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アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します
今までの婚約者と我慢をやめる私
熱が下がったとはいえ、まだ体調が戻りきらない私は、しばらく学園を休み療養することになった。
一人で過ごしていると、色々考えてしまう。
今までは貴族令嬢として、何の疑問も持つ事なく生きて来たと思う。実家の侯爵家は裕福だし、母は元第ニ王女で、祖父母は元国王夫妻。権力のある家だ。大好きな両親は私を愛して大切に育ててくれたし、弟も私を慕ってくれている。他所から見たら、幸せにしか見えないと思う。今のところは…。
問題はこれからの人生である。貴族令嬢として、子供の頃からの婚約者が一応いるのだか、アラサーの婚活女子の記憶が戻った今、その婚約は不満でしかない。
婚約者は国家の防衛を担っている名門の公爵家の跡取りで、黒髪にアメジストの色の目を持つ18歳。整った顔立ちで、どこか冷たそうな印象がある。騎士団を取りまとめる家門なので、剣の腕もよく、長身であり、モテるタイプだと思われる。
元々は公爵が父の親友ということで、小さい頃から交流があった。そして気付いたら、婚約者という事になっていた。
別に自分が望んだ相手ではなかったが、政略結婚が当たり前なので、そんなものだと。婚約者は普通にカッコいいし、優しいし、仲もよかったので、まぁいいかと思っていた。それなりに好きな気持ちもあったと思う。
しかし、いつからだろうか。優しかった婚約者が変わったのは。
一緒にお茶会や夜会に行くことを嫌がるような素振りを見せ、会っても素っ気なく、目も合わせてくれない。というか、会うのも嫌そうに見える。子供の頃はよく見せてくれた笑顔なんて、もう何年も見てない。
夜会のエスコートも義務で仕方なくといった感じで、嫌そうだし、ダンスなんて一緒に踊ったのは、デビュタントの時くらい。ここ何年かは会話もまともにしていない気もする。
学園では2つ上の学年の先輩だが、婚約者の周りをうろつく女性も見かける。まぁ、モテる男だから当たり前なのかもしれないが。
婚約者である自分とは口も聞いてくれないのに、取り巻きの女性たちとは、普通に話している姿を見るのは正直、心苦しい。
何か彼に嫌われるようなことをしてしまったか、悩んだこともあったし、関係を修復しようと色々考えてみたけど、空回り。
学園で挨拶しても素っ気なく、取り巻きの女性からは、鼻で笑われたこともある。
私とは一緒にいたくないし、一緒にいるところを見られたくない、話もしたくない、それくらい嫌いってことなのだと思うようになっていた。
それでも黙って耐えていたのは、大好きな家族の為、家の為である。貴族の令嬢として、婚約者とは上手くやらなければならない。アンネマリーはずっとそう思っていた。それに、いつかは昔の仲の良かった時のように戻れればと、少しの期待を持って。
アラサー杏奈の記憶が戻ってしまった以上は、今までのように自分を押し殺して過ごすのは無理だろう。自由で楽しい、独身貴族だったころの記憶は心の中で輝いている。
アラサー杏奈が、自分自身に問いかけてみた。
question
あなたは、病めるときも健やかなる時も、富める時も、貧しき時にも、モラハラに耐え、仮面夫婦の孤独を我慢し、愛人を囲われても、白い結婚と言われても、夫として敬い、愛することが出来ますか?
無理ですね!出来ません!
あんなヤツと結婚は無理だわー。前世、庶民代表にとして生きていた私としては、こんな結婚するくらいなら、平民になって自由に生きていきたい!これは、真剣に婚約解消を考えなければ。
しかし、何でもっと早く前世の記憶がもどらなかったのだろう。子供の時なら、お父様と結婚するとか言って、不本意な婚約を拒否したり出来たかもしれないのになぁ。婚約破棄して平民落ちする可能性を考えての準備期間も長くとれたかもしれない。
今からだとちょっと遅いよね。
これから婚約解消に向けてどうすればいいか、自分だけでは答えが見つからない。誰かに相談しなければ。うーん、とりあえず、身近なところで
「アル、そこにいる?」
「お呼びでしょうか?」
いつも近くにいる護衛騎士兼、従者のアルを呼んでみる。
「相談なんだけどね。もしも、婚約解消するとしたら、家の恥として絶縁されるでしょう。そしたら私は平民としてやっていけると思う?」
「お嬢様、まだ体調が戻らないようですね。すぐに医師を手配しましょうか。」
真面目に相談しているのに、サラッと話を流しやがって。主人って思ってねーな、アルめ!!
