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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私
閑話 男爵令嬢 2
入学したばかりの彼女は、フォーレス侯爵令息と何となく距離を置いているようにも見えた。義理の兄妹とはいえ、仲がよければ多少の言葉は交わしてもおかしくないのに、彼女は近くに来るような事もしないし、挨拶すらしない。性格が大人しい方なのかと思ったが、同じ聖女子学園から来た友人達とは、とても仲がいいようで、みんなで固まって楽しそうに話をしている。
反対に彼の視線の先には彼女がいる事に気づいてしまった。彼女はフォーレス侯爵令息をどう思っているかは分からないが、彼は義妹である彼女を意識していると思う。彼女を心配して見ているのか、話がしたくて見ているのかは分からないが…。
入学式の次の日、生徒会長のファーエル公爵令息が彼女に会いに来た。今は王家の生徒はいないので、公爵家の生徒会長が、この学園では1番身分が高い方になる。華やかな美形の王子様のような方で、この方に憧れている令嬢はとても多い。そんなすごい方が、新入生の彼女にわざわざ会いにくるなんて。クラスが一瞬ざわつく。しかし、彼女や友人達は何か警戒したような表情だ。普通の令嬢なら、あんなすごい方が自分に会いに来たら、多少は浮かれてしまうのに。聖女子学園から来た令嬢達は、相手の身分や見目で判断しないのかしら。彼女は、緊張感のある表情で廊下に出て行った。廊下で彼女と生徒会長が、どんなやり取りをしているのかは、ここからは分からないが、フォーレス侯爵令息は、心配そうに廊下の方を見つめていたと思ったら、そのまま廊下に出て行ってしまった。
少ししてから、2人で教室に戻って来るが、怒りを隠したような笑顔のフォーレス侯爵令息と、何となく怯えた表情の彼女。何があったのかしら?フォーレス侯爵令息に友人達が話しかけて、事情を聞いている。
「アル、何があった?怒っているのか?」
「生徒会長が以前、領民を助けてくれたお礼だと言って、強引に義妹をお茶会に誘おうとしてたから、丁重に遠慮させてもらって来たよ。義妹も公爵家からの誘いを断れなくて、困っていたようだし。」
「あの生徒会長が、お茶会のお誘いに来るなんて初めて聞いたな。義妹殿は、生徒会長に気に入られているんじゃないか?」
「迂闊にそんな茶会に参加したと噂になったら、生徒会長の婚約者候補だとか勘違いされて、大変だろう。女狐どもに目をつけられそうだ。だから今回は遠慮させてもらって来たよ。」
「あのアルが義妹の為にそこまでするなんて。かわいいのは認めるが…。お前、変わったなー!」
義妹の為に、公爵家のお茶会を断って来た?そんなに大切なの?それとも、もしかして彼女のこと……。
その日の放課後、彼は義妹の手を繋いで帰って行った。あんなに嬉しそうな彼の笑顔は初めて見た。あんな風に、笑う人だったのね。
彼の友人や彼女の友人達は、面白そうに2人を見送っていたが、私は心が壊れそうだった…。
2人が帰った後、図書室で予習しようとするが、全く身に入らない。こんなことは初めてだった。
気持ちが落ち込んだままいたが、外が暗くなってきたので、寮に帰ろうと思い、教室に荷物を取りに行く。ふと。フォーレス侯爵令嬢の机を見ると、机の中に教科書やノートが残されたままになっている事に気付いた。学年で首席なのに、予習とかしてないのかしら?
…悔しい!私はこんな気持ちで、毎日必死なのに。どうして彼女ばかり!いい家に引き取られて、綺麗で、優秀だなんて!しかも、あの方に大切にされて!
