元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

悪役令嬢と義兄

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 放課後、私の部屋に集まり、ある情報を聞く。情報を教えてくれるのは、ユーリア・グラント侯爵令嬢だ。聖女子時代、隣のクラスであったが、ある時、トイレの鏡を見て溜息をついていた時に、話しかけてみたら、乙女の大敵、ソバカスで悩んでいたので、治癒魔法でちゃっちゃと治してあげた。そこから、違うクラスの仲よし友達みたいな、会えばよく話す仲になった。
 彼女の家は王家の裏の番人と言われる。表が騎士団だとすると、彼女の家門は諜報など裏側を専門に行う。さすが頭も切れるし、剣の腕前もなかなかである。ストレートの黒髪の知的美人だ。そんな家の跡継ぎだけあって、ユーリアはすでに影を使って、色々探ってくれているのだが…。

 義兄が冷たくしていた、あの悪役令嬢は、義兄の従姉妹の伯爵令嬢らしく、義兄がとても嫌っているらしい。しかし、悪役令嬢は初等部の頃から、義兄に付き纏ったりするくらい、思いを寄せているようだ。黙っていればカッコいいから、モテるのね。でも義兄は最近私にベッタリ?だから、恨まれているわねぇー。って、みんな笑いすぎ。私だって、適度な距離感でいたいのに、義兄が怖くて本音が言えないのー。と言ったら、それは第三者が見ても何となく分かるらしい。でしょ、笑い事じゃないの、最近、それで神経をすり減らしていて、ルーベンス先生の優しさに涙が出てきた話をしたら、大笑いされて終わり。冷たいな。

 初等部までは、高位の貴族令嬢がたまたま少なくて、悪役令嬢がその中では身分が上になったらしく、ワガママ放題で、義兄に近づく令嬢に嫌がらせをしていたらしい。しかし、中等部になり、私達聖女子メンバーが編入した事で、自分より身分も学力も上の令嬢が増えた事によって、今までとは立場が変わったから、表向きは静かにしているけど、誰か下の爵位の子達を使って、バレないように何か仕掛けて来そうだから、注意しようとなった。私が1番憎らしいけど、他のメンバーに対しても、すごい目で見てくるから、恐らく私達みんな敵と認めているようだ。だって聖女子メンバー、みんな悪役令嬢より可愛いもんね。僻まれてもしょうがない。

 いい感じに悪役令嬢やってくれているから、少し泳がせて、もっと悪役令嬢役に徹してもらおう。ただ、危険もあるから、みんな単独行動はしないで、引き続き、私はみんなに保護魔法をかける、やられたら上手くやり返す、と言う事になった。
 それと、ユーリアが影から言われたらしいが、すでに悪役令嬢にどこかの影がついて監視しているようだと。しかも2人も。えー、監視されてるの?どんだけ、ブラックリスト入ってるんだよ!

 それと、悪役令嬢以外に、私達に敵意を向けている令嬢たちは、地味に魔法でバレないようにやり返していたら、最近は、目も合わせてもらえなくなってきたようだ。そうだよねー、全部やろうとした事が、自分に跳ね返ってくるんだもん、恐怖だよねー。聖女子メンバーは、小技の効いた魔法が得意な子が多くて、貴族学園で温室育ちの令嬢達には、何が起こっているのか分からないみたいだしね。
 ガリ勉を馬鹿にして、手出ししてきた罰だ!!


 次の日、また朝から義兄からドナドナされた私は、思い切って義兄に話がしたいと言ってみた。そしたら、明日は休みで時間もあるから、今日は夕飯を食べにおいでとなって、2度目のタウンハウスに行く事になったのだが…。今週は両親は領地の別荘に行ってるらしく、不在らしい。えー!!2人なの?でも、まぁ2人で話をしたかったからいいか。
 
 放課後、侯爵家の馬車に乗る為に2人で歩いていると、周りから何か勘違いされてる?最近は私達を見る目が、暖かいの。いやいや、私達は兄妹だからね!もう、そんな風に見られるのもつらい。勇気を出して言ってみる?

「お兄様、やはり兄妹で手を繋ぐのは、ちょっと恥ずかしいですし、私ももうすぐ大人になりますので、1人で歩けますわ。それに、私がお兄様の近くにいる事が多すぎて、お兄様の素敵な出会いを邪魔してしまうのではないかと心苦しいのです。」

「マリーは私と手を繋ぐのが、そんなに嫌なの?」

「嫌なのではなくて、その、何と言うか…。」

「嫌じゃないなら、問題ない。」

「私は、お兄様の女性避けにされてないでしょうか?」

「マリーはそんな風に思っていたのか。私はただ一緒にいたいだけなのに。それとも、誰かに何か言われたか?」

「…言われていません。」

「なら、問題ないね。」

 うぅ。泣きたい。何で分かってくれないの…。

 そんなやり取りをしている間に、タウンハウスに着いてしまった。家令やメイド達は急に来たのに、何故か歓迎してくれている。早速、制服からドレスに着替えさせてくれ、その後、義兄が待つテラスへ案内された。
 義兄は私を見ると、椅子から立ち上がって出迎えてくれる。

「マリーはやっぱり空色のドレスが似合っているな。」

 メイドが選んでくれたドレスなんだけどね。義兄は何だか複雑そうな目で見ている。えー!何でそんな悲しそうなの?

「マリー、ごめん。さっきの話だけど、これからもマリーとはずっと一緒にいたいし、誰にも渡したくない。手を離したらどこかにいなくなってしまう気がして…、不安になってしまうから、手は繋いでいたい。それだけは絶対に譲れない。本当にごめん。」

 そう言って、義兄は私を抱き締める。

 これは告白なのか?それとも、両親を事故で亡くして、寂しくて不安だから側にいて欲しいという事なのか?新しくできた家族を失いたくないし、誰にも渡したくないと言う気持ちなのか?

 わからなーーい!!

 うーん?好きと言われてないから、告白ではなさそうね。アラサーにもなって自惚れたくないし。
 やっぱり、事故で目の前で両親を亡くした心の傷は、まだ癒えないのね。義兄、ごめんね。不安にさせちゃって。不安が解消されるなら、手を繋ぐことくらいは我慢してあげよう。たぶん、義兄は寂しがりやなんだろうね。まだ10代だもん。こっちは中身アラサーだから、優しくしてあげよう。そのうち、ヒロインみたいな子が登場して、義兄の心の傷を癒してくれる日が来る事を信じて。

「お兄様、私こそ、お兄様の気持ちに気付かなくて、酷い事を言ってしまってごめんなさい。私はどこにも行きませんから、いなくなったりしませんわ。お兄様が手を繋ぐことで、安心出来るなら、一緒にいる時は手を繋ぎましょう。」

 義兄が安心出来るように、私も義兄を抱きしめて背中をポンポンする。ふと義兄の顔を見上げると、義兄は緑の綺麗な瞳を細めて微笑み、私のおでこにキスをする。

 ああ、私、この綺麗な緑の瞳を知っている…。

 ん?そうじゃなくて、ちょっとー!キスした?もう、恥ずかしいけど、今日はサービスで許してあげる。本当にしょうがないな。

 しかしこの日を境に、義兄は何かあると人前でも気にせず、おでこにキスをするようになる。

 

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