元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
35 / 161
マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

閑話 断罪 1

しおりを挟む
「私をずっと側で守ってくれると、おっしゃっていたではありませんか!どうして…。」


 普段人前で全く感情を出さず、完璧な淑女で、人形の様だと言われていた、エベスト公爵令嬢が取り乱している。
 なんて醜い女だ!今までこんな女の為に自分を押し殺して、令嬢方が大好きな騎士を演じてきた自分を褒めてやりたい。



 あの後、無事に隣国入りし、隣国王太子殿下の護衛騎士の1人として毎日を過ごしていた。アンネマリーの暗殺に関わっていると見られる、エベスト公爵令嬢とは、すぐに顔を合わせる事になる。

 彼女は一応、王太子殿下の婚約者候補の一人ではあった。表向きだが。しかし、王家も王太子殿下もバカではない。真っ黒な公爵家の令嬢を婚約者にするつもりはないが、他に婚約者を決めてしまうと、その令嬢が危険なので、まだ誰も指名せずに、エベスト公爵令嬢と他に数人、婚約者候補を置いていたようだ。なかなか、婚約者を決めない事にヤキモキしているのか、婚約者候補のお茶会以外の日にも、公爵家の力を使って、強引に殿下に会いにくるのだ。

 王太子殿下もあんな女に付き纏われて大変だ。あんな女と比べたら、アンネマリーは天使だ。もし彼女がこの国に来て、こっちで社交したらと考えると、それはそれで怖かったな。今となっては叶わないが…。

 殿下もかなり嫌になっているらしく、かなり冷たい。しかし、さすが自国の王太子殿下の従兄弟とあって、腹黒い計画を立てるのであった。

 定期的に開かれる婚約者候補のお茶会にて。
 あの女は、公爵令嬢という高い身分を利用して、他の令嬢にお茶会でも、姑息な嫌がらせをする。それはいつもの事なので、今日はどのタイミングで嫌がらせをするか、殿下は密かに目を光らせていた。
 そして、早く帰ってほしい他の令嬢のドレスに、意図的に紅茶をかけた瞬間を見逃さなかった。言い逃れ出来ないくらい、しっかりと目撃されていたことを知ったあの女は、流石に何も言えない。そこで、殿下は公爵令嬢のプライドをへし折るように、他の令嬢の前で諭すのであった。

「君は本当にエベスト公爵家の令嬢か?公爵家では、紅茶はドレスに飲ませる物と教えているのか?それで国母になろうとは、恥を知れ!顔も見たくない。今すぐここを去る様に。」

 今まで殿下は、人前であからさまな拒絶をしたことが無かったので、ショックを受けたようだ。しかし、さすが表向きは、完璧な淑女と言われる令嬢だ。表情を変えずに、失礼しますと言って退出していく。
 そのタイミングで殿下は、護衛騎士の中で一番下っ端の私に、令嬢を馬車まで送る様に、皆の前で指示をだす。そして、始めは顔を覚えてもらう事から始まった。
 その様な事が徐々に増え、お茶会では、エベスト公爵令嬢のアラを探し、そこを他の令嬢達の前で攻撃するのが、恒例となっていった。殿下は今までの恨みが溜まっているのか、恐らく楽しんでいる。それとは対象的に、エベスト公爵令嬢は追い詰められているのが、何となく雰囲気でわかる様になってきた。
 そして、顔を覚えて貰った私は、落ち込んでいるであろうエベスト公爵令嬢に、令嬢を肯定するような言葉を掛け、少しずつ距離を縮めていく。エベスト公爵令嬢は美しく聡明で完璧だから、殿下も求めるものが厳しくなっているのでしょう、あなたなら大丈夫、あなたは素晴らしい、あなたは国母に相応しい、みんなあなたに期待している、など心にもない事を伝え、始めは私のことなど、あまり気にしていないようであったのが、段々、私に声を掛けてくれるようになってきたのだ。

 更に殿下は仕掛ける。恒例のお茶会でのことだ。アンネマリーが亡くなって1年になる位の時に、かわいい従姉妹の令嬢が、亡くなって1年が経つ事、ずっと会えるのを楽しみにしていたのに、急に亡くなってしまったことなどを、令嬢達に語り始めたのだ。エベスト公爵令嬢がどのような反応をするのかを見るために。
 完璧な淑女と言われる彼女は、表情は変えなかったが、聞いてしまった。衰弱死ですか…と口にしていたところを。あれは真実を知っている口ぶりだ。あの女は暗殺に関わっている。
 私は怒りを顔に出さないように、感情を押し殺す。こんなに辛いとは。

 その頃になると、あの女が王太子殿下に否定され続け、憔悴して帰る時に馬車に送るのが、わたしの固定の仕事になり、彼女との距離を詰めつつあった。
 私は、アンネマリーの好きな本の騎士の言葉を借りることにした。あなたが本当に辛い時に支え、お守りすることをどうかお許しくださいと。あの女にこんな事を言うなんて、心が折れそうになるのを堪えて。違う日には、王太子妃になったあなたを支えたい、こんなに守りたいと思った人はあなたが初めてだと。
 言っていて気分が悪くなりそうなのを我慢した。

