元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ

文字の大きさ
136 / 161
南国へ国外逃亡できたよ

新入生

しおりを挟む
 放課後、図書室で勉強していると…。

「失礼します。コリンズ伯爵令嬢は先輩でよろしいでしょうか?」

 1年生らしき、異世界版アイドルみたいな、かわいい男の子に話しかけられる。

「…はい。そうですが、何か?」

「先輩が凄い優秀だとお聞きしまして、ぜひ勉強を教えて頂きたいと、お願いに来ました。」

「人に教える程優秀ではありませんわ。たまたま前回のテストの調子が良かっただけで、私より宰相子息様の方が優秀かと。」

「いえ、コリンズ伯爵令嬢はすごい方だとお聞きしました。教えてもらうというか、もし図書館で一緒になることがあれば、分からないところを少し聞くだけでもお許し下さいませんか?」

 この男の子、ワンコ系男子?顔だけじゃなくて、雰囲気もかわいいんだけど!
 かわいい男の子に弱い私は、

「…それくらいでしたら。しかし、私はそこまで優秀ではありませんので、答えられないこともあると思います。そこはご理解頂けますか?」

「本当ですか?ありがとうございます!自己紹介が遅れましたが、私はジュリアン・クラークと申します。よろしくお願い致します。」

 眩しい笑顔で喜ぶ子息。これは腹黒達が見たら喜ぶだろうね。

「私はマリア・コリンズですわ。どうぞよろしくお願い致します。」

 この子息は、その後顔を合わせると『コリンズ先輩』と私に話しかけてくれるようになる。かわいい顔に人懐っこい性格で、私の友人達は

「あのコ、かわいいわね!」

「あの笑顔に癒されるわ。」

 と、みんな喜んでいた。しかも、侯爵子息でモテるらしい。あのかわいさはモテるだろうね。

 そして、新入生が入学して学園に慣れてきた今の時期に、学園主催の入学のお祝いパーティーがある。

 お母様がまた張り切ってドレスを作ってくれる。薄い紫に、細かい宝石や花の飾りが付いた、高そうなドレスだ。コリンズ伯爵家は、領地経営が上手く行っており、ワインが特産で結構売れているらしい。金持ち伯爵家らしく、私なんかのドレスにもお金をかけてくれるのだ。
 メイド達にこれでもかと磨かれ、学園のパーティー会場に向かう私。今日は煩いお兄様は仕事らしく、1人で向かう。学園のパーティーだから、特にエスコートは要らないから、気楽なのだ。

 学園に着き、馬車を降りたところで、呼び止められる。振り向くと、ワンコ系男子のクラーク様がいた。

「コリンズ先輩、今日はパートナーはいないのでしょうか?」

「ご機嫌よう。学園のパーティーは1人でも大丈夫みたいなので、特にパートナーはいませんわ。」

「ちょうど良かった。私も1人なので、パートナーまではいかなくても、会場まで一緒に行きませんか?」

 えっ?このモテる後輩とそんなことをしたら、変な噂話されそうじゃない?

「クラーク様は、ご令嬢方にとても人気があるとお聞きしましたわ。私ごときが、一緒に行ったら、その令嬢方に変な勘違いをされてしまうかと思うのですが。」

「そんなことはないかと。友人同士でパートナーとして、参加する方も沢山いると聞いてますので、大丈夫かと思います。…そんなに私と行くのは嫌でしょうか?」

 寂しそうな目で見つめてくるクラーク様。その目は反則よ!

「…嫌ではないのですけど。」

「…なら、大丈夫ですね。一緒に行きましょう。」

 私が返事をする前に、手を引かれてしまった。かわいい顔して、実は強引なの?
 会場入りすると、他の生徒たちにチラチラ見られているような気がする。あー、視線が痛いわ。すると、リーナ達が手を振っている。良かった!あそこに合流しよう。

「クラーク様、ここまでありがとうございました。友人達がいるので、私はそちらに行きますわ。」

「あっ!コリンズ先輩の友人の令嬢方ですね。私も挨拶したいです。」

 うーん?リーナ達は喜ぶと思うけどね…。しょうがないか。
 さり気なく、私の手を引くクラーク様。もう、それはしなくていいのに。

「ご機嫌よう。2人は今日はパートナーなのかしら?」

 リズがニヤニヤして聞いてくる。

「パートナーに見えますか?嬉しいですね、コリンズ先輩?」

「ご機嫌よう。偶然、外で会ったから一緒に来たのよ。本当に偶然ね。」

 周りにも聞こえるようにハッキリ言う私。とニヤニヤするリーナ達。その目で見るなと叫びたいのを我慢する私。
 結局、私達のグループに混ざって話をするクラーク様。このコは話が上手いから、恐らく社交上手なタイプね。
 みんなでお喋りをしていると、パーティー開始の時間になったようで、学園長や理事長、王太子殿下の話を聞いて、ダンスが始まる。一曲目に殿下や、生徒会のメンバーが踊り終え、二曲目になる時だった。

「コリンズ先輩、私と踊って頂けませんか?」

 げっ!そんなことしたら、また目立っちゃうよ。しかし、

「マリア、かわいい後輩がそう言ってるんだから、踊ってあげなさいよ。」

「ほら、マリア!ダンスくらい良いじゃない。」

 あなた達は、誰の味方なの?

「はい。喜んで。」

 断れないので、踊ることになった。

 クラーク様はさすが侯爵令息なだけあって、ダンスが上手かった。しかも、嬉しそうにニコニコして踊っている。悔しいけど、かわいいわ!