気がつくと、彼女の教科書をビリビリに破いていた。……これで、少しは困ればいいわ。
次の日、登校すると彼女の姿が無かった。そして、フォーレス侯爵令息の機嫌が悪い。彼女の友人達は、破られた教科書の事を話しているようだった。酷いとか、いじめ?とか言っているのが聞こえて来る。
ふふっ。ショックで帰ってしまったようね。このまま、来なくなればいいのに。これくらいの事で、ショックを受けるなんて、これだから、高位貴族のお嬢様は困るわ。
フォーレス侯爵令息は、彼女を心配して、昼休みに彼女の寮まで訪ねたらしい。
「アル、義妹殿はどうだった?」
「顔色は悪いし、泣いていた。犯人を絶対捕まえるし、マリーは俺が守るって話して来たんだ。」
「かわいい義妹が嫌がらせをされて、怒りたい気持ちは分かるが、落ち着けよ!犯人はまたあの令嬢かな?」
「ミラー伯爵令嬢だろ?前にアルに付き纏っていた。アルに好意を寄せている令嬢に、嫌がらせをしているって、有名だもんな。」
「ああ。アイツは従姉妹だからと言って、子供の頃から、いつも付き纏ってきて、大迷惑なんだ。どうせ、かわいいマリーに嫉妬しているんだろう。今までは、関わりたくないから、放置していたが、マリーに手出しするなら報復してやる!」
今まで、どんな令嬢にも興味を示さなかった彼が、感情をむき出しにして怒っている。どうして?いつの間にそんなに親密になったの?そんなに彼女が大切なの?
彼の怒る姿を見ているのはつらかった。でも、つらい気持ちより、…私は全く疑われてない事に安心していた。
ミラー伯爵令嬢は、聖女子学園からの編入生が来るまでは、この学園の令嬢の中では身分が上であった為、気に入らない令嬢に嫌がらせをしたりと、評判の悪い令嬢であった。しかし編入生が来たら、彼女達の方が、成績も身分も上なので、遠慮しているのか、前ほど目立つような事はしていない。しかし今までの評判が悪いので、彼もその友人達もミラー伯爵令嬢が犯人だと決めつけているようだ。
今までの素行が悪いから疑われるのよ。
私はミラー伯爵令嬢が疑われていることに、安心し過ぎてしまっていた。そして、その後もバレないと思い、何度か嫌がらせを繰り返してしまう。そのことが、身を滅ぼすことになるとは気づかずに…。
その嫌がらせがきっかけなのか、フォーレス侯爵令息は、義妹に対して過保護になり、兄妹とは思えない距離感で過ごすようになる。義妹の方は、一歩引いているようにも見えるが、彼はそんなの全く気にせず、側についていたいようだ。彼は、愛しい恋人を見つめるような目で義妹を見ている。そんな目で彼女を見つめるのをやめてと、何度、心の中で叫んだのか分からなくなっていた。
反対に彼の視線の先には彼女がいる事に気づいてしまった。彼女はフォーレス侯爵令息をどう思っているかは分からないが、彼は義妹である彼女を意識していると思う。彼女を心配して見ているのか、話がしたくて見ているのかは分からないが…。
入学式の次の日、生徒会長のファーエル公爵令息が彼女に会いに来た。今は王家の生徒はいないので、公爵家の生徒会長が、この学園では1番身分が高い方になる。華やかな美形の王子様のような方で、この方に憧れている令嬢はとても多い。そんなすごい方が、新入生の彼女にわざわざ会いにくるなんて。クラスが一瞬ざわつく。しかし、彼女や友人達は何か警戒したような表情だ。普通の令嬢なら、あんなすごい方が自分に会いに来たら、多少は浮かれてしまうのに。聖女子学園から来た令嬢達は、相手の身分や見目で判断しないのかしら。彼女は、緊張感のある表情で廊下に出て行った。廊下で彼女と生徒会長が、どんなやり取りをしているのかは、ここからは分からないが、フォーレス侯爵令息は、心配そうに廊下の方を見つめていたと思ったら、そのまま廊下に出て行ってしまった。
少ししてから、2人で教室に戻って来るが、怒りを隠したような笑顔のフォーレス侯爵令息と、何となく怯えた表情の彼女。何があったのかしら?フォーレス侯爵令息に友人達が話しかけて、事情を聞いている。
「アル、何があった?怒っているのか?」
「生徒会長が以前、領民を助けてくれたお礼だと言って、強引に義妹をお茶会に誘おうとしてたから、丁重に遠慮させてもらって来たよ。義妹も公爵家からの誘いを断れなくて、困っていたようだし。」
「あの生徒会長が、お茶会のお誘いに来るなんて初めて聞いたな。義妹殿は、生徒会長に気に入られているんじゃないか?」
「迂闊にそんな茶会に参加したと噂になったら、生徒会長の婚約者候補だとか勘違いされて、大変だろう。女狐どもに目をつけられそうだ。だから今回は遠慮させてもらって来たよ。」
「あのアルが義妹の為にそこまでするなんて。かわいいのは認めるが…。お前、変わったなー!」
義妹の為に、公爵家のお茶会を断って来た?そんなに大切なの?それとも、もしかして彼女のこと……。
その日の放課後、彼は義妹の手を繋いで帰って行った。あんなに嬉しそうな彼の笑顔は初めて見た。あんな風に、笑う人だったのね。
彼の友人や彼女の友人達は、面白そうに2人を見送っていたが、私は心が壊れそうだった…。
2人が帰った後、図書室で予習しようとするが、全く身に入らない。こんなことは初めてだった。
気持ちが落ち込んだままいたが、外が暗くなってきたので、寮に帰ろうと思い、教室に荷物を取りに行く。ふと。フォーレス侯爵令嬢の机を見ると、机の中に教科書やノートが残されたままになっている事に気付いた。学年で首席なのに、予習とかしてないのかしら?
