元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

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マリーベル編〜楽しく長生きしたい私

デビュタント 3

 フィル兄様はダンスがとても上手だ。まぁ、あの熱血コーチのおば様の息子が下手な訳ないか。カッコよくて、優しくて、ダンスが上手ときたら、ぜったいモテるよね。こんな素敵なフィル兄様と踊ったりして、私は大丈夫かしら?誰か令嬢が私を睨んでいたりして。
 よし!この後、時間が空いたら、フィル兄様に私は待っているから、他の御令嬢ともダンスしてきてくださいと言ってみよう。どれくらいの人数の令嬢が集まるのかしら。バトルは見れるかしら。ワクワクするわね。ふふっ。

「マリー?ニコニコして何を考えているの?」

「フィル兄様とダンスが出来て嬉しいからですわ。」

「本当かな?ところで、アルベルトとは本当に仲直りしたの?」

「はい。今日はお兄様と和解出来たので、嬉しかったです。」

「和解か。…それと、さっきの辺境伯の騎士とは仲が良さそうだったけど、どういう関係?」

「フィークス卿ですか?私が辺境伯領に行くと、私の護衛騎士をしてくれる方ですわ。本当の兄みたいで、いつも親身に話を聞いてくれる方でして、一緒にいると安心出来るのです。」

「そうなんだ…。」

「フィル兄様?」

「いや、何でもないよ。」

 そんな話をしていると、1曲終わる。すると陛下の従者から、お声が掛かり、陛下と1曲踊る。その後も、王太子殿下→シリル様→生徒会長→義兄→スペンサー家のおじ様→辺境伯のおじ様→フィークス卿の順で踊った。足が痛くなったら、みんなにバレないように、治癒魔法をかけながら踊る私。疲れたからダンスはもういいよね。休憩しよう。
 えっと、レジーナ達はどこだろう?ん、腹黒達はみんな疲れているわね。あーやっぱり、あの子達、かわいいからダンスに誘われてまくってるわ。有力貴族の跡取りの令嬢で、頭がキレるだけじゃなくて、本当にかわいいもんね。モテないはずがないわ。
 人間観察が楽しくなってきた私は隅に移動して、休憩しつつ、女のバトルを見ようと会場内を見渡す。
 義兄は沢山の令嬢に囲まれて、顔が死んでいるわ。あの怒ると怖い義兄が!ふふっ。
 えっと、フィル兄様はどこだろう?その時、

「フォーレス侯爵令嬢!」

 今、人間観察しているのにー!あっ、王都騎士団長だわ。学園休んでいたから、久しぶりね。

「騎士団長様、ご機嫌よう。お久しぶりです。」

「本当に久しぶりだ。デビューおめでとう。」

「ありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願い致します。」

「今までずっと踊っていたみたいだけど、疲れてないだろうか?大丈夫か?」

「はい。少し休みましたので。」

「それは、良かった。私の友人がフォーレス侯爵令嬢と踊りたいみたいなんだが、1曲お願いしてもよろしいだろうか?」

 それって断れないやつだよね?剣術でお世話になっているし。大丈夫かと聞かれて、はいって答えちゃったし。

「あの、ダンスがあまり得意でないのですが、それでも大丈夫でしょうか?」

「君が下手だと言ったら、他の人はド下手と言えるな。じゃあ、お願いするよ。」

 結構、強引ね。騎士様だからかな?まぁ、1曲踊ったら、終わりだし我慢するか。

「はい。私で良ければ。」

 すると、騎士団長が背後を振り返り、手招きをする。気不味そうにやって来たのは、黒髪にアメジストの色の目の、冷たそうな印象の美丈夫だった。上質な黒い騎士服を着ているから、団長の騎士仲間かしら?
 うーん?お約束の、どこかで見たことがあるような気がする。少し年上だから、…もしかして、攻略対象者の中の隠しキャラだったりして。サーっと血の気が引く。さっさと踊って、逃げろ!って本能が警告しているわ。よし、私は死なないからね!

「御令嬢、私と踊って頂けますか?」

「はい。喜んで(ないけどね)。」

 長身の美丈夫の騎士様でかっこいいから、令嬢から人気なのかな?みんなこっちを注目して見ているし、会場がざわついている気がする。
 しかし、なぜ私をダンスに誘ったのだろう。特に何か喋るわけでもないし、ダンスを楽しんでいるようにも見えないわね。誰とも踊らないから、騎士団長が、たまたま近くにいた、私と踊ってこいとでも命令したのかしら?だとしたら、本当に迷惑ね!騎士様本人も乗り気じゃなさそうだし、何か苦痛そうじゃないの。
 騎士様、私も我慢して踊ってますからね!

 そういえば、さっき気づいたけど、この人、何となく右足を庇っている気がする。ちゃんと踊っているけど、気になる。聞いてみようか?

「あの、勘違いしていたら、申し訳ありません。もしかして、右足を痛めていませんか?」

「…よく、気付いたな。ダンスがぎこちなかったら、すまない。」

「いえ、ダンスは全然気にならないのですが、何となく庇っているような気がして。古傷でしょうか?」

「そこまで分かるのだな。何年か前に、魔物討伐に参加した時に、足首を痛めたものだ。」

「右足首ですか。」

 この距離なら、直接触らなくても治療できそうね。騎士様の右足首に意識を集中して、治癒魔法をかけてみる。それ!…どうだろう?

「治癒魔法をかけてみたのですが、どうでしょう?」

「ダンスしたまま出来るのか?足が軽くなった!」

「このダンスは、ステップが簡単だから、たまたま出来ただけですわ。効いたなら良かったです。他に、古傷はありませんか?騎士様は体が大切ですから。」

 断罪されたくないから、恩を売っておこう。大サービスよ!

「左の手のひらで、模擬刀を受け止めてから、力が入りにくくなったのだが…。」

「左手ですか。」

 一緒にダンスをしていて、ちょうど私の右手が触れている。さっきと同様に、意識を集中させる。左手、治れ!

「どうでしょうか?私の手を握ってみてください。」

 遠慮がちに左手に力を入れているようだが…

「……治った気がする。ありがとう。すごいな。」

 ここに来て、初めて笑顔になる騎士様。凄いでしょう?断罪しないでねという、願いを込めて微笑む私。

「体がボロボロになっても、戦い続ける勇敢な騎士様を尊敬いたしますわ。しかし、お体は大切になさって下さいませ。これからもお怪我に気をつけて。」

 ここで曲が終わる。私は頑張ったぞ!やりきった感で笑みが溢れる。

「ありがとうございました。失礼致します。」

 よし!さっさと去らないとね。
 しかし、…えっ?何で手を離してくれないの?ちょっとー!

「…………。」

「あの、手を離して頂いても?」

「…はっ。待ってくれ!君に…  」

 騎士様が何かを言いかけた時だった。

「マリーベル嬢、王太子殿下がお呼びです。」

 シリル様だ。私を助けてくれている?でも、何か怒っている?目が怖いような。

「シリル様?」

「マリーベル嬢、さぁこちらに。」

 そう言うと、私の手を引き、腰に手を回して歩き出す。あの大人のシリル様らしくない、強引な感じ。

 どうして?

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