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24 失礼な男
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ケイヒル卿の笑顔にやられて固まるマリアだったが、ケイヒル卿と一緒にいた騎士の何気ない言葉によって、ハッとさせられる。
「あっ! 一瞬、誰だか分からなかったけど、君はお嬢様を助けてくれたあの天パの田舎娘?
へぇー、上手く化けたねぇ。見た目だけじゃなくて、話し方も綺麗になっていて別人のようだ。
女って怖いよね。見た目なんて簡単に変わってしまうんだから」
それは、マリアが一番言われたくない言葉だった。
過去の恥ずかしい自分の行動や姿を知っている人からの嘲笑うような言葉。
今まではこんな人と偶然顔を合わせなかっただけ。
ダサかった田舎娘マリアの醜態を知るケイヒル卿やお嬢様は、良い人だから親切にしてくれたのであって、普通の人ならあの時のマリアを見て、馬鹿にしてきても仕方がないと思っていた。
だが、実際に自分の目の前で言われるとけっこう傷つく。
「ダレル、マリアさんにその言い方は失礼だぞ!
マリアさん、コイツはいつもこんな感じなんだ。だから気にしないでくれ」
さすがケイヒル様だと思った。こんな時もパッとしない平民の自分を気遣ってくれるのだから。
そして〝ダレル〟と呼ばれている騎士は、ケイヒル卿には敵わないが、黒髪の綺麗な美丈夫だった。
そういえば公爵令嬢であるお嬢様の護衛騎士達は、どの騎士も整った容姿をしてモテそうな人ばかりだったことを思い出す。見た目も騎士としての能力も一流の人達なのだろう。
そんな人達から見たら私なんて虫ケラ以下よね。こんな態度を取られたって仕方がない……
「いえ。そちらのお方は間違ったことを言ってませんから……
私達は他にも挨拶しなければならない人がいますので、これで失礼致します。
アンさん、行きましょうか?」
「……ええ。ケイヒル様、ダレル様、私達は失礼致します」
本当は、こんな場でわざわざ挨拶をしに行くような人なんていなかった。
でも、あのダレルとかいう騎士にこれ以上何かを言われたら、感情が抑えきれなくなって、また醜態を晒してしまうかもしれない。
だったらその前に適当なことを言って、この場を離れた方がいいだろうとマリアは判断したのだ。
一緒にいたアンもマリアの気持ちを察してくれたから良かった。
しかしアンの方は表情には出していなかったが、今にもはらわたが煮え繰り返りそうになっていた。
マリアにはステキな恋をしてもらいたいと思って、出会いがありそうな場所にわざわざ連れてきたのに。
あのダレルとかいう感じの悪い騎士のせいで、楽しいはずの食事会で落ち込んでしまったじゃないの!
マリアは綺麗になるために毎日努力しているし、言葉遣いやマナーだって、自分は田舎者で何も知らないから教えて欲しいって言って頑張ってきた。それなのにバカにするなんて酷い。
そういえば……、マリアはあまり騎士は好きじゃないって言っていたわ!
ダレルみたいな感じの悪い奴がいるから、騎士が苦手なのかもしれない。騎士って他の職種よりモテるから、調子に乗った奴が多いんだよね。
よーし! マリアには穏やかな性格の補佐官や秘書官をしている男でも紹介してあげよう。騎士が嫌なら文官よね!
自分に自信を持てないでいるマリアを何とかしてあげたいと考えているアンは、心の中で考えを巡らせる。
「マリア。さっきの男の言ったことは気にしなくていいよ。
ほら、あっちの席に行こう。あそこなら周りにいる人はみんないい奴ばかりだから、何も心配しなくて大丈夫だ」
アンは公爵家で文官をしていて、穏やかで無害そうな男性のテーブルにマリアを連れて行くことにした。
「……アンさん、色々とお気遣いありがとうございます」
ダレルのせいでテンションが下がっていたマリアだったが、アンが紹介してくれた文官をしているという男性達は普通に良い人で話しやすい人ばかりだった。
ずっと田舎で生活していたから、こういう場に慣れてないと言うと、彼らはマリアを馬鹿にすることなく気遣ってくれる。
「マリアさん、料理は足りてる?
