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アフターストーリー

第3話ー③ 魔女が残していったもの

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 ――現在。

「そういえば、ほたる。身体の方はもう大丈夫なんですか? 以前、かなり無理をして能力を使って――」
「うん。平気。すっかり元気だよ」

 そう言って微笑むほたる。

『ゼンシンノウリョクシャ』の隔離事件の後、ほたるはその事件の際に能力を無理に使用したことでしばらく目を覚まさなかった。

 それが暴走による眠りなのかどうかの知るすべがなく、ほたるが目を覚ましてれることをキキはベッドの傍で願い続けていた。

 そしてその数日後にほたるは目を覚まし、篤志に連れられてキキたちは『アンチドーテ』の一員として行動することになったのだった。

「そうですか。よかったです」

 ほっとするキキを見たほたるは、

「キキはいつも僕のことを心配してくれるよね」

 首を傾げながらそう言った。

「ええ。魔女様から言われていますからね! それに!」
「?」
「私はほたるのお姉さんですから!」

 腰に手を当てて、自慢げにそう言うキキ。

「うん。ありがとう」

 ほたるはそう言って笑い、そんなほたるの顔を見て、キキも微笑んだのだった。

 それからキキたちが笑いあっていると、部屋の扉が静かに開いた。

「楽しそうなところ、ごめん。2人に話したいことがあって」

 そう言いながら、部屋に入ってくる少年、翔《かける》。

「どうしたんですか。そんな改まって? もしかして――冷蔵庫のプリンはやっぱり翔さんのものでした!? すみません……おいしそうで、つい」

 そう言って舌を出すキキ。

「犯人はキキだったのか! まあ、ほたるはそんなことしないだろうから、大方予想はできていたけど――とまあその件は後から問いただすとして……違うんだ。ちょっと、厄介なことがあってね」

 翔は眉をひそめて、そう言った。

「厄介なこと?」

 はて? わざわざその厄介なことを私達に話すなんて。それは一体何事なんでしょうか――

 そう思いながら、考えを巡らせるキキ。

「ああ。今回は君たちにどうしても解決してほしいんだよ」

 それからキキとほたるはお互いの顔を見合わせ、首を傾げたのだった。



 ――都内、某所。

 翔に連れられ、キキとほたるは都内にある古びたビルの最上階にいた。

「えっと……ここで一体、何があるというんです?」
「うん、えっとね――あ、いたいた。あそこ」

 そう言って翔は指を差す。そしてキキとほたるはその先に目を向けると、小さな広場で謎の集会が開かれている様子を見つけた。

「あれは……?」
「うん。自称『エヴィル・クイーン』の残党、だね」
「はい? 残党も何もあんな人達は知りませんが?」

 そもそも『エヴィル・クイーン』は私とほたると、ロー……なんとか君だけだったはず――

「だから自称なんだよ。どこで『エヴィル・クイーン』のことを知ったのかは知らないけれど、あまり騒ぎを大きくされるのも正直困る」

 やれやれと言った顔で肩をすぼめる翔。

「はあ、まあ。でも私たちが動かなくても、『グリム』の連中が何とかするんじゃないんですか?」

 こういうのは彼らの仕事でしょう、とキキは言った。

「それもそうなんだけどね。でも、君たちはこのままでいいのかなって思ってさ」
「え?」

 翔はキキとほたるの顔を交互に見つめる。

「元『エヴィル・クイーン』のメンバーとして、君たちの魔女様が立ち上げた組織を穢らわしい大人たちに語らせていいのかってこと」
「それは――」
「嫌だっ!」
「ほたる?」

 珍しく感情的になるほたるを見たキキは、目を丸くしていた。

「もう『エヴィル・クイーン』はないけど、でも僕にとっては大切な場所だった。その思い出の場所を踏み荒らされたままなのは、嫌だ!!」
「ほたる……」

 そこまでほたるは『エヴィル・クイーン』を大切に思ってくれていたのですね。魔女様だけじゃなく、私達のことも――

「ほたるはやる気満々みたいだけど、キキはどうするの?」

 挑発するようにキキへ告げる翔。そして――

「ええ。もちろん私もこのまま見過ごすわけにはいきませんよ!! 本物との格の違いを見せつけてやりましょう!」

 キキはそう言いながら、ニヤリと笑った。

「うん。そう言うと思った。じゃあ――」

 それから翔は、キキとほたるに簡単な作戦説明をした。

「そんな感じ。『グリム』が来る前に片をつけよう」
「うん」「はい!」

 そしてキキたちは作戦を開始した――。


 * * *


 集会広場にて――

 複数の大人たちが集まり、暴動を起こす準備を進めていた。


「へへへ。これから繁華街で暴動を起こす。そして俺たちの存在を世に知らしめてやろうぜ!」

「ああ、いつまでも末端でいるってのも飽きたからな!! それにもう、雑魚はS級施設にでも不法侵入してろだなんて言わせねえぜ!!」

「にしても、安藤あんどう征夫ゆきおも馬鹿だよなあ」

「確かに。まんまと正体を明かしただけじゃなく、自分のやってきたことを吐いちまうんだからな」

「まあ、そのおかげで俺らがこうして暴れるきっかけをくれたわけだ。感謝しねえとな!」


 そしてそんな会話をしている大人たちの前に、フードを被った少年が一人姿を現した。

「へえ。ずいぶんと楽しそうな会話ですね」

 フードの少年は淡々と大人たちにそう言った。

「はあん? お前ナニモンだ? ガキはママのおっぱいでも吸ってろよ!!」
「そうだぜ! 今なら、優しい俺様が見逃してやるからよ! ガハハハッ!!」
「はあ。低能な奴らの会話は聞くだけで頭が痛いですね……」

 フードの少年はそう言って、額を押さえる。

「低能――!? ちっ。生意気言いやがって、このガキがっ!!」

 そう言って殴りかかる男。しかしその拳をひらりと躱すフードの少年。

「身のこなしだけは得意みたいだな……おいっ! あいつを呼べ!!」
「――あいつ?」

 それから男の後ろから、中学生くらいの少年が姿を現した。

「お、お父さん……僕は何をすればいいの?」

 震えながらそう言う中学生の少年。

「ああ、このガキをお前の力でいたぶってくれればいい」
「で、でも……この人、何も悪いこと――」
「お前は俺の言う事だけ聞いておけばいいんだよ!!」

 そう言って少年を何度も打つ男。

「痛い、痛いよ、お父さん……わかったから、もう打たないで――!」
「初めからそう言えばいいんだ。ふんっ、やっちまえ!!」
「はい……」

 そう言って打たれた少年は、恐怖で身体を震わせながらフードの少年の正面に立つ。

「見ていてあまり気分のいいものではないですね」

 フードの少年は先ほどよりも低い声でそう言った。

「ふんっ。すぐにそんな口叩けないようにしてやるさ」

 そう言って男はニヤリと笑った。

「ごめんなさい。あなたに恨みはないけれど、でも――」
「いいよ。君は悪くない。それに、僕は君より強いから」

 そう言って、フードの少年はその身体を大蛇に変えた。

「何だと!? お前、能力者だったのか!!」

 そして蛇になった少年は男に飛びかかる――。
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