白雪姫症候群-スノーホワイト・シンドロームー

しらす丼

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第8章 猫と娘と生徒たち

第60話ー② おしゃべり猫と石化の少女

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「優香に連絡……って俺、連絡先を知らないな」

 困った顔をしながら、暁は首をひねる。すると突然、暁のスマホが振動した。

「ん……? 誰だ?? 所長!?」

 そして暁は通話に応じる。

「はい、もしもし?」
『やあ暁君! 元気にしているかい?』
「ええ。相変わらずですね。それで、今日はどうしたんですか?」

 いつもより所長のテンションが高いように感じるけど……何かあったのかな――?

『実は、ちょっと頼みごとがあってね』
「頼み事?」
『ああ……それが――』

 そして所長は暁に電話の本題を話した。

「……わかりました。そういうことなら」
『すまないね。君にしかできない相談だからさ』
「いいんですよ。いつも所長にはお世話になっていますし、能力者関係の案件ならなおさら断る理由もない」
『心強いよ。それじゃあ、詳細はまた追って連絡する』

 そして通話を終えた暁はスマホを机に置く。

「ふう……あ。所長に優香のことを聞けばよかったんじゃ」

 それから暁は所長に電話をかけ直し、優香のことは少し落ち着いたらまた日取りを決めようということになったのだった――。



 翌日。

 暁は職員室の自分の席に座って、頬杖をついていた。

「そういえば、今日研究所から連れてくるって言っていたな」

 そして暁は昨日聞いた所長からの話を思い返す――。
 

 * * *


『実は、ちょっと頼みごとがあってね』
「頼み事?」
『ああ……それが最近研究所で保護した少女がいてね。その子の検査をしたら、君と同じSS級だという事がわかった』
「え……SS級が現れたんですか」

 所長から聞いたSS級と言う言葉に驚き、目を見開く暁。

『ああ、そうだ。そしてその少女の能力なんだが、石化の能力持ちで少し厄介なことになっていてね』
「厄介なこと?」

 暁は所長が口にしたその『厄介』という言葉に不安な気持ちになる。

 ――強大な力は常人にとって、『厄介』に思われるのか。じゃあ俺も同じように……。

『――暁君? 聞いているかい??』
「あ、はい!! すみません」

 はっとした暁は自分が考え込みすぎて、所長の言葉が耳に入っていなかったことに気が付く。

『じゃあ話を続けるよ?』
「お願いします」
『それでその少女の能力なんだが……目が合っただけで石化させてしまう力でな。そして少女自身がまだ幼くて、その力をまだ自分で制御できないという事さ』
「そうですか……」

 SS級ではあるけれど、『ゼンシンノウリョクシャ』ではなさそうだな――そんなことを思いつつ、暁は所長の話を聞いていた。

『それで無効化の力を持つ君のところで、少女が自我をコントロールできるようになるまで見ていてほしいというのが、今回のお願いだ』
「……なるほど」
『頼めるかい?』
「わかりました。そういうことなら――」
 

 * * *


 暁はスマホの画面を見つめる。

「まだ連絡はない、か。確か白銀さんが連れてくるって話だったよな」

 それから暁は天井を見つめる。

「厄介な力、か……」

 確かにSS級クラス強大な力を持つ。だから普通の人間から疎まれることは当たり前だ。仕方のないことだってことはわかっているけれど――そう思い、暁は深い溜息をついた。

「所長は……他の人たちは俺のことをどう思っているんだろうな」

 もしかしたら、自分も所長たちに厄介な存在だと思われているんだろうかと思いながら暁は肩を落とす。

 でも所長が最後言っていた『君にしかできない相談』という言葉は、きっと本当のことで、たぶん頼りにしてもらっているんだ――暁はそう思うことで、暗い気持ちから少しだけ解放される。

「くよくよしてても仕方がない! 俺は俺にしかできないことをするんだって!! よしっ!!」

 そして暁はゆめかが来るまでの間、投稿されている『はちみつとジンジャー』の動画を観て待つことにした。

「ああ、この曲。あの時の……」

 やっぱり真一の歌声もしおんの音色も最高だな――

 そんなことを思いながら、暁は動画を楽しんだのだった。

 そして数分後。

「あ、白銀さんからのメッセージだ。ってことはもうここへ着くってことだな」

 それから暁はエントランスゲートへ向かった。



 ――エントランスゲート前。

 そこには一台の車が停まっていた。

「たぶんあれだな」

 そして暁はその車に向かって歩いていく。それから車の前で止まり、車の窓ガラスの中を覗いた。

「やあ、待たせたね。暁先生」

 そう言いながら、窓を開けるゆめか。

「お疲れ様です。それで……あの」
「ああ、紹介するよ!」

 ゆめかとその隣に座っているゴーグルをした幼い少女が姿を見せる。

 目が合うと石化の能力が発動するからってことか――暁は少女の顔を見ながら、そう思った。

 それからその少女はゴーグルで視界を制限されたまま、車を降ろされる。

「もう大丈夫。外すよ」

 そう言って車を降りたゆめかはその少女のゴーグルを外した。

 そしてゴーグルを外して明らかになった少女の顔を見た暁は、その少女の瞳が青く澄んでいてとても綺麗だなと思った。

「さあ、ご挨拶はできるかい?」

 ゆめかがその少女に告げると、少女はぺこりと頭を下げる。

「スイの名前は、最上《もがみ》水蓮《すいれん》です。よろしくおねがいします」

 水蓮はそう言ってから顔をあげると、背中まである藍色の髪を揺らしながら、ニコッと微笑んだ。

「うん。上手にご挨拶ができたね! えらい、えらい!」
「わーい」

 そう言って微笑む水蓮の姿を見た暁は、この少女がまだ何も知らない子供なんだという事を悟る。

「じゃあこのお兄さんのいう事をちゃんと聞くんだよ? 約束できるかい??」

 ゆめかはそう言って、水蓮に小指を立てながら微笑んだ。

「うん! スイ、いい子だから約束できるよ!」

 そして水蓮はそんなゆめかの小指に自分の小指を絡ませる。

「じゃあまた遊びに来るからね!」
「わかった! お姉ちゃん。ありがとう!」
「ああ。じゃあ暁先生。あとは頼んだよ」
「あ、はい!!」

 それからゆめかは研究所へと戻っていった。

「じゃあ俺たちも行こうか」
「うん!」

 そして暁と水蓮は保護施設の建物内へと入っていった。
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