真一はそんなしおんに笑って返すのだった。
自室で1人過ごす真一。
そして先ほど受け取った契約書に再び目を通す。
「契約開始は契約書受諾時からとする、か……」
契約が始まったとして、僕はここから出られない。もしそうだとしたら――
「しおんの夢が、僕のせいで遠のいてしまう」
しおんの夢は世界一のミュージシャンになることだ。このチャンスをふいにしてしまったら、もうその夢に届かなくなるかもしれない――真一はそう思いながら、契約書をそっと手に取った。
「僕がしおんの邪魔をするわけにはいかない、よね……せめてしおんだけでも」
真一はそう言って、机の引き出しに契約書をしまったのだった。
――2日後。夕食時、食堂にて。
しおんは食堂に来ると先に夕食を摂っている真一のところへ行き、
「真一! あやめから連絡があったぞ! 先生のサインで良いってさ」
そう言って隣に腰かけた。
「そっか」
「おう! 真一がサインをもらったら、一緒に俺の実家に送るよ。そしたら、あやめが事務所に届けてくれるって」
しおんは笑顔で真一にそう告げた。
「そう、なんだ。わかった」
「じゃあサインもらったら、よろしくな!」
しおんはそう言うと、食べ物の並ぶカウンターへと向かった。
そして真一はそんなしおんの背中を見つめる。
ごめん、しおん。僕は――
そう思いながら、俯く真一。
「これもしおんの為なんだ。だから、これでいいんだよ」
真一はそう言ってから顔を上げて再び箸を動かし、残りのご飯を平らげた。
* * *
――翌日。
しおんと真一はいつものようにしおんの自室で歌の練習をしていた。
そしてその途中、突然しおんのギターの弦が切れる。
「あ……しまった。最近、替えてなかったからか」
「ふう。ちょっと休憩しようか」
「ああ、悪い……すぐ張り替えるから」
それからしおんは自室のクローゼットの中にある工具箱からペンチを取り出して、切れていない残りの弦を切り始めた。
「そういえば、真一。契約書の件はどうなった?」
しおんは手を動かしながら、真一にそう問いかける。
「あ、ああ。うん。ぼちぼち、かな」
真一はそう言って、しおんから顔をそらした。
「なんだよ、ぼちぼちって!! サイン、まだもらえてないのか」
「……」
「真一?」
「大丈夫。何とかするから……」
そう言って立ち上がった真一は、部屋を出て行った。
「え? おい! 真一!?」
出て行った真一に聞えるようしおんは声を上げたが、振り返ることはなかった。
「ど、どうしたんだ……?」
それからしおんはしばらく真一の戻りを待っていたが、いつまで経っても戻って来ることはなかった。
「真一、様子が変だったな。何とかするって言ってたけど……」
それにあの様子からすると、真一はたぶん先生からサインをもらっていないんだろうな――としおんはベッドに寝転がりながらそう思っていた。
「先生に聞いてみるか」
そしてしおんは身体を起こして、職員室へと向かった。
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