「コリンズ先輩とダンスが出来るなんて、とても嬉しいです。たぶん、友人達が羨ましがると思うので、そしたら自慢してもいいですか?」

「ふふっ。クラーク様はお上手ですね。」

 しかし、何となく殺気のようなものを感じている私。フッと王太子殿下が目に入った。ん?こっちを見ているような…。殿下の背後には従者と護衛騎士が数名見える。あれ?…護衛騎士って?あの長身の黒髪の護衛騎士は…。
 ひぃー!煩いお兄様じゃないの!殺気はお兄様?ヤバい。なんか怒ってない?何でー?怖いんだけど。

「…コリンズ先輩、どうかしましたか?」

「…いえ、何でもありませんわ。あの…、クラーク様、この後はぜひ他のご令嬢や友人達とも交流して下さいませ。せっかくの入学パーティーなのですから、沢山楽しんでくださいね。」

 微笑んで誤魔化す私。遠回しに私から早く離れて欲しいことを伝えてみた。だって、お兄様がこっち見ているようで、気が休まらないんだもん。

「……コリンズ先輩。こんな近くで、そんな風に簡単に微笑まないでください。…もう、参ったな。」

 何となく、顔が赤くなるクラーク様。えっ、何でー!
 その時に、曲が終わる。よし、軽食コーナーに避難しよう。

「クラーク様、ありがとうございました。失礼しますわ。」

 その時、だった。

「マリア嬢!私とも踊ってくれるか?」

 王太子殿下だった。断れないの分かって言ってるよね!顔が引き攣りそうだ!

「殿下、勿論でございます。」

 殿下と踊っている間も、殿下の護衛騎士や従者は、近くで殿下を見守っている。そのメンバーには、お兄様も入っているのだが。

「くっくっ。エルが気になるか?」

「殿下、お兄様からの殺気のようなものは、何とかなりませんでしょうか?恐ろしいのですが。」

「それは無理だな。しかし、エルがあんな風になるなんて、私にも信じられないな。」

 何が信じられないのかは知らないが、あの人を何とかして欲しい。

「そうだ、マリア嬢に頼みがあるのだが。」

「はい。私に出来ることなら。」

「私に年の離れた妹がいるのだが、マリア嬢が友達になってくれないか?少し内気だから、兄としては心配で。マリア嬢なら、安心して妹に紹介出来そうだ。」

 王族とは関わりたくないが、断れないしなぁ。

「私なんかでよろしいのでしょうか?」

「ああ。君みたいに優秀で、欲のなさそうな令嬢がいい。君の家族もよく知っているから安心だ。」

「かしこまりました。仲良くなれるかは分かりませんが…。精一杯、務めさせて頂きます。」

「くっくっ。真面目だなぁ。もっと軽い気持ちでいいから。あとで、エルに招待状を持たせるよ。」

 招待状って…。はぁー。困ったわ。
 殿下とは普通に話をして、ダンスを終えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

何年も相手にしてくれなかったのに…今更迫られても困ります

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢のアンジュは、子供の頃から大好きだった幼馴染のデイビッドに5度目の婚約を申し込むものの、断られてしまう。さすがに5度目という事もあり、父親からも諦める様言われてしまった。 自分でも分かっている、もう潮時なのだと。そんな中父親から、留学の話を持ち掛けられた。環境を変えれば、気持ちも落ち着くのではないかと。 彼のいない場所に行けば、彼を忘れられるかもしれない。でも、王都から出た事のない自分が、誰も知らない異国でうまくやっていけるのか…そんな不安から、返事をする事が出来なかった。 そんな中、侯爵令嬢のラミネスから、自分とデイビッドは愛し合っている。彼が騎士団長になる事が決まった暁には、自分と婚約をする事が決まっていると聞かされたのだ。 大きなショックを受けたアンジュは、ついに留学をする事を決意。専属メイドのカリアを連れ、1人留学の先のミラージュ王国に向かったのだが…

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

廃妃の再婚

束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの 父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。 ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。 それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。 身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。 あの時助けた青年は、国王になっていたのである。 「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは 結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。 帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。 カトルはイルサナを寵愛しはじめる。 王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。 ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。 引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。 ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。 だがユリシアスは何かを隠しているようだ。 それはカトルの抱える、真実だった──。

笑い方を忘れた令嬢

Blue
恋愛
 お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。

嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。

季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。  今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。  王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。  婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!  おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。  イラストはベアしゅう様に描いていただきました。

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

結婚結婚煩いので、愛人持ちの幼馴染と偽装結婚してみた

夏菜しの
恋愛
 幼馴染のルーカスの態度は、年頃になっても相変わらず気安い。  彼のその変わらぬ態度のお陰で、周りから男女の仲だと勘違いされて、公爵令嬢エーデルトラウトの相手はなかなか決まらない。  そんな現状をヤキモキしているというのに、ルーカスの方は素知らぬ顔。  彼は思いのままに平民の娘と恋人関係を持っていた。  いっそそのまま結婚してくれれば、噂は間違いだったと知れるのに、あちらもやっぱり公爵家で、平民との結婚など許さんと反対されていた。  のらりくらりと躱すがもう限界。  いよいよ親が煩くなってきたころ、ルーカスがやってきて『偽装結婚しないか?』と提案された。  彼の愛人を黙認する代わりに、贅沢と自由が得られる。  これで煩く言われないとすると、悪くない提案じゃない?  エーデルトラウトは軽い気持ちでその提案に乗った。

処理中です...