「真面目な人生相談なんだけど!」
アルは信じられないといった表情で
「お嬢様、まず婚約解消とか破棄自体があり得ませんよ。婚約破棄する理由がないのに。」
「婚約破棄する理由ね…。」
はぁー、私は思わず遠い目になる。
「あの人では、幸せになれないって理由ではダメよね。」
「お嬢様はずっと婚約者様をお慕いしていたじゃないですか?」
お慕いしているように見えていたのか。ああ、そんな時期もあったのかしら。
「それなりにお慕いしていた時もあったけど、もう疲れてしまったみたい。」
「疲れたというのは、何となく分からなくもないですが、お嬢様がそのような話をされるのは初めてなので、こちらとしても驚いてます。しかし、なぜ今そんな風に思われたのですか?」
確かに今までは良き婚約者でいようと努めていた私が、急に婚約解消したいなんてビックリよね。
「何というかね、病気で生死を彷徨ってみて、今までの自分の人生に疑問を持ってしまって。自分を押し殺して、我慢して、愛もない結婚とか嫌になってしまって。貴族の政略結婚なんて、そんなものかもしれないけれど。でもどうせ結婚するなら、お父様とお母様みたいな愛のある夫婦になりたいし。」
「確かに、旦那様と奥様は素敵な夫婦ですから、憧れる気持ちは理解できるます。その正直な気持ちを、旦那様と奥様に話されてはいかがですか。」
「2人に話して大丈夫かしら。」
両親に迷惑をかけてしまうよね。
「大丈夫だと思いますよ。お嬢様をあそこまで溺愛しているのですから。絶縁もあり得ません。しかし…、お嬢様は何か変わられましたね。口調も砕けているし、今までのお嬢様には無かった発想を口にするし。」
アルがじーっと何かを探るように私を見つめてくる。無駄に鋭いヤツめ!
「だから、今まで我慢して隠していたけど、本当はこんな性格だったの。だけど、もう我慢するのやめるから、よろしくね!!」
一人で過ごしていると、色々考えてしまう。
今までは貴族令嬢として、何の疑問も持つ事なく生きて来たと思う。実家の侯爵家は裕福だし、母は元第ニ王女で、祖父母は元国王夫妻。権力のある家だ。大好きな両親は私を愛して大切に育ててくれたし、弟も私を慕ってくれている。他所から見たら、幸せにしか見えないと思う。今のところは…。
問題はこれからの人生である。貴族令嬢として、子供の頃からの婚約者が一応いるのだか、アラサーの婚活女子の記憶が戻った今、その婚約は不満でしかない。
婚約者は国家の防衛を担っている名門の公爵家の跡取りで、黒髪にアメジストの色の目を持つ18歳。整った顔立ちで、どこか冷たそうな印象がある。騎士団を取りまとめる家門なので、剣の腕もよく、長身であり、モテるタイプだと思われる。
元々は公爵が父の親友ということで、小さい頃から交流があった。そして気付いたら、婚約者という事になっていた。
別に自分が望んだ相手ではなかったが、政略結婚が当たり前なので、そんなものだと。婚約者は普通にカッコいいし、優しいし、仲もよかったので、まぁいいかと思っていた。それなりに好きな気持ちもあったと思う。
しかし、いつからだろうか。優しかった婚約者が変わったのは。
一緒にお茶会や夜会に行くことを嫌がるような素振りを見せ、会っても素っ気なく、目も合わせてくれない。というか、会うのも嫌そうに見える。子供の頃はよく見せてくれた笑顔なんて、もう何年も見てない。
夜会のエスコートも義務で仕方なくといった感じで、嫌そうだし、ダンスなんて一緒に踊ったのは、デビュタントの時くらい。ここ何年かは会話もまともにしていない気もする。
学園では2つ上の学年の先輩だが、婚約者の周りをうろつく女性も見かける。まぁ、モテる男だから当たり前なのかもしれないが。
婚約者である自分とは口も聞いてくれないのに、取り巻きの女性たちとは、普通に話している姿を見るのは正直、心苦しい。
何か彼に嫌われるようなことをしてしまったか、悩んだこともあったし、関係を修復しようと色々考えてみたけど、空回り。
