元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
21 / 161
アンネマリー編〜転生に気付いたのでやり直します

閑話 ある公爵令息の話 1

しおりを挟む
 彼女と初めて会った時、その可愛さに目を奪われた。


 父の昔からの親友だと言うスペンサー侯爵が、我が公爵家に一緒に連れてきた娘のアンネマリー嬢。

 初めて会ったのは私が8歳で彼女は6歳の時。母親である元第二王女によく似た美少女で、水色のパッチリした大きな瞳に、整った愛らしい顔立ち。プラチナブロンドの美しい髪はサラサラしていて、思わず触れたくなってしまう程だ。
 
 見た目は美しい完璧な御令嬢だが、貴族令嬢にありがちな傲慢さがなく、明るく素直な、皆に愛される性格であったと思う。何度か会ううちに、すっかり打ち解け、屈託のない笑顔で私を「お兄様」と呼び、かわいい妹のようだと思っていた。

 しかしある日、自分の本当の気持ちに気付くことになる。この時、私は10歳で彼女は8歳であった。

 きっかけは王家の主催する、親子で参加したお茶会での事だ。
 
 彼女を妖精姫と呼ぶ大人達。美しい彼女を見て、顔を赤くする令息達。…面白くなかった。

 そして、明らかに彼女を特別扱いする近衛騎士達。後で母に聞いたが、元第二王女に憧れていた近衛騎士が沢山いたので、元第二王女にそっくりな美少女のアンネマリーは近衛騎士達にとって特別なのだろうと。…とても不愉快だと思った。

 従兄弟の第一王子殿下に至っては「アン」と彼女を呼び、手を繋いだり、頭を撫でたりと距離がとても近い。彼女も嫌がることなく、ニコニコして「お兄様」と呼ぶ。…お兄様って殿下にもそう呼んでいるのか?
自分だけがそう呼ばれているのではないのか。私は彼女にとって特別ではないのか?

 自分の心の中が、ドス黒く染まっていくのが分かった。

 しかし、彼女はそのようなことにも気づかず、あの屈託のない笑顔を見せて、周りに話し掛けたり、お菓子を勧めたりと、更に魅了するので、見ているこっちがハラハラしてしまう。

 更にお茶会に参加していた大人達の会話を聞いて、どうしようもない気持ちになるのであった。

「スペンサー家のアンネマリー嬢は、美姫と言われた元第一王女と第二王女に劣らないくらい美しいな。」

「今の王家には姫がいないから、何かあればアンネマリー嬢が、他国の王族に嫁ぐのだろうな。」

「そうなるだろう。殿下の婚約者のファーエル公爵令嬢と一緒にマナーや教養を学んでいるらしいから。」


 何を話しているんだ。アンネマリーが他国に嫁ぐ?そんなの許さない。絶対に誰にも渡すものか。

 お茶会が終わり公爵邸に戻った後、両親に今日聞いてしまった話について聞いてみることにした。

「父上、今日のお茶会で耳にしたのですが、アンネマリー嬢はいずれは他国に嫁ぐのでしょうか?」

「ああ、そのことか。決まってはいないが可能性はある。王家の血を引く未婚の姫は、アンネマリー嬢だけだからな。」

「くっ!そんなの嫌です。」

「アンネマリー嬢が好きなのか?」

「はい。誰にも渡したくないのです。」

「…そうか。侯爵家に話してみるか。」

「ふふっ。アンネマリーちゃん、可愛いし、性格もいいから人気がありそうね。頑張りなさい。」

 何故か母上は楽しそうにしていた。


 後日、私と両親、スペンサー侯爵で話す機会を設けられた。

「君はアンネマリーが好き?婚約したいの?」

 無駄を嫌う侯爵がストレートに聞いてくる。

「はい。アンネマリー嬢が好きです。婚約をお許し頂けませんか?」

「条件があるけど、いいかな?」

「条件とは何でしょうか?」

「私達夫婦は貴族では珍しく、恋愛で結ばれた結婚だから、アンネマリーにも望む人と結婚してもらいたいと思っている。今のアンネマリーはまだ恋愛とか婚約について、まだ深く理解していないようだから、今すぐ婚約というのは、反対なんだ。」
「でも、知っているようだけど、アンネマリーは王家の血を引く唯一の未婚の令嬢だから、このまま婚約者をつくらないと他国からの縁談が来てしまう可能性がある。私達は他国にアンネマリーは嫁がせたくないから、それも嫌でね。」
「だから、18歳になるまでは、君と仮の婚約と言うことにして、その時にお互いが思い合っていて納得していたら、婚約と結婚の話を認めるということでいいだろうか。もちろん、18歳になる前に、君の心変わりやアンネマリーが違う人を選ぶ可能性もあるから、その時は仮の婚約の話も白紙に出来るということにして。」
「それでもいいなら、今すぐにでも仮ではあるが、婚約を認めるよ。」

 18歳になった時に、お互い思い合っていれば正式に婚約と結婚を認めてもらえる。それなら今は他国からの縁談避けであろうと我慢しよう。仮とはいえ婚約者になれるならそれでいい。そのくらい、彼女が好きだし、誰にも渡したくなかった。
 
 私は侯爵の条件をのむことにした。


 この条件が後の自分を苦しめるとは知らずに。




第一王子殿下→後の王太子殿下
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

処理中です...