ここは肉料理が美味しいから食べてみるといい。ほら、取り分けてあげるよ」
「ありがとうございます。
……本当ですね。凄く美味しいです!」
単純なマリアは、美味しいステーキを食べてすぐにご機嫌になっていた。
「あっ! 一瞬、誰だか分からなかったけど、君はお嬢様を助けてくれたあの天パの田舎娘?
へぇー、上手く化けたねぇ。見た目だけじゃなくて、話し方も綺麗になっていて別人のようだ。
女って怖いよね。見た目なんて簡単に変わってしまうんだから」
それは、マリアが一番言われたくない言葉だった。
過去の恥ずかしい自分の行動や姿を知っている人からの嘲笑うような言葉。
今まではこんな人と偶然顔を合わせなかっただけ。
ダサかった田舎娘マリアの醜態を知るケイヒル卿やお嬢様は、良い人だから親切にしてくれたのであって、普通の人ならあの時のマリアを見て、馬鹿にしてきても仕方がないと思っていた。
だが、実際に自分の目の前で言われるとけっこう傷つく。
「ダレル、マリアさんにその言い方は失礼だぞ!
マリアさん、コイツはいつもこんな感じなんだ。だから気にしないでくれ」
さすがケイヒル様だと思った。こんな時もパッとしない平民の自分を気遣ってくれるのだから。
そして〝ダレル〟と呼ばれている騎士は、ケイヒル卿には敵わないが、黒髪の綺麗な美丈夫だった。
そういえば公爵令嬢であるお嬢様の護衛騎士達は、どの騎士も整った容姿をしてモテそうな人ばかりだったことを思い出す。見た目も騎士としての能力も一流の人達なのだろう。
そんな人達から見たら私なんて虫ケラ以下よね。こんな態度を取られたって仕方がない……
「いえ。そちらのお方は間違ったことを言ってませんから……
私達は他にも挨拶しなければならない人がいますので、これで失礼致します。
アンさん、行きましょうか?」
「……ええ。ケイヒル様、ダレル様、私達は失礼致します」
本当は、こんな場でわざわざ挨拶をしに行くような人なんていなかった。
でも、あのダレルとかいう騎士にこれ以上何かを言われたら、感情が抑えきれなくなって、また醜態を晒してしまうかもしれない。
だったらその前に適当なことを言って、この場を離れた方がいいだろうとマリアは判断したのだ。
一緒にいたアンもマリアの気持ちを察してくれたから良かった。
しかしアンの方は表情には出していなかったが、今にもはらわたが煮え繰り返りそうになっていた。
マリアにはステキな恋をしてもらいたいと思って、出会いがありそうな場所にわざわざ連れてきたのに。
あのダレルとかいう感じの悪い騎士のせいで、楽しいはずの食事会で落ち込んでしまったじゃないの!
マリアは綺麗になるために毎日努力しているし、言葉遣いやマナーだって、自分は田舎者で何も知らないから教えて欲しいって言って頑張ってきた。それなのにバカにするなんて酷い。
そういえば……、マリアはあまり騎士は好きじゃないって言っていたわ!
ダレルみたいな感じの悪い奴がいるから、騎士が苦手なのかもしれない。騎士って他の職種よりモテるから、調子に乗った奴が多いんだよね。
よーし! マリアには穏やかな性格の補佐官や秘書官をしている男でも紹介してあげよう。騎士が嫌なら文官よね!
自分に自信を持てないでいるマリアを何とかしてあげたいと考えているアンは、心の中で考えを巡らせる。
「マリア。さっきの男の言ったことは気にしなくていいよ。
ほら、あっちの席に行こう。あそこなら周りにいる人はみんないい奴ばかりだから、何も心配しなくて大丈夫だ」
アンは公爵家で文官をしていて、穏やかで無害そうな男性のテーブルにマリアを連れて行くことにした。
「……アンさん、色々とお気遣いありがとうございます」
ダレルのせいでテンションが下がっていたマリアだったが、アンが紹介してくれた文官をしているという男性達は普通に良い人で話しやすい人ばかりだった。
ずっと田舎で生活していたから、こういう場に慣れてないと言うと、彼らはマリアを馬鹿にすることなく気遣ってくれる。
「マリアさん、料理は足りてる?
ここは肉料理が美味しいから食べてみるといい。ほら、取り分けてあげるよ」
「ありがとうございます。
……本当ですね。凄く美味しいです!」
単純なマリアは、美味しいステーキを食べてすぐにご機嫌になっていた。
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