元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
19 / 161
アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

私の大切な人たち

しおりを挟む
 長期休暇に入ったある日、私はレベッカ達と4人で人気のカフェにお茶をしに来ている。

 レポートや卒業認定試験でなかなか来ることが出来なかったので、隣国に旅立つ前に4人で来ようと約束していたのだ。

 ここのアフタヌーンティーセットが大好きなのだ。小さめにカットされたサンドウィッチに、かわいいタルトやケーキ、それにロイヤルミルクティーを合わせるのが、私流。

 次もまた4人で来よう、その時はみんな結婚してるかな、…なんて話が止まらない。

「3人と出会えて幸せだったわ。いつも守ってくれてありがとう。これから、寂しくなるけど、1人で頑張ってみるわ。」

 すると、ローズがニヤニヤして

「1人じゃないでしょ?マディソン様も卒業したら、隣国に留学されるわよね?」

「知ってたの?」

「宰相の家は、貴族学園卒業したら、留学するって有名な話よね。」

 レベッカもリーゼも知っていたようだ。私だけ知らなかったの?

「マディソン様なら、アンを守ってくれるからいいと思うな。」

 リーゼは今日もストレートだな。

「この先、自分の気持ちがどうなるかは分からないけど、今は尊敬する偉大な先輩よ。」

 すると、リーゼは手紙で色々と報告してねー、だって。

「私はアンの護衛騎士様がアンには合っていると思うわ。」

 ローズは騎士様が好きよねー。

「アルは好きだけど、家族よ。」

 そんな話をしていたら、

「アン、言うか言わないか迷っていたけど…。しばらく会えなくなるから、話しておくわ。」

 レベッカが珍しく?真剣だ。

 私が婚約を白紙にして少し経った頃に、レベッカの婚約者の魔術師団長の子息を通して、私の仮の元婚約者がレベッカに接触してきたそうだ。話をしたいが、全く会えないので、何とかしてもらいたいと。

 彼と顔を合わせたくない私は、とにかく彼に合わないように細心の注意を払った。親友たちは勿論、クラスメイト達まで協力してくれた。

 彼が何度か私の教室に尋ねて来たことは知っている。しかし、今まで私の教室に来たことがない彼が来たら、教室近くまで来た時点で目立つ。それに気付いたクラスメイトが知らせてくれ、バルコニーやトイレ、空き教室に避難したことがあった。机の影にしゃがんで隠れたりもした。

 昼食は、テイクアウトした物をレベッカ達やクラスメイトが届けてくれたし、教室を移動する時や、行事で同じ空間にいる時は、レベッカ達だけでなく、クラスメイトが私を囲んで、接触しにくいようにしてくれた。

 本当にクラスメイト達には頭が上がらない。

 そして、シリル様だ。図書室で勉強している時、さり気なく近くにいて勉強を教えてくれていたが、それだけではない気がする。さすがの彼もシリル様には気を遣うのか、図書室に来ることは無かった。しかも、途中からは王宮の図書館を中心に利用していたし。

 シリル様と彼はクラスは一緒だが、グループが違う。シリル様は、宰相の家門だけあって、まわりの友人も文官志望の方ばかり。そして彼は国の8つの騎士団をまとめる、防衛の要の家門なので、騎士志望の友人に囲まれている。
 知り合いだが、そこまでの仲ではないと言う関係だと思う。卒業後は王太子殿下の側近同士になるはずだが。

 話は戻るが、彼がレベッカに接触して来た時に、レベッカは今更何を話すのかと冷ややかに返し、こんな接触はしないで欲しいことを伝えて、話を終わらせたそうだ。

 さすがレベッカ!今更話すことなんて何も無いのだ。仮とは言え、婚約者であった頃でも話すことが無かったのだから。
 元アラサー婚活女子には、去る者を追う暇はないのだ。

「嫌な思いをさせて、ごめんなさい。これからも、無視していいからねー。」

 私の言葉にふふっと笑うレベッカ達。

 私はこれから彼とは関わらずに生きていく。貴重な幼少期から青春時代までを、アイツの為に時間を無駄にしたのだ。この恨みはなかなか消えないだろう…と言うことも、レベッカ達に話しておいた。

 すると、ローズが

「アンはもう新しい道を見つけて、前を向いているけど、彼はどうかしらね。この前のパーティーも、見てられなかったわよね。」

 この前のパーティー?自分が楽しすぎて、彼の存在は忘れてたわ。
 せっかくお望み通りに婚約の話が無くなったのだから、取り巻きの令嬢の誰かとよろしくやればいいじゃない、なんて話したら、アンは強いから、隣国でも楽しんで来れるわね、大丈夫そうねと言われた。

 親友達と沢山お喋りをし、次回、また4人で会う約束をして別れたのであった。


 また会いたいな。私の大切な人たち…。


 





 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...