学園で挨拶しても素っ気なく、取り巻きの女性からは、鼻で笑われたこともある。
私とは一緒にいたくないし、一緒にいるところを見られたくない、話もしたくない、それくらい嫌いってことなのだと思うようになっていた。
それでも黙って耐えていたのは、大好きな家族の為、家の為である。貴族の令嬢として、婚約者とは上手くやらなければならない。アンネマリーはずっとそう思っていた。それに、いつかは昔の仲の良かった時のように戻れればと、少しの期待を持って。
アラサー杏奈の記憶が戻ってしまった以上は、今までのように自分を押し殺して過ごすのは無理だろう。自由で楽しい、独身貴族だったころの記憶は心の中で輝いている。
アラサー杏奈が、自分自身に問いかけてみた。
question
あなたは、病めるときも健やかなる時も、富める時も、貧しき時にも、モラハラに耐え、仮面夫婦の孤独を我慢し、愛人を囲われても、白い結婚と言われても、夫として敬い、愛することが出来ますか?
無理ですね!出来ません!
あんなヤツと結婚は無理だわー。前世、庶民代表にとして生きていた私としては、こんな結婚するくらいなら、平民になって自由に生きていきたい!これは、真剣に婚約解消を考えなければ。
しかし、何でもっと早く前世の記憶がもどらなかったのだろう。子供の時なら、お父様と結婚するとか言って、不本意な婚約を拒否したり出来たかもしれないのになぁ。婚約破棄して平民落ちする可能性を考えての準備期間も長くとれたかもしれない。
今からだとちょっと遅いよね。
これから婚約解消に向けてどうすればいいか、自分だけでは答えが見つからない。誰かに相談しなければ。うーん、とりあえず、身近なところで
「アル、そこにいる?」
「お呼びでしょうか?」
いつも近くにいる護衛騎士兼、従者のアルを呼んでみる。
「相談なんだけどね。もしも、婚約解消するとしたら、家の恥として絶縁されるでしょう。そしたら私は平民としてやっていけると思う?」
「お嬢様、まだ体調が戻らないようですね。すぐに医師を手配しましょうか。」
真面目に相談しているのに、サラッと話を流しやがって。主人って思ってねーな、アルめ!!
「真面目な人生相談なんだけど!」
アルは信じられないといった表情で
「お嬢様、まず婚約解消とか破棄自体があり得ませんよ。婚約破棄する理由がないのに。」
「婚約破棄する理由ね…。」
はぁー、私は思わず遠い目になる。
「あの人では、幸せになれないって理由ではダメよね。」
「お嬢様はずっと婚約者様をお慕いしていたじゃないですか?」
お慕いしているように見えていたのか。ああ、そんな時期もあったのかしら。
「それなりにお慕いしていた時もあったけど、もう疲れてしまったみたい。」
「疲れたというのは、何となく分からなくもないですが、お嬢様がそのような話をされるのは初めてなので、こちらとしても驚いてます。しかし、なぜ今そんな風に思われたのですか?」
確かに今までは良き婚約者でいようと努めていた私が、急に婚約解消したいなんてビックリよね。
「何というかね、病気で生死を彷徨ってみて、今までの自分の人生に疑問を持ってしまって。自分を押し殺して、我慢して、愛もない結婚とか嫌になってしまって。貴族の政略結婚なんて、そんなものかもしれないけれど。でもどうせ結婚するなら、お父様とお母様みたいな愛のある夫婦になりたいし。」
「確かに、旦那様と奥様は素敵な夫婦ですから、憧れる気持ちは理解できるます。その正直な気持ちを、旦那様と奥様に話されてはいかがですか。」
「2人に話して大丈夫かしら。」
両親に迷惑をかけてしまうよね。
「大丈夫だと思いますよ。お嬢様をあそこまで溺愛しているのですから。絶縁もあり得ません。しかし…、お嬢様は何か変わられましたね。口調も砕けているし、今までのお嬢様には無かった発想を口にするし。」
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