白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第8章 猫と娘と生徒たち

第61話ー⑤ ずっと一緒だ!

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「だけどきっとそれは無理だろうな」
「……え?」

 そう言って顔を上げる真一。

「しおんは真一と離れるつもりはないらしいからな。真一とずっと一緒がいいって言っていたよ」
「だけどそれじゃ、しおんの夢が……僕のせいでしおんの夢が叶わなくなるのは嫌なんだよ!」

 真一はしおんの夢を誰よりも大切に思ってくれていたんだな。でも真一、その夢はしおんだけの夢じゃないんだよ――

「そういえば、しおんがさっき真一と一緒に夢を追うんだって息巻いていたな」
「しおんが……」
「真一はそのしおんの気持ちをふいにするのか?」

 暁は笑顔でそう言った。

「そういうつもりじゃない。僕はただ……」
「ただ?」
「ただ、しおんには絶対に夢を叶えてほしいって思っているだけ。僕を変えてくれたしおんやしおんの音は、きっと世界中の人たちの心を救う。きっとまだ見ぬ人達がしおんの音楽を待っている。だからしおんの夢をこんなところで止めちゃいけないって僕は思ってるんだ」

 真一は暁の顔をまっすぐに見てそう言った。

「そうだったのか」
「うん。だからしおんの夢が遠ざかるくらいなら、ここで僕たちは終わってしまった方がいい。そうじゃないと、僕が嫌なんだ」

 そう言って俯く真一。

 そしてそんな真一の本心を聞き、暁は何も言わずにただまっすぐ真一を見つめた。

 初めて会った時の真一はまさか誰かと一緒に何かをやるところなんて想像できなかったのにな。今は一緒にやってきた大切な友人の夢のために、自分のできることをやろうとしている。

 たった一つの出会いが、人をここまで変えることもあるんだな――と暁は真一を見つめながらそう思っていた。

「どんな決断を下すのか、それは真一自身の問題だから俺はこれ以上何も言わない。ただ、ちゃんと自分が思っていることがあるのなら、それをしおんに伝えてやれ」

 暁は微笑みながらそう告げると、真一は「うん」と小さな声で答えた。

「それと。真一はしおんの夢と言っていたけれど、世界一のミュージシャンになるっていうのは、たぶん2人の夢なんだと俺は思うぞ。それだけは頭に入れておいてくれな」
「2人の、夢……」

 真一はそう言って顔を上げる。

「そうだ」
「……わかった。だからこそ、ちゃんと2人で決めなくちゃだね」
「わかってくれてなら、よかったよ」

 暁はそう言って笑った。

 真一がどんな答えを出すのか、俺にもわからない。でも2人が困難な道でも夢を追うというのならば、俺なそんな2人をずっと応援し続ける。ここを離れても俺の生徒だったことに変わりはないからな――。

「ありがとう、先生。なんで先生が他の生徒たちから好かれるのか、なんとなくわかった気がした」
「ははは! それはありがとな! 真一も俺のことをもっと好きになってくれてもいいんだぞ?」
「まったく、すぐに調子に乗るんだから……」

 真一はため息交じりにそう言った。

「えー。でもさ! 俺たちって出会ってもうすぐ4年になるだろ? それでやっと真一の本音を聞けたって思うと俺も嬉しくてさ」

 暁が頭を掻いて照れながら笑ってそう言うと、

「確かに。先生に今までこんな話……というか2人で真面目に話すことってなかったね」

 真一は少しだけ微笑みながらそう言った。

「だろう? ああ、なんかうれしいな。あはは」
「ニヤニヤしすぎ。気持ち悪いよ」
「え!?」
「はあ。とりあえず僕は、しおんと話し合いをしてくる。まずはそれからだから」

 そう言って真剣な表情をする真一。

「ああ。俺はここで待ってるから。2人が揃って、夢を追うって言いに来るのをさ」

 暁がそう言って歯を見せて笑うと、

「まだどうなるかなんて、わからないでしょ」

 真一は顔を背けてそう言った。

「ああ、そうだったな。でも待ってる。俺はいつまでも、ここで」
「まったく……じゃあ、行ってくる。ありがとう、先生」

 そう言って真一は職員室を出て行った。

 たぶん真一の気持ちに変わりはないのだろう。だから別の道を歩むという自分の答えを伝えるために、真一はしおんの元へ向かったんだろうな――。

「さて、どんな結末が待っているんだろうな。あとはしおんの頑張り次第だぞ」

 暁は真一が出て行った扉を見つめて、そう呟いたのだった。
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