上 下
6 / 124
雲の上は、いつも晴れだった。 ~エピソード0~

~エピソード0~ 2

しおりを挟む
 大樹には、いつでも多くのベルの花が咲き誇っています。まだ小さな蕾、少しずつ大きくなる蕾、そしてしっかりと開花し終えた、ベルの形をした白い大きな花たち。その中で、必ず一日に一つだけ、淡く発光し、明滅を繰り返す蕾が現れます。それが、その日に開花する蕾です。

 発光する蕾は、初めはゆっくりと、そして開花間近には途切れることなく明滅を繰り返すので、庭園ガーデンの者たちには、どの蕾からNoelノエルがいつ頃誕生するのかがわかります。

 その開花の瞬間を見守ることが、庭園ガーデンの者たちの喜びであり、開花儀礼なのです。

 司祭という職を拝命しておりますが、開花儀礼の際にわたくしが行うことは、特にありません。ただ、新たな仲間を恙無つつがなく迎え入れること、それだけを祈りながら、日々新たなNoelノエルの誕生を見守っております。

 本日も、大きく成長した蕾が一つ、ゆっくりと明滅を始めました。その他の蕾は、まだ開花するほどの大きさには至りません。特に、明滅を始めた蕾の隣に位置する蕾は、とても小さくまだ芽吹いたばかりのようでした。

 蕾の状態を確認したわたくしは、明滅の頃合いからして、開花までにはまだしばらく時間がかかるだろうと判断すると、大天使アズラエル様への日々のご挨拶を兼ねた定期報告のため、一旦その場を離れました。

 報告を終え、大樹の元へ戻ると、蕾の明滅間隔が幾分早くなっていました。間も無く開花の時を迎えることになるだろうと判断したわたくしは、Noelノエルたちに声をかけました。

 Noelノエルたちは、互いに言葉少なに挨拶を交わしながら、新しい仲間を迎え入れるために、明滅する蕾の下へと集まってきます。

 皆が集まったのを確認したわたくしは、開花儀礼の祈りを捧げるため、大樹を仰ぎ見ました。

 その時です。
しおりを挟む

処理中です...