 そして、あの女が私を見る目が変わった。そろそろ、動こうかと考えている時にマディソンの影から、手紙をもらった。

 マディソンからの手紙には、高等学園で薬学の研究をしている博士が、研究費としてエベスト公爵家から個人的に多額の援助を受けているようだと言うこと。エベスト公爵家の使用人が、人目を避けるように、時々出入りしている。アンネマリーに使おうとした、毒の出所として調べる価値があると。更に、その博士の日常の動きが事細かく書いてある。研究室に深夜まで一人でこもっていることや、研究室の場所と人気のない経路まで。

 また、エベスト公爵家の分家筋にあたる令息が、最近、本家から、手練れの騎士や傭兵がいたら紹介してほしいと言われていると話していたのを、偶然耳にしたと。そろそろ向こうも仕掛けてきそうだから、気を付けるようにと。

 マディソンは味方だと最高なんだと今更気付く。

 早速、私は魔導師と影を伴って、深夜の研究室に忍び込むことにした。
 前の暗殺者の時のように、背後から遅い、体を拘束して自白剤を飲ませる。結果的にアンネマリーに使用する毒を作ったのはその博士であった。研究バカで人に興味がないので、研究費欲しさに、裏でエベスト公爵家お抱えの薬師として、毒物を作っていたようだ。本当は今すぐ始末したいが、後を考えて、まだ生かしておく必要がある。作った毒物の在処や、証拠の資料の場所を聞いておき、魔導師に自白剤と私達の記憶を消してもらい、ソファーで眠らせ、研究室でうっかり眠ってしまったようにして、退散した。

 次のターゲットは…

 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の秘密の愛娘 

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝グラント公爵家は王家に仕える名門の家柄。 過去の事情により、今だに独身の当主ダリウス。国王から懇願され、ようやく伯爵未亡人との婚姻を決める。 そんな時、グラント公爵ダリウスの元へと現れたのは1人の少女アンジェラ。 「パパ……私はあなたの娘です」 名乗り出るアンジェラ。 ◇ アンジェラが現れたことにより、グラント公爵家は一変。伯爵未亡人との再婚もあやふや。しかも、アンジェラが道中に出逢った人物はまさかの王族。 この時からアンジェラの世界も一変。華やかに色付き出す。 初めはよそよそしいグラント公爵ダリウス(パパ)だが、次第に娘アンジェラを気に掛けるように……。 母娘2代のハッピーライフ&淑女達と貴公子達の恋模様💞  🔶設定などは独自の世界観でご都合主義となります。ハピエン💞 🔶稚拙ながらもHOTランキング(最高20位)に入れて頂き(2025.5.9)、ありがとうございます🙇‍♀️

「君以外を愛する気は無い」と婚約者様が溺愛し始めたので、異世界から聖女が来ても大丈夫なようです。

海空里和
恋愛
婚約者のアシュリー第二王子にべた惚れなステラは、彼のために努力を重ね、剣も魔法もトップクラス。彼にも隠すことなく、重い恋心をぶつけてきた。 アシュリーも、そんなステラの愛を静かに受け止めていた。 しかし、この国は20年に一度聖女を召喚し、皇太子と結婚をする。アシュリーは、この国の皇太子。 「たとえ聖女様にだって、アシュリー様は渡さない!」 聖女と勝負してでも彼を渡さないと思う一方、ステラはアシュリーに切り捨てられる覚悟をしていた。そんなステラに、彼が告げたのは意外な言葉で………。 ※本編は全7話で完結します。 ※こんなお話が書いてみたくて、勢いで書き上げたので、設定が緩めです。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

【完結】記憶にありませんが、責任は取りましょう

楽歩
恋愛
階段から落ちて三日後、アイラは目を覚ました。そして、自分の人生から十年分の記憶が消えていることを知らされる。 目の前で知らない男が号泣し、知らない子どもが「お母様!」としがみついてくる。 「状況を確認いたします。あなたは伯爵、こちらは私たちの息子。なお、私たちはまだ正式な夫婦ではない、という理解でよろしいですね?」 さらに残されていたのは鍵付き箱いっぱいの十年分の日記帳。中身は、乙女ゲームに転生したと信じ、攻略対象を順位付けして暴走していた“過去のアイラ”の黒歴史だった。 アイラは一冊の日記を最後の一行まで読み終えると、無言で日記を暖炉へ投げ入れる。 「これは、焼却処分が妥当ですわね」 だいぶ騒がしい人生の再スタートが今、始まる。

婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました

Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。 順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。 特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。 そんなアメリアに対し、オスカーは… とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】

iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。 小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。 両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。 両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。 しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。 魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。 自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。 一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。 初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。 恋人になりたいが、年上で雇い主。 もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。 そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。 そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。 レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか? 両片思いのすれ違いのお話です。

行動あるのみです!

恋愛
※一部タイトル修正しました。 シェリ・オーンジュ公爵令嬢は、長年の婚約者レーヴが想いを寄せる名高い【聖女】と結ばれる為に身を引く決意をする。 自身の我儘のせいで好きでもない相手と婚約させられていたレーヴの為と思った行動。 これが実は勘違いだと、シェリは知らない。

処理中です...