…悔しい!私はこんな気持ちで、毎日必死なのに。どうして彼女ばかり!いい家に引き取られて、綺麗で、優秀だなんて!しかも、あの方に大切にされて!
気がつくと、彼女の教科書をビリビリに破いていた。……これで、少しは困ればいいわ。
次の日、登校すると彼女の姿が無かった。そして、フォーレス侯爵令息の機嫌が悪い。彼女の友人達は、破られた教科書の事を話しているようだった。酷いとか、いじめ?とか言っているのが聞こえて来る。
ふふっ。ショックで帰ってしまったようね。このまま、来なくなればいいのに。これくらいの事で、ショックを受けるなんて、これだから、高位貴族のお嬢様は困るわ。
フォーレス侯爵令息は、彼女を心配して、昼休みに彼女の寮まで訪ねたらしい。
「アル、義妹殿はどうだった?」
「顔色は悪いし、泣いていた。犯人を絶対捕まえるし、マリーは俺が守るって話して来たんだ。」
「かわいい義妹が嫌がらせをされて、怒りたい気持ちは分かるが、落ち着けよ!犯人はまたあの令嬢かな?」
「ミラー伯爵令嬢だろ?前にアルに付き纏っていた。アルに好意を寄せている令嬢に、嫌がらせをしているって、有名だもんな。」
「ああ。アイツは従姉妹だからと言って、子供の頃から、いつも付き纏ってきて、大迷惑なんだ。どうせ、かわいいマリーに嫉妬しているんだろう。今までは、関わりたくないから、放置していたが、マリーに手出しするなら報復してやる!」
今まで、どんな令嬢にも興味を示さなかった彼が、感情をむき出しにして怒っている。どうして?いつの間にそんなに親密になったの?そんなに彼女が大切なの?
彼の怒る姿を見ているのはつらかった。でも、つらい気持ちより、…私は全く疑われてない事に安心していた。
ミラー伯爵令嬢は、聖女子学園からの編入生が来るまでは、この学園の令嬢の中では身分が上であった為、気に入らない令嬢に嫌がらせをしたりと、評判の悪い令嬢であった。しかし編入生が来たら、彼女達の方が、成績も身分も上なので、遠慮しているのか、前ほど目立つような事はしていない。しかし今までの評判が悪いので、彼もその友人達もミラー伯爵令嬢が犯人だと決めつけているようだ。
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私はミラー伯爵令嬢が疑われていることに、安心し過ぎてしまっていた。そして、その後もバレないと思い、何度か嫌がらせを繰り返してしまう。そのことが、身を滅ぼすことになるとは気づかずに…。
その嫌がらせがきっかけなのか、フォーレス侯爵令息は、義妹に対して過保護になり、兄妹とは思えない距離感で過ごすようになる。義妹の方は、一歩引いているようにも見えるが、彼はそんなの全く気にせず、側についていたいようだ。彼は、愛しい恋人を見つめるような目で義妹を見ている。そんな目で彼女を見つめるのをやめてと、何度、心の中で叫んだのか分からなくなっていた。
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